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⟬創作小説⟭ COANDROID 第1話



《あらすじ》
自称非戦闘型のアンドロイドの主人公は、なぜか感情を持っている。
自分はどうして作られたのか?自分の存在理由を知るために冒険へ出て、仲間と出会っていく。
自分自身に秘められた謎と向き合う物語です。


あまたの種族が暮らす、1つの大陸【シード】。
この大陸はひし形をしており、まさに種のような形をしている。大陸の周りは広大な海に囲まれており、数カ所の都市に港は存在するもののほとんどの場所は断崖絶壁であり、この世界に他の大陸があるのか、未だに未知とされている。
このシード大陸には、多種多様の生物と主に3つの種族である、神族、人族、獣人族が助け合い、またはお互いの領域を超えず、小さないざこざはあれど、安定した暮らしをしていた。
それが維持できているのは、この大陸の中央に【ミストリア山脈】という巨大な山脈が大陸を2つに分けていたからだろう。
特別な力と使命を持って生まれる自然現象に近い存在の神族、その人数は片手で数えれるほどしかいなく、姿を見たものはいない。
自然の中で暮らし、魔力を持ち、獣の姿と人の姿になることができる能力をもつ、獣人族。
魔力をもち、人の姿から獣の姿になることはない、錬金術に長けている、人族。
ミストリア山脈の中央に位置する1番高く険しい山は山頂が常に霧がかっており、他の一族でたどり着けた者はいない【神の山ミアスト】と呼ばれる神族の街があるとされている。
そしてひし形の大陸の山脈から上側を【ラクト】、下側を【ダクト】と言い、各種族は住み分けしていた。ラクト側は文明が発展した都市が多くあり、首都もある。人族や温厚な獣人族が多く暮らしている。ダクト側は自然が多く残る未開の地で人族とはあまり関わろうとしない獣人族の一部が暮らしている。
どちらの種族も魔力という力を持つ者達がおり、『魔術』『錬金術』というものが文明として発展している。錬金術が扱えるもの達のおかげで、機械が発展した都市がラクトにあり、そこで初めて人型機械『アンドロイド』が作られた。
人型機械『アンドロイド』たちはプログラムされた仕事をこなし、淡々と生活をし、他の種族と共に暮らしていたのだ。
ーーー轟音とともに、ある日それは始まった。
この世界で初めての種族間での大戦だった。
人族と獣人族で争うことになり、人族たちの錬金術師はアンドロイドに『戦闘型』を生み出し、この戦争へ参加させた。
中立な立場であった神族は、この大戦を終わらせるため尽力し、大戦を終わらせた。
その大戦後、『スコープ(監視する者)』と呼ばれる世界的機関が発足し、各種族の長が定めたルールに基づき治安維持をしている。そして、大量に廃棄処分となった戦闘型のアンドロイドたちはこの機関のルールにより、二度と作られることはなくなった。
が、復興のさなか、ある1人の神族により首都が1つなくなるという大きな被害を出し、この一連の悲劇は語り継がれることになった。

