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【自由律俳句】黄ばんだ紫陽花が夏の始まりを告げる

こんなに小さかったかと思いながら食べる
燕の巣 見上げる親子と見下げる親子
さも屋根があるよみたいな場所でずぶ濡れ
お守りがドアの開閉に巻き込まれそう

糖質からくる怠さだ
ほん怖みたいと言った途端怖い
マンションのチラシが渡されなかった
街を見下ろせど何も無いに等しい

音楽に寂しい思いをさせたくない
エレベーター閉まるは目の前、あまりに目の前
夏の自転車は少し哀しくて疾い
壁は笑う声をたくさん聞いている

黄ばんだ紫陽花が夏の始まりを告げる
わたくしの日々は未完成かつミカン生活
あの猫は今屋根の下にいるだろうか
腕組みした黄帽が青を待つ

頭皮の白と割れた看板にはまだ初夏が
濡れた衣服の白 首元にはsince 1931
稲穂を持ったドレス婦人が五人
お腹の中も夏を感じているか

しいたけ二箱が運ばれてく ここは表参道
トマトパスタが冷房の風で固くなっていく
動画の中では大きなバレッタに束ねられていた
トンボが地上約100mで舞う

トロピカルポロシャツおじさんが左にいた
洗濯バサミがジャラジャラしたやつと呼ぶ
もっとも自分ナイズドされたこの脳を愛す
ミニサラダを勧められたから付けた

同じ顔で夏を厭う夫婦だ
心情的には割り勘だ
待っていたのとは違うのが届いた
極彩色のワンピースが姿勢良く着られている

名前の一部しか覚えていないことがままある
首元には美容室の名残
甘噛みする度に笑いが起こるラジオだ
とても綺麗な漢方屋がある

久しぶりに聞いた愚痴の音が心地よい
このために出かけたのに何も入ってこない
冷房が絶好調ではない
何度も聞いた曲、読んだ本 知らない通行人

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