見出し画像

経営組織論と『経営の技法』#184

CHAPTER 8.3.2:3つの制度的同型化 ②競争的同型化
 競争的同型化とは、主に市場の競争の下で起こる合理性の下での組織構造や手続きの採用による同型化です。つまり、それぞれの組織が競争に打ち勝つために、合理的に活動しようとした結果、同じような組織構造や手続きになるようなケースです。このような競争的同型化は、組織フィールドの初期の段階において起こるといわれます。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』188頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018.2.1)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019.2.1)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 同型化のうち、この競争的同型化は、前回(#183)で示した、優秀な競泳選手はみな立派な逆三角形の体型になっている、という具体例がそのまま当てはまります。
 本文では、組織フィールドの初期の段階で起こる、という分析が紹介されていますが、似たような業務を始めたライバル会社同士がお互いをライバルと意識し始め、販売手法などが徐々に似ていく過程をイメージしているのでしょうか。
 たしかに、私の子供時代に、カメラ量販店が家電量販店に成長していく過程で、様々な家電量販店の店構えや取扱商品が似てきた様子を覚えています。同様のことは、テレビCMや情報番組の中で商品を紹介する通信販売や、ネットで気軽に商品を購入できるネット通販でも、見かけられました。最初はそれぞれ背景の異なる会社が、販売手法をそれぞれが工夫していたのですが、徐々にビジネスモデルが似てきました。
 消費者の側から見えるのは、販売方法や取扱商品が似通ってきた、という面ですが、当然、その舞台裏となる会社組織も、ビジネスモデルにマッチするために似たような組織形態や運用に近づいていった(同型化していった)はずです。
 リスク管理(リスクを取ってチャレンジするためのリスク管理)の観点からみてみましょう。
 それぞれのマーケットで競争し、リスクを取ってチャレンジし、儲けるためには、リスクの程度と儲けの程度のバランスの取れたビジネスモデルが必要になります。要は、まじめに競争していれば、コスパの良いビジネスモデルに向かって自然に変化していく(自然、と言っても、企業努力をするのが自然、という意味です)はずです。特に、リスクをコントロールするのは、会社組織そのものですから、効率的にリスクコントロールするためには、会社組織そのものを変える必要があるのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 市場での競争と、会社組織のあり方を工夫しながら、市場での競争力を高めていくのが経営者ですから、市場での競争の技術だけでなく、競争で戦うための組織を作ります。会社のトレーナーとして、会社を筋肉質にし、競争に挑む体質づくりがされるように、経営者に対してガバナンスを効かせるのが、株主のやるべきことになります。

3.おわりに
 このように見ると、同型化の動きは、競争環境の生成過程とも関わりがありそうです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?