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⟬創作小説⟭ COANDROID 第3話

自称非戦闘型アンドロイドの青年グライトスと、ひょんな事からグライトスと同行している黒髪で帽子を深く被った青年、星  黒璃(せい こくりゅう)。
グライトスの旅の目的地であるシード大陸の首都【セイフィス】を目指すため、2人は森を抜け【ミッセン】に来ている。
この【ミッセン】に来てから2日が経とうとしていた。

星の呼び出した龍精族、風森香の背に乗り、人の足で約2日かかる森をひとっ飛びでたどり着いた。
この【ミッセン】は商業都市であり、鉄道で都市【フィフィ】へ行くことができる。【フィフィ】はこのシード大陸のラクト地方で最大の湖アクスの西に位置する。首都【セイフィス】はこのアクス湖の東に位置しているため、最短行路である船が出ている。
星がグライトスへ案内したのはこの道順だった。
このまま鉄道にのり、【フィフィ】で上手く船に乗れたら、あと3、4日で首都に着く手筈だ。

2人はこの商業都市の中でも安い宿に泊まっている。
この【ミッセン】は鉄道を中心に広がっており、商い屋が多く、多種多様の店が街の至るところにあり、人が多い。別名、鉄道都市と言われ、駅の周りは高級な店が多く、離れる程に小さなこじんまりした店が多くなる。一番離れたところはスラム街のようになっており、闇市のようなところでヤバい物も売られているらしい。魔術の力を上げるための薬や装備。アクセサリー、洋服、食べ物屋に宿屋。本や錬金術師が作った機械など、いい意味でも悪い意味でも、この大陸で一番“物”が揃うところでもある。

グライトスが負った傷を回復させつつ、星はグライトスの知らないところで、森の村で起きた一連の事件をスコープへ報告していた。

「星さん、ぼくの背中の傷もう大丈夫だよ?そもそも痛くないし」
「あんなに出血しておいて、そんなすぐ次の街へ行けるわけないだろ……(だいたいアンドロイドなのになんで出血するのかわかんねぇ、傷は人間みたいな傷になってるし、でも痛くねぇみたいだけど……)鉄道乗るのにお前は目立つから色々準備してるだ、大人しくしてろ」
「そっかぁ……ぼく目立つのか……」
グライトスはしゅんとしてベッドの上で丸くなる。
帽子を被っている星をみた。

「あ!ぼくも帽子、被って行動する!」
「はぁ~!?」


商業都市の夜は、ギラギラと明るい。
少し大人なお店や居酒屋、酒屋などがあるためだ。
高級街ではギャンブルができる店もあるらしい。
そんな騒がしい街並みを、闇市場と呼ばれるエリアの廃墟の建物の屋上から、暗く重い空気と闇に溶け込みそうな色の重たそうなコートを身にまとった青年が見渡していた。
「……グライトス、やっと家から出てきてくれたんだね」
口元がニヤリとし
「僕たちは引き合うからすぐにわかるよ、……やっと会えるのを楽しみにしてる」
その声はこれから起こることへの期待なのか、少し穏やかで、とても不気味だった。


翌日、2人は宿の近くにある小さな服屋を訪れた。
店のドアを開けると、額に角のある青い毛色で耳の尖った獣が伏せていた。まるで門番のようだ。
同時にカランカランとドアの上にある鐘が鳴り、パタパタと人が慌てたようにこちらへ向かってくる。
「うちへお客さんなんて珍しいわね………いらっしゃいませ……」
門番をしていた獣は、慌てて、主人であろう女性を支えるように傍へ近寄った。
店の主人である女性は、見るからに顔色が悪い。身体は痩けていて、呼吸も浅く、今にでも倒れてしまいそうだ。
「ペリッツありがとう……久しぶりのお客さんだから、大丈夫よ」
獣の頭を優しく撫でた。
そして、グライトスと星の顔をみて
「こんな状態で申し訳ないです、うちに欲しいものがあればいいのですけど……」
“こんな状態”というのは、女性の体調もそうだが、店の中の状態も指していた。
店の中はある程度キレイなものの、売り物である商品が見るからに少ない。それでもこの店に入ってきたのは、グライトス自身が路面側のショーウィンドウに飾られた帽子が気に入ったからだった。
外から見て、繊細なその手仕事は無知なグライトスにもわかるほどだった。

