見出し画像

⟬創作小説⟭ COANDROID 第2話

自称非戦闘型アンドロイドの青年グライトスと、ひょんな事からグライトスと同行している黒髪で帽子を深く被った青年、星  黒璃(せい こくりゅう)。
2人は、シード大陸の最北端の街【クアル】から出て、数時間、クアルから南の【ミッセン】を目指し黙々と森を歩いていた。
「星さん、、森って広いんですね……」
汗を滲ませてグライトスが言った。
「少し休むか?この森を抜けるのに2日はかかるぞ」
「2日も…!?」
「まったく、よくそれで家出しようと思ったな」
あたりは既に暗くなっていた。
「よし、今日はここで野宿だ。川も近いし、火を炊いて獣避けしよう。燃えそうな木の枝を集めてきてくれ。俺は軽い術で結界を張っておく」
「わかった!拾ってくるね!」
「あまり離れんなよーー!危ねぇから!」
「はーい!」
疲れてるのが嘘のようにはしゃぐグライトスを見守りつつ、星は四方の木に術を施していた。


たくさんの本が部屋の全ての壁を埋めるように並んでいる。火を使うランプが灯り、そこで少年は難しそうな本を読んでいた。
バタバタと走る音がし、部屋のドアが勢いよく開く。
「ジン様ーーーっっ大変ですっ!お兄様が街からいません!!」
「セレスト、君が慌てるなんて珍しいな。あの子が居ないなんて訳ないだろ……」
「わたくしもそう思ったのですが、なかなか帰ってこないので、発信機の位置を確認したら、この街になく、、」
少年が術を言うと、目を閉じた。
外見では分からないが、とある人物を追っている映像が頭の中に浮かぶようだ。
少年は一通り見終えると、頭をぐしゃっとかいて
腰掛けていた椅子から白い上着を取り、足早に部屋を後にした。
「やられた、、ホントに家出したようだ。追いかけるぞ!まだこの時間なら船に間に合う。君も来い」
「はい!」
2人はバタバタと支度を始め、家を出ていった。


グライトスは暗い森の中、枝を集めていた。
『ぼく、独りで、できると思って出てきたのに』
枝を集めながら、星に助けられたことを思い出していた。
『知らないことだらけで、自分が情けないよ……』
腕の中の枝がカラカラと音をたてる。
地面に落ちていた枝を拾おうと手を伸ばした、その時だった。

ドサッーーと地面に何かが落ちた音がグライトスの後方からした。

「なっ、、なに?!」

グライトスは音のした方へ足を伸ばす。
草の垣根から見えたのは、“手”だった。
「た、た、大変っっ!!」
『ぼくはなにもできない、、星さんなら。』
グライトスはすぐに星がいる方へ走った。
集めた枝はそこそこに、グライトスは事情を説明して、元の場所へ星を連れていく。
星が倒れていた人物を抱き起こした。
その姿は長い獣の耳と尻尾があり、獣人族と呼ばれる種族であった。
「おい、大丈夫か?」
話しかけながら、首元を触った。
「脈はある、気を失ってるだけだ。傷も無いみたいだし、結界内に連れていこう」
2人は気を失った人物を連れ、自分達の野営地へ、戻った。

パチパチと火が燃える。
気を失った人物へ水を飲ませようとしたところだった。その人物の瞳がひらく。
「……あ……れ?」
「あっ!大丈夫ですか!?」
視界にオレンジの髪の青年が映り、飛び起きた。
「……な、、なんだ!?ここは!?」
「あなた、森で倒れてたんですよ?大丈夫ですか?」
星は落ち着いた声で話した。
獣人族の男性は頭を抱え丸くなり、
「うあ……あぁ……」
気を失う前の恐怖を思い出していた。
「水……飲めそうですか?」
グライトスが差し出した水は跳ね除けられてしまった。男性は恐怖で周りが見えなくなっている。
「落ち着いてください!」
グライトスは怯え丸くなる男性の手を取り、握りしめ、グリーンの瞳で訴えた。男性は吸い込まれそうなグリーンの瞳に、魅入られるように落ち着いた。
「お、俺は……この森の奥の村に住んでて。急に村の仲間が暴れだして、必死で逃げて……」
「急に暴れだした?あなた達の一族は温厚だと聞いていますが……」
「そうなんだ、、俺たちはこの森でひっそり暮らしてるだけで、相手を傷つけたりしない、なのにあいつ急にっっっ、まだ村の家で家族が隠れてる…」
獣人族の男性は星とグライトスに深々と頭を下げた。
「お願いだ、俺の村を助けてくれ」
2人はじっと男性を見ていた。
「俺達は先をいそ……」
「星さん!ぼくからもお願いします!」
頭を下げる男性の横で、グライトスも頭を下げた。
「おまえなぁ……」
「ぼく、この人の家族や村の人が心配で、このまま旅なんて続けられないよ」
星は、はぁと深いため息を吐いて、しゃーねなと立ち上がった。
「ほら、急がねぇと、村の場所案内するんだろ?村のヤツら助けるだけだからな」
「あ、ありがとうございますっっ」
3人は火を消し、足早に村へ急いだ。