この物語はそんな世界で、ひとり、自分が『何者なのか』を探す青年のお話である。


シード大陸、最北端の街【クアル】。
ミアスト山脈から流れる大きな河川があり、宝石やガラスの産地だ。レンガ造りの街並みが美しい。
この都市には、最西端の都市【ルタ】への船が港から出ている。
船の警笛がなり、出港の合図が響く。
1時間前程にここへたどり着いた船が往復するために出港するのだ。
午前中の出港のため、見送る人やここへ来た人で賑わう中、オレンジ色の長髪を1つに束ねた青年は“スコープ”の制服を着た男2人に捕まっていた。
屈強な男2人に両端から腕と腰紐を捕まえられている。
「ご、誤解です!!離して下さい!ぼくは戦闘型アンドロイドなんかじゃないですっっ!」
青年は暴れることはせず、真摯に訴えている。
周りの人々はザワつきながら、この3人を避けて歩いていく。
「嘘をつくな!おまえのその見た目、戦闘型アンドロイドとしか言いようがない!」
スコープの彼が言う通り、青年の見た目は少し変わっていた。
髪の色はこの世界では珍しいとされる、オレンジ色。
頭の左の耳の後ろには角のような形の機械がついている、旧式の戦闘型アンドロイドはこれが制御装置と呼ばれる機械だったらしい。
そして、肌を隠した服装に、胸元にはオレンジ色にきらめく宝石のような『コア』。
戦闘型アンドロイドはこの『コア』生命維持装置がついていることが1つの目安だ。
もろもろ、スコープの2人にとって、この青年は疑わしい存在だ。
「詳しいことは“スコープの眼”で話してもらう」
捕まったまま、無理やり歩かされる。
「ほんとです!ぼく、アンドロイドだけどっ!戦うとかほんとにできませんっっっ、痛っっ…」
出来るだけ我慢をしていたのだろうか、青年は少し目が潤んできて今にも泣き出しそうだ。
「ぼくっっ行きたい場所がある……だけ……でっっ、初めてこのクアルに来たのに、、こんなっっ」
というか、もう泣いている。
泣き出した青年に力が抜けたスコープの2人はため息をついた。
「そうは言ってもなぁ、オレたちも仕事だから」
「とりあえず、君の事話してもらわないと」
申し訳なさそうに掴むのをやめ、スコープの2人は泣いている青年を連れて歩き出した。

この“スコープの眼”はいわゆるスコープの各都市に存在している支所だ。
牢屋や取り調べるための部屋があり、常に2人1組で3~4チームが昼夜交代で勤務している。
取り調べの部屋で、泣いていた青年はホットミルクを貰い落ち着いていた。
「話せるか?全く、泣き出すとは思わなかった……」
小柄な女性と細身の男性のスコープが、屈強な2人のうち1人から話を聞いている。
もう1人は青年の前に座り、ため息をついている。
「こんな戦闘型アンドロイドいるのか?」
「私も始めて聞くわ」
「過去の資料にはそもそもアンドロイドに泣くものは居なかったとあるが……」
細身の男性は分厚い資料を見ながら話している。
女性は何やら、紙とペンを使い、青年の見た目などを記録している。

コンコン
扉を叩く音がした。
「すいませーーーん!スコープの人いますかー?」
“スコープの眼”の建物の前で、黒髪で帽子を深く被った青年が立っていた。
屈強な男が扉を開けた。
「どうかしましたか?」
「オレンジ色の髪の青年を知りませんか?」
「今ここにいるが、お知り合い?」
「友人なんです、港で見失ってしまって困っていたんです。街の人がスコープに連れてかれたって話をしていて」
黒髪の帽子を被った青年と屈強な男が扉の前で、話をしている。
その声は、なにを話しているのかわからないが、取り調べの部屋にいるオレンジ色の髪の青年にも届いていた。

屈強な男が重い足取りで取り調べの部屋へ来た。
「おい、オレンジのおまえ、友人が外で待ってるぞ」
なぜか、少し、不満そうな顔をしている。
「…ともだち?」
すっかり泣いた顔になっていた青年は少し不思議そうに、流されるまま、部屋の外へ出るように言われた。
青年の後ろでは、スコープの4人がコソコソなにやら話をしている。
オレンジ色の髪の青年は“スコープの眼”から外へでると、少し安心して深呼吸をした。
「よかった~おまえ、探したんだぞ!」
バシバシと背中を叩かれ、耳元で
「旅を続けたいんだろ?俺の話に合わせろ」
と、ボソボソと話した。
びっくりしたオレンジ色の髪の青年は、少し頷いた。
「コイツ、アンドロイドに憧れてて、こんな格好してるんですよ、ご迷惑かけましたー」
スコープの4人に挨拶をし、歩きだした。
その少し後ろをオレンジ色の髪の青年がついて行く。

