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酔っ払って書き殴る、ウトの死(詩) 「朝ぼらけ」


朝ぼらけ。

鳴り止まないアラーム。

僕はやっとの思いで上体を起こし、目線を
カーテンにうつす。
隙間からは朝日が漏れ、煌々しい陰影の中、
僕は。いつかの海岸線を思い浮かべる。

かもめが飛び交い、そのまた上空には
一羽の鳶が飛んでいる。

海岸に打ち上げられた、子猫の死骸。
まだかまだかと鳶は待ち侘びている。

朝ぼらけ。

アラーム代わりのiPadを確認すると
アラームはまだ、機能していないようだった。

夢の中でアラームが鳴り響いていたのだ。
急に波の様に焦燥感に
駆り立てられノートに
寝ぼけて書く文字は平衡感覚を失った僕のよう。

窓を開けると眼前の首都高速車の勢いと共に
北風がびゅーうと隙間から音を立て侵入してくる。

現実を見ろと言わんばかりに
部屋中が冷気で蔓延する。

窓を閉め、すかさず僕はリモコンを手に取り、
暖房を起動する。

暑い。部屋が狭すぎて一瞬で常夏へと化す。

朝ぼらけ。

ゆらゆらと光る、たゆたう光。
朝ぼらけの海は何だか独特かつ尊い。
インディーズから追ってきたバンドが
メジャーデビューする時の寂しさにも似ている。

そんな眼差しできっと見つめている、窓越しの私。

先程、操作したはずのリモコンは行方不明。
冬間近の朝。常夏と化した自室。

平衡感覚を失った文字と私。

ノートを見返すと書き殴った筈の
文字は存在しなかった。


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