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労働判例を読む

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#復職

労働判例を読む#521

※ 司法試験考査委員(労働法) 【ツキネコほか事件】(東京地判R3.10.27労判1291.83)  この事案は、創業者の息子で、役員だったXが、吸収された後の会社Yで役員を退任し、従業員として勤務していたところ、抑うつ状態となって休職することとなった事案です。Xは、休職前の業務(原職)への復職を希望しましたが、工場に配属されました。Xが復職初日から出社しなくなったため、Yは出社を促す通知を何度か送付し、減給処分も行ったにもかかわらず、結局4か月以上無断欠勤が続いたため、

労働判例を読む#122

【一般財団法人あんしん財団事件】東京高判H31.3.14労判1205.28 ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、業績の悪化によって、①総務的な業務を担当していた女性従業員らを営業担当にして、人事異動させる内示をしたこと、②狭心症・不安

労働判例を読む#359

今日の労働判例 【日東電工事件】(大阪高判R3.7.30労判1253.84) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、包装材料、半導体関連素材、光学フィルム等の製造を行う会社Yで、生産技術開発業務を担当していた従業員Xが、趣味であるオフロ

労働判例を読む#354

今日の労働判例 【丙川商店事件】(京都地判R3.8.6労判1252.33) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、メンタル問題により休職していた従業員Xらが、①休職期間満了を理由とする退職、②解雇、を理由に会社Yが労働契約の終了を主張し

労働判例を読む#333

今日の労働判例 【東菱薬品工業事件】(東京地判R2.3.25労判1247.76) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、医薬品メーカーYで働くXが、上司の指示に従わないなど問題のある行動を繰り返していましたが、交通事故による傷害などを理

労働判例を読む#81

今日の労働判例 【ジャパンビジネスラボ事件】 東京地裁平30.9.11判決(労判1195.28) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、育休前には週5日勤務の正社員(無期)だった従業員Xが、育休後(保育園が決まらず育休が6ヶ月延長された

労働判例を読む#311

今日の労働判例 【学校法人日通学園(大学准教授)事件】(千地判R2.3.25労判1243.101) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、寝不足による体調不良、転倒による脳挫傷、アルコール過剰摂取による肝機能障害、自律神経機能不全症、等

労働判例を読む#62

【帝人ファーマ事件】大阪地裁平26.7.18判決(労判1189.166) (2019.4.26初掲載) この事案は、医療機器の営業担当者が、双極性障害I型に罹患し、3回休職し、会社が3回目の復職を拒み、退職となった事案です。 裁判所は、従業員による職場復帰(労働契約上の権利を有する地位にあることの確認)の請求を否定しました(棄却)。 1.裁判所の判断枠組み 裁判所が示した基準は、復職に関する多くの裁判例と同様、従前の業務を遂行できるかどうか、という基準ですが、特に注目され

労働判例を読む#61

【ケー・アイ・エスほか事件】東京高裁平28.11.30判決(労判1189.148) (2019.4.25初掲載) この事案は、職場で、総重量200Kg以上のコンテナを傾けて、その内容物を所定の場所に入れる作業を1日に1回程度していた従業員が、腰痛を理由に休職したところ、会社は休職満了までに復職しなかったことを理由に、従業員を退職扱いにしました。 1審判決は、この一連の作業の中には、コンテナを中腰で持ち上げる作業があり、それによって腰を痛めた、という事実認定(概要)を前提に、

労働判例を読む#60

【エターナルキャストほか事件】東京地裁平29.3.13判決(労判1189.129) (2019.4.19初掲載) この事件は、ミスが多い経理担当の従業員に対し、会社が数度にわたって過剰な退職勧奨をし、その結果うつ病となった従業員が、就業規則に基づきH26.8.27~11.26の休職命令後、就業規則の規定により休職期間満了までに復職できなかったことを理由に退職となった事案です。 裁判所は、経理担当を外したことは違法でないとしつつ、度重なる過剰な退職勧奨を違法とし、さらに、業務

労働判例を読む#59

【ビーピー・カストロールほか事件】大阪地裁平30.3.29判決(労判1189.118) (2019.4.18初掲載) この事案は、従業員がパワハラを受けた、という主張に加え、復職の際の対応が不適切であり、解雇も不当であると主張した事案です。すなわち、上司との折り合いが悪く、うつ病になった従業員は、就業規則により5か月の療養休職期間が与えられるところ、H26.10.21~H27.1.31の療養休職(そのうち1.14~1.31がリハビリ勤務)の後、復職したものの、H27.4.1

労働判例を読む#58

【三洋電機ほか1社事件】大阪地裁平30.5.24判決(労判1189.106) (2019.4.12初掲載) この事案は、1回目の休職(H12.6.21~H15.4.8、交通事故による傷害)、2回目の休職(H17.12.1~H20.1.20、腰椎椎間板ヘルニア等)、3回目の休職(H21.8.6~H24.10.24、進行直腸がん)の後、H24.10.25から復職しました。復職後、2週間程度の勤務の後、再び出社しなくなり、有給消化後の欠勤扱い中のH25.1.21、会社は同1.30

労働判例を読む#57

【綜企画設計事件】東京地裁平28.9.28判決(労判1189.84) (2019.4.11初掲載) この事案は、うつ病で休職していた従業員の復職に関するトラブルです。すなわち、会社と従業員が、1か月間の休職期間の延長とその間の「試し出勤」に合意し、実際に試し出勤が行われ、計3回、休職期間の延長が行われました。ところが、この3回目の「試し出勤」中に、会社は、解雇・休職期間満了による退職を通知したため、従業員が職場復帰(労働契約上の権利を有する地位にあることの確認)を求めました

労働判例を読む#56

【東京電力パワーグリッド事件】東京地裁平29.11.30判決(労判1189.67) (2019.4.5初掲載) この事案は、持続性気分障害、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)等を理由に休職していた従業員の復職を不可と判断し、従業員が休職期間満了による退職となった事案です。 裁判所は、会社の判断を支持し、従業員の職場復帰の請求(労働契約上の権利を有する地位にあることの確認の請求)を否定しました。 1.ルール まず注目されるのは、復職の請求が認められるべきルール