レンガ造りの街並みを少し歩き、食事をとる為にレストランのような酒場のような店へ入った2人。
穀物で出来たお粥のような主食と野菜を煮たおかずが2人の目の前に運ばれてきた。
この大陸では主に穀物と野菜や木の実、卵などがメインで肉や魚はあまり食べないようだ。
「まぁ、ひとまず食べろよ、お腹空いてるだろ?」
「あ、あのぼく、、、」
「わかってる、旅をしてるんだろ?俺も旅をしてるんだよ」
もぐもぐと食べつつ、黒髪の帽子を被った青年は話を続ける。
「スコープの連中って少し強引だから、おまえのこと心配になって、ま、、旅仲間だと思って助けたんだよ」
「…ありがとうございます」
少しおどおどしながら、オレンジ色の髪の青年はお礼を言った。
「俺の名前は、星(せい) 黒璃(こくりゅう)だよろしくな」
「ぼ、ぼくはグライトス・ジンです」
「グライトスは何処を目指して、旅をしてるんだ?」
「ぼくは、首都セイフィスへ行きたいです。ここから船で行けると思って、船に乗ろうとしたら、『お金』がいるって言われて、ぼく分からなくて」
「おい、おまえ、まさかお金知らないのか?」
「えっと……」
「今どき、どこのお坊ちゃまだよ……とくにこのクアルから出てるセイフィスへの船は料金が高い豪華客船だ。親からお金もらわなかったのか?」
「あの……えっと……ぼく家出してきて……」

星と名乗る青年は、頭を抱えた。
星はグライトスの知識のなさに驚き、この旅に必要なものを食事をしながら、ざっくりと教えた。
何も知らず、首都へ行こうとしたグライトスの行動力だけはほめつつ、ここは任せろと食事代を星が払い、この店を後にした。
ひとまず、グライトスの着ていた服の1つや持ち物から換金できそうなものを換金し、次の街へ行くためにクアルを出て南の【ミッセン】という街を目指すことにした。
この大陸は街と街の間が森で囲われている所もあり、このクアルからミッセンの間はとくに深い森だった。
お金があれば乗り物や馬などに乗れたのだろうが、少ない手持ちなため、徒歩に頼るしかない。
グライトスは星に言われるがまま、一緒に歩いて、森を抜けることにした。


クアルの“スコープの眼”ーーーー
「いや~あれはびっくりしたな」
「まさか、ボスが直々に来るなんて」
「私ボスの事、拝見しそこねたわ……いい男だったのかしら……」
「噂通り、若かったぞ」
「それにしても、あれが最重要案件の人物だったとはなぁ」
「全然、そうは見えなかったな、弱かったし」
「そしてボスがその行方を共にするなんてな」
「きっとボスにはボスの考えがあるのよ」
「あの若造が?」
「言っとくがボスはめちゃくちゃ強いとの噂だぞ」
「ええ、たしか特殊な力をお持ちだとか」
「ーー特殊な力か……誰も見たことないんだろ?」
「でも噂では数十人を一気に倒したとか」
「あれがぁーー?」
「しーーーっっ声がでかいわよ」


日差しの強さも増し、森の中を歩く、星とグライトス。レンガ造りの街並みは消え、森の中を次の街まで行き来する人で作られた、舗装されていない道が続く。
少し遠くから微かに、川の流れる音がしており、魚が跳ねたり、動物たちが水遊びする様子がわかる。
深く続く森は、奥へ行くほど昼間なのに、闇が広がっていた。
「グライトスはどうして首都を目指すんだ?」
ふと、星がグライトスへ話しかける。
随分歩いているが、歩きなれているのか、疲れた顔では無い。
グライトスは、疲れているわけではないが少し俯いて話し出した。
「……ぼくは、自分が何なのか知りたいんだ。首都へ行けばわかるような気がして……ジンは行くなって言うんだけど、このままじゃモヤモヤして」
「ジン……?」
「ぼくと一緒に暮らしてる人だよ」
「親ってことか?」
「……親、、なのかなぁ。アンドロイドだけど過去の記憶がない、ぼくの事を面倒見てくれて、感謝しかないよ……」
「記憶がない?」
「うん、目が覚める前の記憶がないんだ。目が覚めたら、ジンの家に居た」
「そうか、まぁ俺も両親いないし、この世界ではよくある事だ」
「……そうなんだ」
少し、驚いて星の顔を見るグライトス。

キューーーー!!!!!

