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その”楽しい”とは?(続編)

 スポーツに関わる仕事をしていて、特に私は陸上競技に関する仕事であるが、「スポーツが楽しい、陸上が楽しい」とはどういうことだろうか?と言う疑問をずっと持っている。(→過去のnote その”楽しい”とは?(前編))
 なぜならば、実業団陸上選手をしていた時、つまり陸上競技を仕事にしていて、最後の方は自分の思考として結果が全てとなり、陸上競技を続けることが非常に苦しくなってしまった経験が大きいと考えられる。その経験の最中は、何とかこの状況に折り合いをつけたいと、本当は陸上競技は向いてなかったのかも知れない、性格に合ってなかったのかも知れない、もともと走ることが得意で始めたわけじゃないから本当は好きではないのかも知れない・・・とたくさんのネガティブな言い訳を浮かべていた。そんなことばかり思っていると、恐ろしいことにそれが事実だと考えるようになっていた。

 この様な、少々ダークな時期を経て、ある時「それは事実じゃない!!」って気づいた瞬間がある。それは、陸上選手を引退後、百貨店勤務を経て、実家で次の進路を模索していた時に、中学校の時につけていた練習日誌(正確には試合の感想をつづったもの)が出てきて、読み返していた。そこには、試合ごとに記録が伸びていった喜びや、記録が出なかった原因を自分なりに書いていたり、とても正直な気持ちが書いてあって、かなりおもしろく、誤字もたくさんあって、字もあまりきれいじゃないくて・・・つっこむところしかないのだけど、ふと「楽しく陸上していたんだな」と思えた。結果を出さなければないけないと言う思考のみになっていて、周りの応援してくれている方々や、コーチの話にも耳を傾けられていなかったんだろうなと今なら思う。
 引退して、ダークな思考になってからおそらく3年経って、陸上を楽しんでいたこと、はじめ走ることは得意じゃなかったのに得意と思える様になっていった中学生のことを思い出して、それまで陸上は嫌いだったんじゃないか?と、いつの間にか間違った認識をしていたことが、自分でも恐ろしくなった。それと同時に、思い出せてよかったと心から思えたし、それから自分がこれから何をしていこうかと言うことが、開けていったのを覚えている。  そして、練習日誌の提案をしてくれた部活動の顧問の先生たちに非常に感謝している。また、その言葉を受けて練習日誌をつけていた自分(練習日誌をつけるのは強制ではなかったため、最終的に練習日誌をつける選択をした自分)にも”ありがとう”と思った。

 そんな経験を踏まえ、「陸上(走るのが)楽しいとは何か」と言う問いに戻ろうと思うが、その答えに触れた瞬間を過去のnote『走る理由』に書いていた。この時は、久しぶりに「走るのが楽しい」と思えた。つまり、レースで勝つことでもなく、記録を更新することでもなく、走る動作自体が楽しいと言う感覚、つまり風を切る感覚だったり、体を動かす感覚だったり、景色が映り変わっている感覚、走ることで得られるさまざまな感覚が直感的に気持ちいいとか爽快だと思えた。引退して、走ることが日常の生活で無くなり(つまり必要に迫られた時にしか走っていない笑)、そんな経験はしばらくしておらず、走っていても久しぶりな感覚だった。やはり、走ることが仕事、つまり走ることが日常となっている現役選手生活では、なかなかこんな感覚になれることは、難しいんではないかとも思った。
 走ることが楽しいとは何なのかという一つの答えが見つかった瞬間ではあったが、では、走ることが日常的になっている中で、この楽しいという感覚になるのはどうすれば良いのかという新たな疑問が出てきた。そんなことを頭の片隅に置きながら日々を送っているが、その楽しいのヒントになる一文に出会った。それは、ノルベルト・エリアス/エリック・ダニング著、大平章訳「スポーツと文明化」の中で、

 (前略)もし試合がいいなら、それ自体で非常に楽しめるならば、たとえ負けたとしても、なお楽しいのである。

これは「走るのが楽しいとは何か」のヒントになる一文であった。

 今では、走ることは好きなんだろうなと自分では思っているけど、その先は求めていない。走って結果を出すとか、記録を更新することに執着や、強い関心があるのではない。過去note『走ることの意味』でも触れているが、走ることによって得られる新しい感覚、または走ることによってしか得られない感覚、新しい体の気づき、沸き起こる感情などがスポーツの醍醐味だと感じているように思う。

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 一人で読むのはなかなか難しい本を上田滋夢先生(追手門学院大学社会学部教授)が、解題してくださるという貴重な機会をいただき、その"楽しい"とは?の続編が書きたくなって、久しぶりに更新しました!!今の私に合っているのは、自然体に走りたい時に走る!です(笑)
そうすると、走るのが好きかも知れないと感じることができるので!!

#マラソン #ランニング #陸上競技
#コーチ  #走る意味



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。共感していただいだり、楽しんでいただけましたら、とても嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m