見出し画像

松下幸之助と『経営の技法』#250

10/22 競争があるからこそ

~競争があるから、お互いが知恵を働かす。品質向上や適正なコストの実現に努力する。~

 競争があること自体は好ましいことである。競争があることによって、お互いに相手に負けないように知恵を働かせ、努力もする。そういうところから、製品の品質も向上し、コストもより合理化されて適正なものになってくる。競争のないところでは、やはりどうしても品質もあまりよくならないし、コストも高くつくということは、お互いにしばしば見聞するところである。
(出典:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編刊]/2018年9月)

画像1

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 ここでの松下幸之助氏の発言は、市場での競争を歓迎する10/20の#248と同じ趣旨です。競争に勝つための会社経営が、商品やサービスを良くする、という話です。
 例えば、サランラップとクレラップの競争が、日本のラップの品質(切りやすい、破れにくい、など)が、特に欧米の、ビニール袋のようなラップよりも高品質にさせた、と言われることがあります。さらに、日本の市場での過酷な競争が、一方で、日本市場での勝者は世界で通用する、と言わしめ、他方で、日本の過当競争によって世界で通用しないおかしなスタンダードを育ててしまう(ガラパゴス化)と言われます。
 このように、経済的な競争が、経営の内容に大きな影響を及ぼしていきます。
 これも、市場での競争に不適切な影響力を及ぼして競争を有利にしようとする(独禁法に違反しかねない不公正な手段を使うほか、M&Aで競争相手を買い取ってしまうなど、商品やサービス同士の戦い以外の戦い方を選ぶ)のではなく、逆に、市場での競争を受け止めて、そこで勝つために真摯に取り組むからこそ、企業の成長につながります。日本市場の競争の厳しさと、そこでの企業の成長が語られる背景には、企業経営の真面目さの違いがあるようにも思われます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 けれども、このような真面目な戦い方だけで世界の競争に勝ち残れないことも分かってきました。
 日本の会社も、世界での競争に参加し、落伍者にならないために、世界的な業界再編に積極的に参加するなど、従前の真面目一本やりではない経営判断も、行われるようになってきたのです。
 すなわち、経営者に求められる資質として、真面目に商品やサービスの勝負に取り組むだけでなく、したたかな企業戦略を立案・決断し、実行に移せるリーダーシップも必要になるのです。

3.おわりに
 ここでは、経営者に求められるしたたかさについての言及はありません。日本という閉ざされた市場での競争に集中していればそれでよかった時代は、幸せと言えば幸せかもしれません。
 けれども、真面目に自分たちの商品や品質を磨き、真面目に社会に接してきた松下幸之助氏の経験やノウハウは、政治的な駆け引きをしたたかに行う以前の、会社の基礎体力を作る観点から見れば、非常に参考になるはずです。
 どう思いますか?

※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
 冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出典を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。

画像2



この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?