「お姉さん、ぼくは帽子が欲し……」

グライトスが言う途中で、バタバタと足早にかけよる音がし、星と同じ年齢くらいの男性が現れた。

「ねぇさん!!寝てなきゃだめじゃないか!」

どうやら、この店は姉弟で営んでいるようだ、よく見ると顔がそっくりである。強いて言えば、髪の色が違うくらいだ。ねぇさんと呼ばれた女性は茶髪で、弟であろう男性は黒髪だった。2人とも髪の長さは腰より長く、後ろで束ねている。

「ピッツ、久しぶりのお客さんだもの……」

お姉さんを心配そうにみていた男性はギっと顔色を変えて、お客であるグライトスと星の方を睨んだ。

「なんのようだ?ウチは今こんな状態なんだが」

他所のところにでも行ってくれと言わんばかりの勢いだ。

「ぼ、、ぼくは帽子が欲しくて……ほら、そこにあるやつです」

グライトスは、飾られていた帽子を指さした。シンプルで使いやすそうな、ありふれた形の帽子だ。だが、そこに一切の妥協はない仕事ぶりが伺える。

「お情けか?さっさと出ていってくれよ!」

男性はグライトスの肩を突然、押した。
突然の事で驚いたグライトスは、どすんと尻もちを着いた。その時、隠すように身にまとっていたコートから目立つ『コア』が見えてしまった。

「おい!お客に向かってなにするんだ!?」
「ピッツ!?何してるの!?」

2人を傍観していた、星とお姉さんは声を荒らげた。
お姉さんはグライトスに駆け寄り、うちの弟がごめんねと言いつつ、手を差し伸べた。

「……その『コア』……おまえ、アンドロイドなんて連れて歩いてるのか!?姿を隠すために帽子が欲しいんだろ!?そんなヤツにうちの商品は買わせないっ!!」

男性はたたみかけるように、言い放つ。とても一方的で、グライトスと星の話など聞く耳もないようだ。そして、アンドロイドとしてのグライトスに異常な程、嫌悪感を抱いているのがわかる。
お姉さんの手を取り、グライトスが立ち上がろうとしたとろだった。

「……ゴホッ、ゴホッ」

お姉さんが咳き込み、口を手でおおった。
その白い指の間からは血のようなものが見えた。

「だ……大丈夫!?」

グライトスは下から、お姉さんを支えた。
咳は酷くなるばかりだ。

「ねぇさん!?………………もう、勘弁してくれ……」

グライトスから奪うように、男性はお姉さんを庇った。星は、暗い表情でグライトスに行くぞと小さく言うと、ドアに手をかけ、店から出て行った。
グライトスは姉弟を心配しつつも、星を追った。
帽子は手にできないままだ。

『ぼくはまた、なにもできないのかな……お姉さんの身体とても冷たかった……』

グライトスは帽子が手に入らなかったことよりも、姉弟に何かできないのか、そればかり考えていた。
星は怒っているのか、暗い表情でずっと黙っている。黙々と宿へ帰っているようだ。
宿へ着き、部屋に入ろうとすると

「グライトス、あの姉弟が気になるなら、もう近づいたりしないことだ。俺たちはこの街を明日出るからな」

「…………星さん、分かってるよ。ぼくは、ぼくには、なにもできないから」

『お姉さんの身体の中になにか“良くないもの”があるような気がしたけど、ぼくにはそれはどうにもできない。星さんはできるかもしれないけど、なんだか恐い顔してるし……ジンやセレストならお姉さんを助けられたのかな』

グライトスは、自分の胸にある『コア』に手を当てていた。

星は何か思い詰めたように、無言で、ベッドにいる。
『あの、女性、、母さんにそっくりで嫌な事を思い出してしまった。……俺に関わってあれ以上の不幸は合わせたくない。俺にあの人を助けれる力はない……。あの身体に秘めたものは“触ってはいけないもの”だからだ』


小さな服屋の奥、作業部屋。
そこは本来、主人が作業する為の道具が揃っている。数年作業はされておらず、埃が道具や材料に着いている。

「ピッツ、、本当にやるの?!」
「やらないと……!これで、ねえさんを助けることができるかもしれないんだ」
「でも、これは悪いことだわ、ピリッツが知ったら悲しむわ!」
「それでも、、俺がどうなっても……ねえさんが、ねえさんの病気が治ってくれたら……俺がこんなだから、俺のせいでねえさんは病気になったんだから……俺がやるんだ」
「ピッツ……」


