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経営組織論と『経営の技法』#314

CHAPTER 12.3.1:組織における3つの変革 ①構造の変革
 企業がこれまで取り扱ってきた製品やサービス、培ってきた技術を変えていくといことも変革の1つですが、組織ということに限っていえば、構造の変革、仕事 プロセスの変革、人材の変革の3つが変革の対象となります。
 構造の変革は、権力関係や協力体制、職務内容など組織の構造にかかわることを変えることを指し ます。第4章で触れたように、組織の構造の変更は、それぞれの職務の内容や権限関係を変えることにつながります。
 たとえば、それまでアジア部門の下にあった日本支店を、日本市場を重要視することからアジア部門から外して独立の日本部門を作ることになれば、日本支店の権限は大きく増すことになります。また、それに伴って人事権などの権限も増えることもあるかもしれません。あるいは、部署を横断するようなチームを作ることによって、それまで縦割りでしか議論ができなかったことが、協力して議論して問題解決にあたれるようになります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』274頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 組織が変わると権限や業務内容、仕事の仕方が変わる、と言われても、上記本文の例から見ても説明されないと分からないのではないか、と思うかもしれません。
 けれども、同じ会社に長く務めると、会社の組織変更は従業員に対する強烈なメッセージになります。上記本文のように組織横断チームを作ると、そのメンバーや権限も見ることで、会社がそのプロジェクトにどこまで本気なのかが分かりますし、そうするとそこに選ばれることがどのような意味があるのか(優秀なメンバーが集められていることが多いでしょうが、特殊で扱いにくいメンバーが集められているかもしれません)、実際にどのような仕事が待ち構えているのか、などが何も説明しなくても伝わります。
 このように、組織変更はそれ自体に目的や意図が含まれるだけでなく、人事上、従業員へのメッセージとしての副次的な意味もあるのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 大きな組織になると、このように組織変更の意味が大きくなっていきますので、経営者は簡単に組織変更できなくなります。人事権は経営者の持つ限られた経営のためのツールですから、その中でも特に重要な組織変更は最後の手段ですから、大事に使わなければならないのです。
 他方で、社会の変化が激しい現在、もったいぶって変化に遅れてしまっては元も子もありません。もっと柔軟に、失敗しても良いので組織を頻繁に変えてもよいではないか、という発想も広がってきました。
 経営者が会社組織をどのようにとらえ、組織変更をどのように行うのかということは、経営者の資質として注目すべきポイントです。

3.おわりに
 組織変更が様々な変化をもたらすこと、あるいは逆に様々な変化の集大成として組織変更が行われることから、その影響について広い視野を持って考えなければいけないことが分かります。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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