見出し画像

だよね だよね


 2年生の教室前の廊下で、ちょっと緊張しながら、出番を待っている。

 子どもたちの母校、わたしの母校の小学校に、読み聞かせのために来ている。時刻は朝の8時過ぎ。

 先生に促され、手を洗いにいく子どもたち。朝の手洗いは、まだ続くのだな。マスク着用の義務はすでになくなってから、ずいぶんと日が経っている。この日、マスクをつけない子はちらほら。わたしはマスクをしない。声をしっかりと届けたいから。

 教室では、すでに机を後ろへ片付け、読み聞かせスペースがつくってある。子どもたちは、きちんと体操座りで並んでいる。子どもたちの真ん前で、わたしは椅子に座る。どの子も本が見えるかな。

 子どもたち、元気が有り余っているみたい。一冊だけをじっくり読もうと思っていたが、物足りないって感じそう。それなら、おまけで……

 鞄から、絵本『やさいのせなか』を出す。どんな本なんだろうと、ワクワクしている雰囲気を肌で感じる。

 『やさいのせなか』は、野菜に紙を押し当てて、クレヨンでこすって、出てくる模様を当てっこする絵本だ。黒色の模様から野菜を想像するのは、意外に難しい。

 とうもろこし、はくさい、メロン、野菜じゃないけど魚もある。

 はくさいは、キャベツとレタスと迷うし、魚は野菜じゃないから、思いつきにくい。声に出して答える子、じっと絵を見つめる子、友達に聞く子、いろいろだ。やりとりしながら、ゆっくりと読む。時間の関係で、全部は読めない。

 「おしまい」の言葉に、「もっともっと!」と大勢の子から、リクエストを受けて、それならばとアンコールで、いんげん豆も登場!「枝豆!」と叫んだ子が、答えを知って、バツの悪そうな顔になる。ふふふ。

 メインの絵本は、『まあちゃんのながいかみ』。まあちゃんが、空想する髪の長い世界に、最初は「そんなのウソだぁ」と言っている子も、どんどん引き込まれ、最後は声もなく、見惚れる。

 その表情の変化を、間近で見られるわたしは、しあわせだ。「だよね、だよね」と思う。これを読んだら、髪を伸ばしたいって思う子、けっこういるんじゃないかな。わたしだって、そう思うもの。

 楽しい時間だった。そして、とにかく、子どもたちはかわいい。エネルギーの塊みたいな、ゴム毬みたいに弾むような、そんな感じ。近くにいるだけで、元気をもらえる。

 今年は、夏までに後4回、読み聞かせに行く予定だ。

 何を読もうか、今からワクワクうきうきしている。



この記事が参加している募集

#やってみた

37,328件

#今こんな気分

76,782件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?