日が沈み始め、宿に戻ってきて、いつの間にか寝ていた星が起き上がった。同室のグライトスに外で飯でも食うかと言う顔は服屋を出た暗い顔からいつもの星に戻っていた。2人で外出の用意をし、宿を出て、ご飯屋に歩みを進める。
「グライトス、何食いたいか?」
「うーーん、この街の名物とか食べてみたいかも」
「名物?おまえ贅沢だな」
「名物って贅沢なの!?」
「ほんと世間知らずだな、この【ミッセン】がどんな都市か分かってないな」
「ぼく、本で読んでみただけだから……」
「アンドロイドがおぼっちゃまだと困るな」
笑いながら、たわいもない話をして歩いている。
夕飯の時間だからなのか、割と出歩いている人は多い。夕暮れ時、人が多いおかげで、グライトスの姿が目立つことはないようだ。
2人の横を、フードを深く被った人物が過ぎった時だった。
グライトスが倒れこんだところをフードの人物が抱きかかえた。
星がその一瞬に反応したところで、星の顔を目掛けなにか小さな獣が飛び込んできた。
視界が邪魔され、見えなくなる。
「なんだ!?……コイツ!?」
目の前の小さな獣を手で払う前に、獣は軽々とジャンプしその手を避けた。
グライトスをフードの人物が連れ去ろうとしている。
『…………なんだ!?』
「おい!!!待て……!!!ッッ」
星は風を扱って束縛する術を咄嗟に唱えたのだが、フードの人物の前で弾かれた。
フードがめくれて、顔が見える。その人物は昼間訪れた服屋の弟だ。
男性は術を唱えると、姿が見えなくなった。
星が手を伸ばした先から、グライトス共々、消えてしまった。小さな獣も居なくなっていた。

「クソっっやられた!!!」
(俺の術を弾いて、俺の前から消えれるヤツがいるなんて!!!)

「アイツ、ぜってぇ許さねぇ……」
(何としても、グライトスを探し出す……!ヤツの目的はなんだ!?)
星は人ごみから離れ、路地に入る。
紫の光と共に龍精族の三姉妹を呼んだ。事情を説明し、グライトスの気配や匂いをたどって欲しいと3人に頼み、星自身はあの男性がいた小さな服屋を目指した。

『この都市に来た時、スコープ内でアンドロイドのコアを狙う泥棒が未だに捕まっていないと言っていた。最近は活発じゃないと言っていたから油断した。アイツがその泥棒だったんだ……俺としたことがっ!』
星は走りながら、自分の迂闊さを悔いていた。


グライトスの頬に冷ややかな風と乾いた足音が届く。朦朧としていた、中で「……コイツ、アンドロイドか?感触が全然違った……」「新型のアンドロイドの中には、身体が人間みたいなのがいるって噂で聞いたわ」「これが新型?新型は『コア』が内蔵されてて見た目じゃわからないって聞いたぞ……」
話し声がして、グライトスは目を開けた。
そこには、先ほどの服屋で出会った黒髪の男性とオレンジ色の毛の小さな一角の獣が会話をしている。
部屋の中は薄暗く、どこなのか検討もつかない。
冷たくて重いと感じると腕に、鎖がつけられていた。その鎖の先は天井に着いている。

『ぼく、捕まっちゃったの……?あの人に?……なんで?アンドロイドだから?』

グライトスは家出したことを少し後悔した。ジンにひっそりと過ごすように言われたこと、家出をしてからなぜか、自分が周りから良くない印象を受けていること。『アンドロイドだろ!?』『アンドロイドだからだ!』
アンドロイドというだけで、怒る人がいること。
オレンジの髪の色が目立つこと。自分はただ『自分が何かを知りたい』だけなのに、それを許さない人がいること。魔術も戦闘もできないのに、他とは違う、アンドロイドだということ。
その事で、悲しんでいる人がいて、困らせてしまう人がいる。
本で学んでいた世界とはいい意味でも悪い意味でも全く違ったこと。
グライトスの頭の中は期待と恐怖でぐちゃぐちゃだった。
平然としていながらも、実は家を出たあの日から、泣きたい感情でいっぱいいっぱいだった。

