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日記11


2148年冬。
インドとパキスタンの局地的な核戦争により全世界は飢饉に陥り40億人が死に文明を終えた。進めど進めど建物の形を維持している物など無く瓦礫と闇が続き風が砂が吹き荒れ視界を遮る。何処を目指し歩くのか自分でも分からないが進むしかない。何時間歩いただろうか遠くに薄っすらと街の様な物が見える、が幻覚かもしれないと考える程に疲弊していた。



『誰かぁ……誰かいないか……』



自分でも出たか出ないか分からない声を振り絞り生存者を探す。街からは返事は無く静寂が続く事に苛立ちながらも続けるしかない。



『誰かいるんだろ?何も悪さしようって訳じゃないんだ……缶詰を沢山持ってる!ソイレントもある!なあ、誰か返事してくれ!』



男は焦っていた、街を見つけた安堵感から生存者が居なければ自分は恐らく挫けてしまうであろう事に気付いていたからだ。しかし返事はおろか物音一つしない、この街にただ一人、いや世界中に生存者なぞいないのかもしれない。



『……誰もいないのか!誰も…もう……いないのか……』



コンビニを見つけ入るが棚は全て倒れ商品が疎らに散乱している。男は店内を物色した。缶詰や酒瓶は中身が入った保存状態の良い物が山程残っていた。喜ばしい事だが同時に絶望へと変わる、生存者がいるならば食料がこんなにも乱雑に大量に残っているはずがないからだ。



『誰もいないんだな…』



男は背負っていたリュックを雑に床に投げ捨て、外に出る。



『ふにゃーん』



いるはずもない生存者を探し叫び続ける。



『にゃんにゃん、にゃにゃん!にゃおーん!にゃんにゃーん、え?私は犬ですが?貴方失礼じゃないですか?』



砂埃が舞い男のNIKEのスニーカーが作った足跡はすぐに消えてしまった。



『任天堂の倒し方を教えましょう!ハンマーでどんっ!ハンマーでどんっ!ハイパーハンマーでどんっ! 説明しよう! ハイパーハンマーでどんっ!とは一蘭でフルトッピングして1870円払う事はかすり傷だと豪語する刀鍛冶が夜通し山岡家に通い蓄えた尿路結石を使用し作り上げたハンマーなのだ!ハイパーハンマーを作る事が出来る職人は作成するのに自傷行為が必須である事から跡取りがおらず今では尿路結石ではなくデヴィ夫人の家の玄関の大理石を勝手に少しずつ削りながら集めてハイパーハンマーにしているんだ!でもやはり尿路結石とは輝きが違うんだ!』



あてもなく暗闇の街を彷徨う。


『中出しさっせてくっれる女性いっませっんかー!病気ないでーす!奢りっまーす!』



男は思った、俺が一体何をしたと言うのだ?インドとパキスタンが……いや、人類とはなんと愚かな生き物なんだ……





『中出しさせてくださいよぉ〜 おねがいしますよぉ〜 あ、もう怒った ならもう勝手に出すわ 絵本に出すわ、グリとグラに出す、もう怒った辛抱たまらん出す!これ本当は出しちゃいけないって言われてんの!うん、そうそう19時にドンキ集合ね あーもうオッケー出すわ で、で、で出たー!バーコードバトラー2!』


砂塵の音が聞こえる。


『まん、まん、まんぞく!10本まんぞく!あっ!家が火事だ!あるあるさんとこの探検隊呼ばなあかん!西川くん!西川くん?!浦和レッズの?!』


遂に、足が、動かなくなった。


『あのねQ太郎はねー頭に毛が3本しかないんだよ(ないんだよ)QQQQQQ濯いだ瞬間QQと落ちてる濯いだ瞬間QQと〜
はぁ……納豆を一粒ずつエンドレスに鼻の穴に入れたら最終的に死ぬなんて、誰も教えてくれないんだもんなぁ〜
ハイパーハンマーでどんっ!ハイパーハンマーでどんっ!ふぅ〜モバゲーとGREEは倒せたけど任天堂はやっぱ無理!』


「がさがさ」


『誰かいるのか?!缶詰がある!ソイレントもだ!すまん今までのは全部嘘だ!無かったことにしてくれ!誰だ?!』


砂塵の音が聞こえる。

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