真っ暗な森の中、獣人族の男性の後を追いかけながら、先を進む。長い耳と天性の眼の良さなのか、男性はスイスイと先を進んでいく。
しばらくして、木々の間から、木材で出来た家が見えてきた。恐ろしいほど静寂に包まれている。
「良かった、、こっちにあいつは居ないみたいだ……」
さほど大きくない家が立ち並び、『ひっそり暮らしている』のが伺える村だった。その奥には、大きな樹が見える。
『大きな樹………なんだか、、、悲しい?』
「グライトス?どうした?」
「いや、大きな樹だなぁって……」
獣人族の男性は、自分の家を確認していた。
扉を開け、家族の無事を泣いて喜んでいる。
「村の人の安全を確保したい、1箇所に集まってくれ」
星は慣れたように、獣人族の村人達へ指示を出していく。
「慌てず、ほら、落ち着いて」
グライトスも星の真似をしつつ、村人たちを誘導した。
星は1箇所へ集めて、獣人族の男性と打ち合わせを始めた。怪我をした人もいたようで、怪我人を星達が目指す街まで連れていくことになったようだ。
話がまとまったところへ、村の女の子が怯えだした……。
「あ………来るよ……っっ、パパがっ」
「パパどうしちゃったの………」
お母さんと思われる女性が女の子をギュッと抱きしめた。
女の子が指を指した方をみると、ゆらゆらと獣人族の男性が歩いてくる。
その出で立ちは、まさしく正気ではない。
「来たのか……っ」
星は身構えた。村人の戦えるもの達も各々の武器になりそうなものをもち、構えていた。
「俺が取り押さえる!あなた達は家族をここで守るんだ」
星は走り、正気のない男性へ近づいた。
「オマエ………ニンゲンヵ…?」
「さぁね」
「ニンゲン、、ニンゲン、、、コロスッッ!!」
長い爪のある腕を振り上げ、星に襲いかかってきた。
星はくるっと攻撃を避け、手馴れたように、相手の背後へ周り、背中に手を添えて術を唱えた。
その瞬間、男はバタッと膝をつき、動きを止めた。
「よし。寝たか?」
どうやら、相手を眠らせる術をかけたようだ。
星は、もう大丈夫だ、と村人達の方へ駆け寄った。
その刹那だった。

「危ないっっっーーー!!」

そう叫んだグライトスは、星の背後を庇い、鋭い爪でその背中を切り裂かれた。
「ッッーーー!!!」
振り向いた、星の腕に倒れ込むグライトス。
「おいっ大丈夫か!!!」
星の手が生暖かくなる、グライトスは出血していた。
「痛くないよ……ぼくアンドロイドだからでも……すごく、、眠い……」
「痛くないからって、大丈夫じゃねえだろ!!」
「ぼくより、あの人、助けてあげて、……ね、眠ってる……けど動い……てる」
グライトスは大きな樹木を指して
「あの……大きな樹が悲しんでる…………」
そう言って眠ってしまった。
「おいっ!!どうゆう意味だ!!」
星は術を使い止血をし、グライトスを村人に預けた。
ゆらゆらと、、眠っているはずの男性が動いている。その後ろには、大きな樹木。

「緊急事態だ、あまり人に見られたくないのに」

星の両手が紫色に輝きだした。
その光が空中に魔法陣を描きだす。

「出番だ!出てこい!!」

その魔法陣は輝き、3人の羽をもつ女性が現れた。その姿は星より小さく、まさしく妖精だ。羽はあるが、羽ばたく様子はなく、空中に浮いている。
「紫の光……噂できいた、あの力……」
村人のおばあさんが驚いている。
「……あの方は妖喚族の生き残りだったのか」
「ようかんぞく?」
小さい男の子が聞きなれない言葉に首を傾げた。
「わしたちはもう大丈夫じゃ、あの方の力があれば」
おばあさんは星の方を見つめた。


「星~っ、久しぶり☆」
赤い羽で元気な子は星に抱きついた。
「ほら、星さまが困ってるわよ」
緑の羽の子は落ち着いて、微笑んでいる。
「わたくしたちを呼び出すなんて、珍しいですわ。何事かしら」
青い羽の女性は辺りを察し、脅威のする方を向いていた。
「水羅、風森香、龍火、3人の力を借りたい。まず水羅、あの樹木をどう思う?」
「良くないですわ、呪いが掛かっています。その呪いの力であの男性が操られていますわ…」
「呪いを解けるか?」
「わたくしと風森香の2人で十分ですわ」
「じゃあ星とわたしはあの人を止めるねー☆」
「よし、呪いは任せたぞ。龍火行くぞ!」