突然、小さな獣の鳴き声が響いた。
瞬時に声の聞こえた方へ走るグライトス。
「…えっ!?ちょっと待て!!」
まさか、グライトスがその方へ行くと思わなかった星は一瞬、遅れてしまった。
森のうっそうとした茂みをかき分け、進んで行くと、鳴き声の主がいた。
フワッとした白い毛並みはまるで綿あめのようだ。小さな耳と手足、細く長いしっぽが見える。
その白い毛には少し血がにじんでいた。
「あっ!いた!!大丈夫!?」
「キュ~~~」
「ケガしたのかな?痛いのかな?!」
「キュキュ~」
グライトスのかける言葉に、小さな獣は少し元気無さそうに返事をする。
「ーーーおい!!どうしたんだ!?」
少し遅れた星が少し後ろの方で声をかける
「この子がケガしたみたい!!」
「っ!!この辺りは闇獣が出るエリアだぞ!」
なにかの殺気を感じた星はその場に立ち止まった。
俊敏に動く、漆黒の犬のような獣がグライトスの前に複数現れた。
「!!!だ、ダメだよ!!この子はケガして、ここへ入っちゃっただけなんだ」
「ガルルル……」
「君たちのテリトリーなのはわかるよ、すぐ出ていくから……!!」
許すものかと殺気立つ黒い獣たち、その数は4、5匹に増えていた。
「ゴガォッーーー!」
1匹がグライトスに飛びかかり、その鋭い爪のある前足で攻撃してきた。
グライトスは瞬時に白い獣を抱き抱え、丸くなる。
その右腕に、切り裂かれたような跡ができた。
服が破れただけで済んだようだ。

『ーー本当に、戦わないのか?』

何かを見極めていたような星は、驚き、グライトスへ駆け寄る。ブツブツと小さな声で呪文のようなものを唱えると、眩しい白い光が周りをつつんだ。
その光に怯んだ黒い獣達は、たじろぎ、漆黒の森の闇へと入っていった。
「おい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫ーー!」
立とうとしたグライトスは、へなへな~と尻もちをついた。
「へへ、びっくりして腰が抜けちゃった……」
グライトスの胸元にいる小さな白い獣は周りを見渡し、安心した表情を見せた。
「ほら、見せてみろ、そいつ、ケガしてるんだろ?」
「キューっ」
「怖くないよ……ぼくたちを助けてくれたんだから」
「キュ……」
星が小さな白い獣を手当すると、モフっとした毛の中から、白い翼が出て、2人をたびたび振り返りながら空を飛んで森へ帰っていった。
それを見送り、元来た方へ2人で茂みをかき分けて、歩いていく。
「おまえ、獣と喋れるのか?」
「…なんとなく、言ってることがわかるだけだよ。それにしても、星さんてすごいね!魔術使えるんだね!」
「大したことない、お前は使えないのか?」
「ぼくは全然、こんな見た目だけど……魔力もないし、戦うとか怖くてできないし、何も知らないし……」
あはははダメだねと笑いながら、歩くグライトス。
「何も出来ないといいながら、小さな獣を守る姿には驚いたけどな」
星はグライトスの勇敢なところに驚きつつも、その眼差しは少し鋭い。

『ーーーオレはこいつが、あの最高錬金術師ジンが作った戦闘型アンドロイドなのか見極めなければないらない』

2人はふたたび、南へ森を歩き始めた。


To Be Continued.


▼第2話▼

▼プロローグ▼



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