「………ごっごめんなさい…………ぼく、何か、君たちに嫌な事しちゃった……のかなっっ……ぼくは何もできなくてっっ、君のお姉さんも助けれないし、1人で旅もできない……こんなぼくを……どうしようっていうの?」

泣きながら、出た言葉は、目の前にいた1人と1匹を驚かせた。


星が小さな服屋にたどり着いた時には、辺りはすでに夜になっていた。
荒々しく、服屋のドアを叩き
「開けてくれ!!!聞きたいことがあるんだ!!!」
店の中からは音1つなく、ただ虚しくドアを叩く音が響いていた。
「クソッ……ここがダメならどこが……」
頭を抱えて、項垂れていると足音がした。
目の前には、買い物帰りの服屋の女性と青い毛色の一角の獣がそこにいた。
「さっきのお客……何やってる?まだなにか用が?」
その声は少し低い、一角の獣は言葉を交わすことができる獣だったようだ。
「ペリッツそんな態度いけないわ……先ほどは弟が無礼を……!大変申し訳ありません。私はあの子の姉のピリッツ・アニアです。用があるのはきっとあの子の事でしょう?さ、中でお話を。」
「なんで、わかるんですか?」
「双子ですし、……それなりに弟がしようとしている事がわかるんです、ほら、急いで」
女性は弱々しくも、足早にドアを開けた。
「あなたと一緒にいた、あの子が危ない」


「アンドロイドが泣くなんて、そんな事あるの!?ピッツ間違えたんじゃない!?」
「そんな訳ないだろ!?ほら、ちゃんと『コア』があるだろ!?」

泣きじゃくっているグライトスの前で、黒髪の男性とオレンジの毛色の小さな一角の獣が言い争っている。

「ぐすっ……ぼ、ぼくは、アンドロイドだよ……なにも……できないけどっっ……ぐすっ」

「ほら、自分でアンドロイドだって言ってるじゃないか!」
「……なら!!その『コア』を私たち『コア』泥棒に寄越しなさい!!」

「お兄さんたち……『コア』を集めてるの……?」

まだ少し泣きながら、グライトスは逃げる素振りもない。その『コア』の価値は散々とジンから言い聞かせられていたからだ。アンドロイドの『コア』には制作した錬金術師の“魔力”が込められていて、その力で動く事ができるのだ。もちろんその動力である『コア』がなければ動かなくなり、アンドロイドとしての機能は全て停止してしまう。
『コア』を取り替えることもできるし、奪われてすり替えられることもある。『コア』自体も“魔力”なので狙われる。だから、気をつけろと。
『コア』を集めるということは“魔力”を集めていることになる。

「……『コア』を集めて、何をするの?」

「それは……っ」

聞かれた『コア』泥棒は拳をにぎり、震えていた。


星は、【ミッセン】のスラム街を走っていた。
先導するのは、ペリッツと呼ばれていた青い毛の一角獣だ。ペリッツには妹ビッツがおり、その居場所は、感覚でわかるらしい。
きっと、弟と一緒にいるから、と姉のピリッツに言われて一緒に走っている。
騙されていて、姉も“泥棒の仲間”かもしれないが、あんな病魔に犯された人が泥棒なんてするだろうか。
今は、先導してくれるこの獣を信じるしかない。
あの服屋を出る前、ピリッツはこう言っていた。

「あなたと一緒にいたあの子がアンドロイドなら、弟に『コア』を狙われているかもしれません。」

「うちの染料庫にアンドロイドの『コア』を隠しているのを見つけてしまったんです。あの子はきっと私のこの病魔を治そうと“魔力”を集めているんじゃないかって……見つけてしまった時から、ずっと後悔していました。自分の病魔が治ることと、弟が犯罪者になってしまうこと……どうしたらいいかわらなくて、見ないフリ、知らないフリをしていました……」