星と妖精達は二手に別れた。
星と龍火はゆらゆらと操られている男性からの攻撃を交わしつつ、足取りを止めている。
その間、水羅と風森香は大きな樹木を囲み、術を唱えた。青白い光と緑の光が溶け合って、大きな樹木を包んで行く。
樹木の内側から、真っ黒な石のようなものが出てきた。その石にパキパキとヒビが入り、最後には砕け散った。
その瞬間に、ゆらゆらと動いていた男性は倒れ込んだ。男性が地面にぶつからないよう星は受け止めた。男性は眠っている。
「…………呪い、なんの呪いなんだ?」
星は不穏な力に、戸惑いが隠せなかった。
『ニンゲン、、ニンゲン、、、コロスッッ!!』
叫んでいた言葉を思い出していた。


呪いが解けた樹木に風森香が手を添えていた。
大きな樹木を見つめ悲しそうにしている。
「風森香、戻りましょう」
大きな樹木を後ろめたそうにその場を離れる。村人達にもう安心だと伝えている星の元へ戻ってきた。

「風森香、水羅、戻ってきたな、呪いの首謀者はわかりそうか?」
「呪いはこの人物のものではなかったようです。あの樹木は村人たちを怖がらせてしまったことを悲しんでいます。そして呪いに抗っていたようで、、、、そのもう、、力尽きてしまわれていますわ……」

星はその話をきいて、驚いていた。
グライトスが眠ってしまう前に
『あの……大きな樹が悲しんでる…………』
と言っていたことを思い出していた。
『アイツは動物だけじゃなく、植物の気持ちもわかるのか?………アンドロイドが?』

村人のおばあさんは涙を流しながら、樹木へ歩きだした。
「この村のご神木が私たちを守ってくださっておったとは……」
村人達はおばあさんに続くように、大きな樹木の方へ歩み寄っていく。
大きな樹木は葉が全て落ち、枯れ木になっていた。

「…大丈夫だよ」

村人達の後ろから声がした、そこには眠っていたはずのグライトスが立っていた。
へへ、少し寝ちゃった、、ごめんねと言いながら、樹木へ近づく。そっと枯れたその樹木に触れた時だった。樹木が脈打つような、一瞬、光が包まれたような。不思議な感覚をその場の全員が受けた。

「ほら、、生きてる」

風森香はとても驚いて「信じられない」と樹木を触れて言った。
「わたくしのエネルギーを少し送っておきます」
そう言うと、緑の光が大きな樹木を包み、枯れた枝に小さな芽が出てきた。
「ありがとうと申してますわ」
村人達はわぁーっと抱き合って喜んでいた。そして、星とグライトスに感謝の言葉をたくさん伝えていた。
「パパを戻してくれてありがとうっっ」
「こんな小さな村を感謝しても足りません」
「お兄ちゃんたち、ありがとうーー!!!」
「あなたのような方がこのような村を助けてくださるとは、なんとお礼を申したらいいか」
「ほんとうにありがとうございます。ほんとに、ほんとに」 
その感謝は、星もグライトスもたじたじになるほどだった。
むしろ星は自分が助けたことは内密にと村人達へ念を押していた。

「星さんて、すごい力があったんだね……よろしくね、妖精さん、ぼくはグライトス・ジンだよ」
「ご主人様共々こちらこそよろしくお願いします、あなたこそ不思議な存在ですわね……」
「またね~☆」
といい、水羅と龍火は光の魔法陣の中へ消えて行った。

「風森香、ごめんな、もう一仕事頼むよ」

「お易い御用ですわ」

風森香の身体が光り、一瞬で、大きな白い龍の姿になった。

「わぁーーーーこれが、、、龍?」
「わしも初めてみたわい」

妖精の中でも一際異彩な『龍精族』と言われる一族だ。普段は妖精の姿でいるが、大きなこの龍の姿が本来の姿だと伝説に言われているらしい。

「では、わたしの背にどうぞ」

その大きさに村人達も驚き、めったにない機会だと皆で集まっていた。星は村の怪我人を背に抱え、慣れたように、風森香の背に乗る。最後に手を伸ばし、グライトスを引き上げ自分の前へ乗せた。

「内緒だからな、風森香、街の近くまで頼む」

村人達に別れを言うと、風森香はフワッと風に乗り空へ飛んだ。
村人達がだんだん小さくなっていく。
空は白んで、朝日が少し出ていた。大陸シードの森やミストリア山脈が一望できるその素晴らしい景色。グライトスは、初めてみた景色を一生忘れないようにと、そのグリーンの瞳に焼き移していた。

後ろに乗っている星は、『アンドロイドなのに……』グライトスへたくさんの疑問を抱きつつ、風に靡くオレンジの髪、好奇心の塊の子どものような、そしてガラスのように危うい背中を見つめていた。


To be continued.

▼第3話▼

▼第1話▼



最後まで読んでいただき、ありがとうございます🤗
あなたにとって少しでも楽しく過ごせるような記事を投稿をしていきますので、スキ・コメント・フォローなどを頂けますと幸いです☆໒꒱ Ulla


2023,01,29  All rights reserved by  Ulla.©2023Ulla

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?