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経営の技法 #15

2-4 第三者委員会
 名称は様々だが、社外メンバーが会社業務を検証するために設置される、非常設の機関。最近は、会社経営者の判断を追認するにすぎない「名ばかり第三者委員会」も散見され、第三者委員会の実効性や信頼性の確保も重要な課題である。

2つの会社組織論の図

<解説>
1.概要
 ここでは、まず、日本で良く見受けられる「第三者委員会」(名称は様々です)に関し、欧米ではほとんど見受けられず、日本固有の機関であること(ガラパゴス)が指摘されています。
 これは、不正や不祥事を検証されるべき立場にある経営者側が、第三者委員会の報酬や人事を決定する権限を有する点、すなわち利益相反にある点が問題視されるからです。欧米では、どんなに立派な人を選んでも、立場の影響を受けるから、まずはその立場(特に利益相反の有無)が問題にされるからです。
 次に、そのような問題があっても、第三者委員会としての実効性を高める方法が検討されています。
 すなわち、専門性だけでなく会社業務や社内の様子にも詳しい人を選ぶこと、が重要となってくるのです。

2.日本固有の問題
 けれども、特に会社不祥事が問題になる場合などには、第三者委員会がそれなりの役割を果たしています。
 このことから、第三者委員会を日本固有だからと言って全て否定するよりは、欧米の経済界からも評価されるような内容に進化させながら、よりその機能を高めることの方が合理的です。
 しかし、第三者委員会に頼らずに、すむようにすることが重要です。
 そのためには、同書で一貫して論じられているように、「リスク対応」力を高めることが重要ですが、その中でも特に、監査機能を強くすることが重要と思われます。
 それは、「第三者」委員会という客観性中立性が必要な事態がなぜ生じるのか、という問題です。すなわち、欧米では一般的に、内部監査機関の権限と信頼性が高く、まずは社内調査による自浄作用が期待されます(「Investigation」(『国際法務の技法』1-8)参照)。
 他方、日本の場合、「どうせ経営者は監査の言うことなんか聞いてこなかっただろう」「どうせ監査なんか機能していなかっただろう」という認識が社会的にあるようです。すなわち、日ごろから内部監査機関が機能していない、という不信感を払しょくするためには、機能していない監査部門に任せられない、という評価につながるのです。

3.おわりに
 つまり、「第三者委員会」が設置されるということは、会社のガバナンス(上の逆三角形)や内部統制(下の正三角形)が信頼されていないことを意味します。
 逆に言うと、欧米では、会社の内部監査機関がそれなりに機能していると評価されていることになります。
 日本企業のガバナンスや内部統制の弱さが、日本企業の弱さと不透明さの原因であり、したがって日本産業界の弱さや日本の株式市場の地位低下につながっている、ということは、よく指摘されることですが、このことが、日本でだけ「第三者委員会」がもてはやされる背景になっているのです。

※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月



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Seven Rich法律事務所。日米の弁護士、証券アナリスト、経営コンサルタント。約20年の社内弁護士経験。 ブログ:https://ameblo.jp/wkwk224-vpvp 社労士向けの【芦原労判ゼミ】はichiro.ashihara@nifty.comまで。
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