【自由律俳句】天気のバリエーションは少ないと思う
サビの入りでカーナビが喋った
瞬間を共にしたという事実を引き延ばす
水色の習慣は僕にも馴染み始める
言わないでおいた1語が生焼けで気持ち悪い
よく噛んで食べれば良かった
天気のバリエーションは少ないと思う
言い間違いに笑い、話は溶けた
迎車や回送が解らない不憫な後ろ姿
湯船から溢れたお湯の行方を見てる
ワインのぬるさはかなり飲酒
Airbnbでしか通らない道々をゆく
「千鳥よりもっと有名なおじさんのペアでした」
タバコ吸えますはプロモーションなのか
退勤の17時が真っ暗ではなくなった
耳の穴に手を突っ込むなどをやめてくれよ
誰かが大事にしている法則に迷いながら則る
明日の予定を気にされたいという気持ち
一万歩に少し届かなかった今日の足取り
液晶に送り主の筆跡や筆圧は映らない
汁物が溢れないように袋の底に手を添えている
ごねて泣き喚く姉に興味津々のご様子のご子息
かばんの底のお土産を迷わず食う空腹ゆえ
変な時間の朝メシが飼い慣らす腹の虫
あーーー大きめの独り言でしたか……
あーーー大きめの独り言でしたか……
白がまだらに混じった長髪がシルクハットの両サイドから滝のように流れ出ている。SカフェO駅店の店内入って左奥のテーブル席に腰掛けたその男性の存在は、以前からこの店の前を通るたびにガラス越しで捉えていた。「あの方はアートの世界では知らない人はいません…」と言われれば、なるほどアーティスティック精神ゆえの白髪ロン毛か!と最初のうちは怪々奇奇、疑いの余地はあれども、某アーティストの写真を脳内ホワイトボードのど真ん中にマグネットでぺたっとくっつけられればas soon as possible、納得してしまう出立ち。一方で、警察から「すみません、最近この辺りでこんな方を見かけませんでしたか?」と聞かれながら手帳に挟まるサイズの写真(手汗や傷でくたびれている)を見せられれば、「(うーわっ知ってる...!知ってもうてる...心当たりあっりあり!なんか事件っスカ?何かしはったんどっスカ?...)知ってゃす!」と言ってしまいそうな出立ちの、ミステリアスな方がいらっしゃいます。今日、そのカフェへ行き、窓際の席を何気なく取ったらば、トイレからお戻りになったその方が私の背中の90cmほど後ろの席に、いらっしゃるではありませんか。TOEICの問題集を解く最中や、今日買ってきた九段理江さんの『Schoolgirl』を読んでいる最中はまるでそこに脳みそがあるのでは無いかというほど背中が熱く活発に働いていました。さて、TOEICの問題集の1つのセクションで初めて満点を叩き出すなどして僕が小有頂天に登っている最中も、彼は延々と何かを話しておられました。僕が装着している超大手メーカーSONYさんのノイズキャンセリングヘッドホン(メーカー希望小売価格48,400円)は、"ノイズ"を"キャンセル"するものなので、彼の声はほんのわずかにしか聞こえないのですが、中国地方の訛りを持っているらしいことがぼんやりわかります。織姫と彦星を結ぶ天の川のイメージ画像の如き波打った頭髪が彼の耳の上をまたがっていますから、そこにワイヤレスイヤホンが隠れているのか否か、に僕の注目は吸い寄せられていきます。そこにイヤホンがあれば誰かと通話をしている、ということになり、カフェで大きな声で話すことはどうフェアに見てもアウトなのですが、この街では日常茶飯なので看過できます。しかしそこにイヤホンがない、となれば、「!」を彼もしくは僕の頭上に表示しなければなりません。
さて、結末は書いたとおり、独り言でした。その時の店内の座席占有率は70%程度でした。日曜日の夕方にも関わらずノートPCで作業をする方、資格のために勉強されている方、日本語を勉強されている海外の方がいる中で一際大きな声で話す(笑い声にはさすがの大手メーカーSONYさんも完敗)ギャルグループがおりました。彼女たちがそれまで何を話していたかはノイズだったので聞こえなかったのですが、突如最近各々が行った旅行の話になりました。1人のギャルが北海道についての話をし始めた時、長髪のアーティスト(or WANTED?)は「だからそれを言うとるんじゃ…」を(誰かに)連呼していました。北海道話にカウンタートークを話し始めたもう1人のギャルが「沖縄」というワードを出した瞬間、彼は「沖縄が」と即座に反応し、語り始めたのです。この反応速度は、僕にも分かります、マンキンの独り言です。
P.S.寮に帰って友人から「今寮の前で暴れた人がいて、警察が来て逮捕されてた」という話を聞きました。そういう街に住んでいます。
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