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労働判例を読む

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記事一覧

労働判例を読む#534

※ 元司法試験考査委員(労働法) 【竹中工務店ほか2社事件】(大阪高判R5.4.20労判1295.5)  この事案は、二重業務委託・請負に基づいて竹中工務店Y1で働いていたXが、Y1と、Y1の業務委託先だったY2に対して、直接雇用関係の存在などを主張した事案です。悪質な偽装派遣の場合には、派遣法40条の6により直接雇用関係が成立し得ますが、1審2審いずれも、偽装派遣を認定したものの、同条の適用を否定し、直接雇用関係の成立を否定しました。  特に2審では、二重偽装請負の場合

労働判例を読む#533

※ 元司法試験考査委員(労働法) 【三井住友トラスト・アセットマネジメント事件】(東京高判R4.3.2労判1294.61)  この事案は、一度雇止めされたが、訴訟によって雇止めを無効とされて復職し、その後も専門職として勤務してきた従業員Xが、未払残業代の支払いを会社Yに対して請求した事案です。  1審は、請求の一部を認めました。2審は、1審よりもさらに広く、請求の一部を認めました。 1.管理監督者性  1審で、Xの管理監督者性が否定されたため、2審で、Yは、部下のいない

労働判例を読む#532

※ 元司法試験考査委員(労働法) <<<動画>>> 【医療法人佐藤循環器科内科事件】(松山地判R4.11.2労判1294.53)  この事案は、在職中に死亡した従業員Kの遺族Xが、使用者だった病院Yに対し、夏のボーナスの支給を求めた事案です。裁判所は、Xの請求を認めました。 1.権利性  最初の問題は、ボーナスが権利として確定していたかどうかです。多くの裁判例で、ボーナスは会社がその金額を決定するものだから、決定するまでは権利と言えない、という趣旨の判断をしているからです

労働判例を読む#531

※ 元司法試験考査委員(労働法) 【そらふね元代表取締役事件】(名古屋高金沢支判R5.5.22労判1294.39)  この事案は、介護事業を営んでいた会社の元従業員Xが、当該事業の廃止に伴って退職した後、未払の残業代等の支払いを、元代表取締役Yに対して求めた事案です。  裁判所は、1審2審いずれも、Xの請求の多くを認めました。 1.管理監督者性  最初に議論されている問題は、Xが管理監督者に該当するかどうか、という点です。  ここで裁判所は、①経営者との一体性、②労働時

労働判例を読む#530

※ 元司法試験考査委員(労働法) 【JR東海(年休・大阪)事件】(大阪地判R5.7.6労判1294.5)  この事案は、東海道新幹線の乗務員(運転手、車掌)達Xらが、年休を思い通りに取得できなかったことが違法であるとして、JR東海Yを相手に争った事案で、裁判所は、Xらの請求を否定しました。 1.関連事件との比較  年休取得に関しては、おなじJR東海を被告とする訴訟で、「JR東海(年休)事件」の判決が好感されています(東京地判R5.3.27労判1288.18)。  そこで

労働判例を読む#529

※ 元司法試験考査委員(労働法) 【日本クリーン事件】(東京高判R4.11.16労判1293.66)  この事案は、清掃会社Yの従業員が個人宅の清掃の際、タンブラーを防カビ剤で洗浄した後、洗剤での洗浄やすすぎを忘れたために苦情が寄せられた事故に関し、同僚の従業員Xが当該事故を労働組合に報告し、労働組合が組合報や一般公開されているHP上に事故の内容を掲載したことが懲戒事由に該当するとして、諭旨解雇とし、Xがこれに従った自主退職をしなかったので、YがXを解雇した事案です。  

労働判例を読む#528

※ 元司法試験考査委員(労働法) 【グッドパートナーズ事件】(東京高判R5.2.2労判1293.59)  この事案は、派遣の介護士Xが、就職1年目で会社Yに更新拒絶され、この更新拒絶が無効であると争った事案です。更新拒絶が明示されたのは1回だけですが、1回目の更新拒絶が無効となれば、再度、2ヶ月の契約が成立しますので、その満了時に2回目の更新拒絶があったかどうかが問題となりました。  1審は、Xの請求のうち、2回目の更新拒絶までの間の賃金請求などを認めました。  2審も、

