三つの春、見つけました
春は私たちにとって特別な季節です。
桜の花、幾度もの出会いや別れ、新しい挑戦などの積み重ねが、そう感じさせるのかもしれませんね。
先日、福島県郡山市からほど近い田村郡三春町へ初めて訪れました。
「三つの春」…聞いただけで心が華やぐような、とても素敵な地名です。
なだらかな山間の町は、桜の名所としても知られています。
そして、実際その素敵な地名に相応しい町が私を迎えてくれました。
町中へ入ってすぐに頭に浮かんだのが〝日本の原風景〟がここにある!ということ。
どこか懐かしさを感じる、初めて訪れた感じがしないような、そんな錯覚を覚える場所、
あるいは郷土の絵画展で見たような、そんな感覚を覚えました。
推定樹齢は1,000年以上!
訪れた日はあいにくの雨まじりの日、
桜の花盛りは少し前に終わっていましたが、
それでも国の天然記念物三春滝桜は、残された花を惜しげもなく見せてくれました。
淡い桜色がより淡く、わき役の菜の花とのコントラストがまるで日本画のようです。
散り際も美しく…日本ならではの素敵な風景の一つですね。
三春駒の生まれた町です
郷土玩具の三春駒の町とも知られる三春町には、日本各地で少なくなってきている民芸文化が受け継がれています。
超大型〝三春駒〟が出迎えてくれたのはデコ屋敷。
ここは、三春駒、三春張子などの三春町の民芸品発祥地で、現在も数件の民芸の担い手たちが伝統を伝え、さらに新しい挑戦をされています。
ところで〝デコ〟って?何でしょうか。
デコとは木彫りの人形のことで、木偶or木偶と読まれていたそうで、〝デコ屋敷〟は人形屋敷という意味になるそうです。
1万年以上前から人が住み着いていました
豊かな自然と、穏やかな空気が流れる三春町ですが、その歴史は古く、三春滝桜が生まれる1万年以上も前の、縄文時代の早い時期から人が住みついていました。
その痕跡は、福島県の中心を流れる阿武隈川の右支川である大滝根川を中心に24もの遺跡があることに見られます。
縄文早期のまだ小さな集落の一つであった頃の竪穴住居や土器をはじめ、時代が進むにつれて複数の集落から拡大していったムラには、敷石住居や墓、土偶など数多くの遺物が残されていました。
これらの遺跡は、この町の大滝根川にダムが建設されることに伴って、1983年に始められた13年にも及ぶ調査で明らかになりました。
そして土偶が目覚めた!
このインパクトのある土偶は、大きさも用途も様々な土器と一緒に、仰向けの状態で発見されました。何らかの儀式のために、これらを一緒に埋めたと考えられています。
高さ21㎝、刺突文(突き刺してできる穴)のある身体は、もともとは漆で赤く塗られていて、今は失われていますが下半身もあったと考えられています。
写実的な無表情の顔は、死者の顔、眠っている顔とも言われています。頭部の盛り上がりは髪の毛の表現と思われ、結髪土偶という髪を結った土偶によく似ています。
特記すべきことは、この髪に施されていた変形工字文と同じものが、一緒に出土した土器にも施されていたことです。
お揃いの文様=土偶と土器がセットであるということは、どのような意味があるのでしょうか。
漆で赤く染められているコト
土器と土偶に描かれている文様が同じモノ
このコトだけでも、大切にされた尊いものであったと考えられますね。
祈りの道具とされる土偶ですが、この土偶も子孫繁栄や豊穣といった祈りを捧げる時に使われたシンボルであったのかもしれません。
その後の1998年(平成10年)に三春ダムが完成しています。
ダム建設に伴う調査で見つかった土偶もあれば、発見されずにダムの底に沈んでしまった土偶もいるかもしれません。
それでも、この土偶の心を推し量るとすれば、ダムが作られることによって人が住み続けることを喜んでくれているような、そんな気がします。
人が心地良いのです
出会った人は皆、決してお喋りではなく、むしろ奥ゆかしさを感じる人たちでした。
短い旅ゆえ、そんなに多くの人とのやり取りがあったわけではありませんが、ちょっとした言葉の端々にもどこか優しさがそれとなく伝わってきます。
ここでは自然体でいられる…そんな安心感を感じさせてくれました。
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じんわり、心地良い町
町を包みこむ桜の花、穏やかで美しい里山、時代を超えて受け継げられる民芸、縄文人の心を表しているかの様な土偶、どこかやさしさを感じる人々、
三春町には私が感じる春が、三つどころかいくつもあるように感じました。
それはどれも、あまり主張せずに、心にそっと寄り添ってくれる暖かいものでした。
ほんのり幸せ気分で「また来ます!」と約束をして、三春町を後にしました。
そして、世界中の多くの困難な状況にある人にも、早くいくつもの〝春〟が訪れることを改めて願いました。
最後まで読んでいただき有難うございました☆彡
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