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今日会いに行きたい!気になる土偶#077東京国立博物館

肩にあるのは渦巻文様のケープ?
顔は少し広がり気味の5角形のホームベース型。
中央に寄った目鼻口に、左右の大きな穴は耳?
腰にはケープとお揃いのスカート?
その下からは極端に短い脚が覗いている。

この見たことのない様相の土偶は、
北海道室蘭市の縄文時代晩期の遺跡から見つかりました。

高さ19.2 ㎝、縄文時代晩期
北海道室蘭市 輪西遺跡 東京国立博物館

実は何を隠そう、
遮光器土偶の仲間なんです。

遮光器土偶と言えば、コテコテした装飾に大きな目が特徴的ですが、その要素はいったい何処へ行ってしまったのでしょうか。

日本一有名と言われる遮光器土偶
青森県つがる市 高さ34.2㎝ 
縄文時代晩期 東京国立博物館

東北地方で盛んに作られていた「遮光器土偶」が北海道に伝わり、おおよその体形はマネされたものの、頭部や体に描かれた文様はかなり変容したと推測されるものです。

本来の遮光器土偶には無い小さな穴が、両腕や両足の下、股間部にあるなど、遮光器土偶のものづくりに忠実に従ったものではなかったのです。

博物館に並んだ遮光器土偶の血を引く者たちと比べても、その違いは一目瞭然ですね。

右手前から、今日の土偶、静岡県の土偶、宮城県の土偶
東京国立博物館

今日の土偶は大正時代に発見されたということですが、他にはどんな土偶がいたのでしょうか。

昨秋の北海道旅の際に、それを確かめたいと出土地の室蘭市の資料館を訪ねると、そこにはこの小さな胴部だけの土偶が1体あるのみ。

室蘭市民俗資料館 とんてん館

これは今日の土偶とは全く別物のようですね。
北海道には多くの縄文遺跡がありますが、完成形の土偶は少なく、土偶はあまり作られていなかったと推測されています。

遮光器土偶という同じ要素であっても、今日の土偶のように様相が大きく違うことは、土偶に表された形や文様に込められた「意味」を受け継ぐことなく、それぞれの地域にある精神文化を大切にしたことを表しているようです。

縄文時代が平和であったと言われることには、このように各地域の文化を尊重したことにもあったのかもしれませんね。

参考図書
土偶美術館 小川忠博/原田昌幸 平凡社

最後までお読みくださり有難うございました☆彡


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