労働判例を読む#527

※ 元司法試験考査委員(労働法) 【学校法人札幌国際大学事件】(札幌地判R5.2.16労判1293.34)  この事案は、大学Yと対立してた学長Fと共にFに対する批判的な言動をした教員Xに対し、懲戒解雇をし、定年後再雇用をしなかったことなどについて、いずれも無効である(したがって、教員の地位にある)ことだけでなく、不当な懲戒解雇が不法行為に該当するとして損害賠償を請求した事案です。  裁判所は、Xの請求を概ね認めました。 1.懲戒解雇の有効性  懲戒解雇の理由として、Y

労働判例を読む#526

※ 元司法試験考査委員(労働法) 【栃木県・県知事(土木事務所職員)事件】(宇都宮地判R5.3.29労判1293.23)  この事案は、双極性障害を負った公務員Xの退職願を受けて栃木県Yが出した免職処分の有効性と、退職勧奨を行った上司の不法行為に基づく国賠法上の責任を争った事案です。  裁判所は、免職処分は無効として、Xの公務員としての地位を認めましたが、Yの国賠法上の責任は否定しました。 1.法律構成  Xが公務員の地位を失うのは、Yの一方的な行政行為である免職処分に

労働判例を読む#525

※ 元司法試験考査委員(労働法) 【社会福祉法人恩賜財団済生会事件】(山口地判R5.5.24労判1293.5)  この事案は、病院Yが、パート法改正による同一労働同一賃金のルール明確化に対応し、合理的でない諸手当や給与体系を見直したところ、手取額が減少した従業員Xら9名が、ルール変更を無効と主張して争った事案です。裁判所は、ルール変更を有効とし、Xらの請求を全て棄却しました。 1.論点の設定  ここでまず注目されるのが、有効性を判断するための論点の設定です。  すなわち

労働判例を読む#524

※ 司法試験考査委員(労働法) 【クレディ・スイス証券(職位廃止解雇)事件】(東京地判R4.4.12労判1292.55)  この事案は、外資系金融機関Yに管理職者として勤務していたXが、所属する部門の廃止に伴って解雇された事案で、Xは解雇の無効などを主張しましたが、裁判所は、解雇を有効と評価しました。  なお、固定残業代の合意が有効かどうかも論点となり、裁判所はこれを否定し、未払残業代の支払も命じました。さらに、Xは賞与が未払いである、さらに自宅待機の命令が違法である、等

労働判例を読む#523

※ 司法試験考査委員(労働法) 【アメックス(降格等)事件】(東京高判R5.4.27労判1292.40)  この事案は、産休育休以前には37名の部下がいるなど、チームリーダーとして働いていた女性従業員Xが、復職後、チームリーダーとしてのランク付けが維持されたものの、部下が一人もいない状態になるなど、業務内容が大きく変わったことが、均等法・育休法に違反するとして、会社Yに対して損害賠償を求めた事案です。  1審は、Xの請求を全て否定しましたが、2審は、Xの請求の一部を認めま

労働判例を読む#521

※ 司法試験考査委員(労働法) 【ツキネコほか事件】(東京地判R3.10.27労判1291.83)  この事案は、創業者の息子で、役員だったXが、吸収された後の会社Yで役員を退任し、従業員として勤務していたところ、抑うつ状態となって休職することとなった事案です。Xは、休職前の業務(原職)への復職を希望しましたが、工場に配属されました。Xが復職初日から出社しなくなったため、Yは出社を促す通知を何度か送付し、減給処分も行ったにもかかわらず、結局4か月以上無断欠勤が続いたため、

労働判例を読む#520

※ 司法試験考査委員(労働法) 【東京三協信用金庫事件】(東京地判R4.4.28労判1291.45)  この事案は、総務部の管理職者A(女性)に対して他の管理職者Xがパワハラを行ったとして、会社YがXに懲戒処分(降職降格、始末書提出・記録化)を与えたことに対し、Xがこれを違法と主張し、元の地位にあることの確認や給与減額分の支払等を求めた事案です。  裁判所は、Xの請求を否定しました。 1.事実認定  ここでは、システム導入の進行に関し、Aに対して内線電話で、強い口調で以