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経営組織論と『経営の技法』#337

CHAPTER 12.4:組織変革を妨げるもの ②強固な組織文化
 もう1つは、そもそも強固な組織文化や価値観を持っている組織では、これまでと異なる新しい考えが生まれにくいことです。組織文化の強さの利点は、組織メンバーの多くが同じような価値観を持つことで、モティベーションが高まること、細かな指示伝達がなくとも柔軟に組織の価値観に沿って行動をしてくれること、コミュニケーションがしやすいことなどがあります。
 しかし反対に、みんなが同じような考え方をしていることで、これまで示されていないようなアイディアや考えが生まれにくくなります。これは、アイディアや考えそのものが生まれにくいことに加えて、たとえこれまでと異なるアイディアや考えが出たとしても、支持されにくくなってしまうこともあります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』286頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 これも、前回の成功体験と同様、メリットとなる部分もあるが、変革を阻害するデメリットもある、という問題です。
 また、違う観点から見ると多様性やダイバーシティのない状態の抱える問題であると見ることができます。社会が多様化している状況では、社会の多様な需要やルールに適合するために、会社の中にそのような多様性を有していることが必要となります。
 もちろん、ニッチな領域で存在感を示すことが重要な場合もあり、あるいはトップの強烈な個性とリーダーシップを組織が一体となって受け止め、一丸となって行動する突破力が必要な場合もあります。組織内の多様性は、ときに一体性を弱め、求心力を弱める(遠心力として働く)場合もありますので、全ての会社にとって必須のものではありませんが、一定の成功をおさめ、一定の大きさになった会社組織の場合には、組織の崩壊を防いで組織を変革するために、多様性が必要になってくるのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、経営者には組織の一体性や求心力と多様性の両立という難しい課題があることが理解できます。
 例えとして、多様な楽器が集まっているからこそオーケストラが成り立ち、多様な楽器でも一体となって壮大な交響曲を奏でることができる、ということができるでしょう。多様性を尊重することと組織の一体性や求心力を対立する概念として見るのではなく、両立する概念として見て、その両立やバランスを考えることが大切です。

3.おわりに
 求心力と遠心力は、太陽の周りを回る地球をイメージすると良いかもしれません。太陽からの引力(求心力)と、太陽を離れようとする動きの慣性(遠心力)がバランスしているからこそ、地球は太陽に落ちることなく太陽の周りを回り続けるのです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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