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5000年前の春を想いつつ縄文散歩「勝坂遺跡」神奈川県相模原市

遺跡のシーズンがやってきました!
桜の開花と共に私の縄文遺跡巡りが本格的に始動します。

週末に訪れたのは神奈川県の『勝坂遺跡』。
縄文時代が最も活気づいた今から約5000年前の大きな集落の跡です。
当時は今より気温が2~3℃高かったと推測されています。
少し暖かすぎるこの日に当時を重ね、春の陽ざしを浴びながらゆっくりと散策を楽しみました。


勝坂遺跡とは

『勝坂遺跡』は神奈川県西部の起伏の富んだ台地に作られた縄文遺跡です。
現在は史跡公園となり、広々とした広場には竪穴住居が復元され、管理棟には出土した土器や石斧などが展示されています。

今から約5000年前 縄文時代中期

遺跡公園は谷に沿った細長い台地にあります。
縄文時代の典型的な集落であるように、右手は緩やかな崖になり、近くには川が流れます。

今から約100年前の大正15年(1926)に発見され、創造性豊かな文様の土器が出土しことで注目を浴びました。後に「勝坂式土器」として中部・関東地方の縄文時代中期の目安とされました。

ゴツゴツした厚手の土器。
見ているだけでずっしりとした重みが感じられます。

「無骨」という言葉がぴったりな土器

渦巻、ヘビのような波打つ文様…が土器に施されました。

土器の破片

竪穴住居

ここには2棟の竪穴住居が再現されています。
縄文時代の家と言えば「竪穴住居」が定番の認識ですが、実はその実態はあまりよく分かっていません。
地面に残されていた「柱の穴」や、稀に腐らずに残っていた「一部の柱」などから推測されているものなのです。

屋根は「茅葺かやぶき」、または「土葺つちぶき」であったと考えられています。

左:「土葺つちぶき」、右:「茅葺かやぶき

右の「茅葺かやぶき」の竪穴住居は入ることができます。
中に入ると、土を掘り込んだ「半地下室」のような空間になっています。地下は温度が比較的安定しているので、暑さや寒さを凌ぐことができたと考えられています。

扉が無いにもかかわらず、
住居内はとても暗く、ヒンヤリしています。

「竪穴住居」の耐久年数は10数年であったと考えられています。
廃墟となった住居は朽ちて、やがて土に埋まっていきます。

その姿がここにあるような大きな窪みです。
人が住む「竪穴住居」と、使われなくなった住居跡の窪みが隣り合わせにある…当時もこのような風景があったと考えられています。

使わなくなった住居跡の窪地は「ゴミ捨て場」として利用されていました。

ドーナツ状の廃絶住居(窪み)

発見の小道

ここでの縄文人の足跡は一か所に留まらず、街の中に点在しています。
「発見の小道」という遺跡散策マップをたよりに歩いていくと、緩やかな傾斜の広い原っぱが見えてきました。ここにも人々が住んでいたようです。

「勝坂遺跡」では80軒の竪穴住居が発見されていることから、当時の大集落であったと考えられています。
周辺には小さな集落が点在し、祭りなどがある時に広場に集まり、絆を深めていたと考えられます。

「勝坂式土器」の創造的な文様は、こうした人々の出自や伝えていきたい物語が表されているとも言われています。

5000年前も黄色の絨毯が見られたのでしょうか?

そう広くない一帯は起伏に富んでいます。
狛犬が出迎えてくれた先は急な階段。登りきると「岩楯尾いわだてお神社」があります。
ひんやりとした荘厳な空気に、縄文時代からの神の存在が感じられるようです。

創建は不明。再建は1635年。

神社を背に街中へ進むと、ブルーの瓦屋根と白いなまこ壁のモダンで美しい「旧中村家住宅」が見えてきます。
幕末期の擬洋風建築で当時は3階建で、10年の歳月をかけて造られたとされています。

「勝坂式土器」が発見された場所は「中村家」の畑でした。こうした地主の協力があってこそ、発掘調査がなされ遺跡として残されているのですね。

左:約19mもある長屋門から見た「旧中村家住宅」

縄文の春を思い浮べる

春を心待ちにするのは、きっと縄文人も同じ。
竪穴住居近くのクリの木の元に、虫食いのクリの実が1つだけ落ちていました。食料の乏しい寒い時期は、秋に収穫したこうした木の実などの保存食で空腹を凌いでいたと思われます。

人工物のない時代には、草花の色は今よりもずっと鮮やかに目に映っていたことでしょう。そして何よりも動植物が活発に活動し始めることで、狩りや採集といった「生業」に忙しく、生活が活気づいたことでしょう。

不思議な文様の厚手の土器は、ここで生きてきた人の漲るエネルギーが表されているように思えてきます。

春はいつの時代にも、人々に心地良さと元気を与えてくれるようですね。


*参考資料 勝坂遺跡リーフレット

最後までお読みいただき有難うございました。

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