今日会いに行きたい!気になる土偶#098御所野縄文博物館
人々の「祈り」を知ること…
それはその時代の暮らしを知る手がかりにもなるようです。
今日の土偶はちょっと風変わりな場所から出土しました。
通常土偶は住居跡や墓、祭祀場と思われる場所から出土しますが、この土偶が生まれた場所は「粘土採掘抗」。土器や土偶などを作る粘土を採掘したと思われる場所です。
ここは世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一つである御所野遺跡。
約800年に渡り繁栄し、多くの竪穴住居や墓、祭祀場を持つこの地域の拠点的なムラでした。
ムラの崖の緩やかな斜面地に、深さ1.2m程度の土を削り、更に横に掘り広げていった穴の跡が見つかりました。
中は様々な粘土の塊や、壁に貼りつく粘土。
この状況から、粘土を採掘した「粘土採掘抗」の跡であると考えられています。
ムラの中で調達した粘土で、土器や土製品などを作っていたことが分かります。
そしてこの粘土は土器や土製品をつくるだけでなく、竪穴建物や墓など、ムラの何十カ所もの場所から見つかりました。
それらは土器に入れるなどして、土器づくりのために保管していたと思われるものもありますが、必ずしも貯蔵していたとは言えない粘土も多くありました。
あちらこちらに粘土が置かれていた、とは…どういうことでしょうか。
粘土の産地ならではの事情や意味があったのかもしれません。
さて「今日の土偶」ですが、この粘土採掘抗からたった1体だけが出土しました。
採掘の無事を祈って、あるいは粘土が枯渇しないようにと、祈るための道具であったのでしょうか。
手足・目鼻口はなく、いくつもの孔で全身を表現するにとどまっていますが、それでも人形の体をなして、しっかり自立しています。
まるで「粘土採掘抗」の門番のようですね。
御所野遺跡からは全部で15体の土偶が見つかっていますが、その大半の土偶はムラの広場やその周辺から出土していて、祭祀などの際に使われた土偶であったと考えられるようです。
多くの土偶に込められた「祈り」。
たった一体に込められた「祈り」。
縄文世界の「祈り」も1つではなかったようです。
*参考資料
縄文ムラの原風景 御所野縄文博物館
©2024 のんてり
<写真&文章は著作権によって守られています>
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