「でも、今回は、止めさせなきゃって。」

「あなたと一緒に居た子は、とてもいい子だったから……あの子はきっと自分の『コア』を差し出してしまうわ……!だから急いで!!」

「星と言ったか、ピリッツを信用してくれ」
青い毛の一角獣ペリッツは走りながら、星に話しかけた。
「私達、兄妹は怪我を負ったところを助けてもらった2人に恩義を感じてあの2人を守っている。店の入口にいたのも、変なやつは入れさせないためだ。術で結界も張っているのに、君達2人はあの店に入れた。ピリッツも弟のピッツも君達が“悪い物”ではないと知っている。…ピリッツの作った物を欲しがる者は尚更だ。だから私はあなたをしっかり、連れていく。……着いたぞ、ここだ」

そこは、冷ややかな空気を感じる空き家だった。
中から、ドサッと人が倒れるような音がした。
星は今にも壊れそうな扉に勢い良くぶつかり、こじ開けた。
そこには、黒髪の男性がグライトスを抱きかかえ、泣いている。
隣りにはオレンジ色の毛の小さな一角獣が、泣きながら、『コア』を咥えていた。

グライトスは眠ったように、目を閉じ動かない。

「あなたは…こいつの……」

星が扉を壊した音で、黒髪の男性は星を認識した。

「遅かったか……」

青い毛の一角獣が淡々と言葉にした。

「このアンドロイド、なにもしないから、腕の鎖を取ってって言って。俺がどうして『コア』を集めてるのか聞いてくれて……じゃあって、、」

「自分から『コア』を取って……」

ピッツの目にはニコリと笑いながら、『コア』を外すグライトスの顔が焼き付いている。

「…『コア』があれば、お姉さんを治せるなら、、喜んで………って」

「……おまえはそれをしようとしてたんだろ」

星は冷たく、ピッツに言い放つ。

「……そうだよ、最後の1個がなかなか見つからなくて。店に来た時、コイツから奪おうって思って。戦って壊してしまえば、取りやすいって思ったんだ。……でもコイツ全然、俺に対して敵意もなくて、、敵意のないやつと戦うなんて、できなくて。自分がどんどん惨めになって……まさか自分から『コア』を外すとは思わなくて…………」

「おまえは、『コア』泥棒なんかじゃない。スクラップになったアンドロイドから正式に『コア』を買い取っていた。スコープはなんでも知っている。……オレはスコープのボス、星黒璃だ。」

この情報は、星が龍精族の三姉妹から得た情報だった。

「……そのアンドロイド、グライトス・ジンは最高機密の観察対象だった。」

「はは……お兄さんもコイツのこと狙ってたのか?……てっきり友だちなんだと思ってたよ」

「……観察対象だっただけだ、、、そして、今その観察対象が自ら停止した……そう報告すれば……おまえはなんの罪もない…」

「……なんでじゃあ、泣いてんだよ……」

星は静かに涙を流している。泣いたのは何年ぶりだろう。この仕事の世界に入って、泣くことなんて忘れていた。仕事でこのアンドロイドの観察をするために同行して、数日過ごしただけなのに、なぜこんなに感情が溢れてくるんだろうか。

「…………そんなの、俺だってわからない」

「ただ、コイツは、、なぜか失いたくないと思ってしまったんだ」

アンドロイドなのに、笑い、泣き、ドジで泣き虫。
無知で手のかかる子どものようだった。
何も出来ないといいながら、人や獣を助けたがる。

「なんで、自分を大切にしないんだよ……俺はそーゆーやつが一番嫌いだ……」

近づいて、しゃがみこみ、星はグライトスの顔を覗き込んだ。その顔は目を閉じているが、どこか、嬉しそうな、穏やかそうな顔をしている。

「いい顔してんじゃねぇよっ……」

自分が何者か知りたいからと家出したと言っていた。こんな所で、人の為に自分の命でもある『コア』を簡単に投げ出すなんて。アンドロイドがそんな事をするはずなんてないのに。なのに、コイツはそれをした。おまえは一体、なんなんだ。
声をかけても、グライトスが返事をすることは無い。

冷たい空気が空き家包む中、外から足音が聞こえた。

「……グライトス!!見つけたぞ!!!」
「ジン様、待って下さい、軽はずみに入っては…!」

空き家の中へ入ってきたのは、コートを着た男の子と、その後を追ってきたのは女性だった。


To be continued.

▼第4話▼
coming soon

▼第2話▼



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2023,04,27 All rights reserved by  Ulla.©2023Ulla

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