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SDG’sな理事会運営を考える(7)

 このシリーズでは、マンション管理組合の「理事会」について、その役割や運営方法を具体的に考えてきました。
 結論は・・・やっぱり「理事会」も、管理会社任せではSDG’sな(きちんとした)運営ができない・・・ってことになると思います。

(理事会の役割)
   ① 「総会」で決議された(管理委託契約等の)事業を執行すること
   ② 管理費等の収納状況(滞納状況)を確認すること
   ③ 滞納があった場合は督促する手立てを検討すること
   ④ 総会(=最高意思決定機関)を招集し事業等の実施を提案すること

     「SDG’sな理事会運営を考える(1)
     「SDG’sな理事会運営を考える(2)
     「SDG’sな理事会運営を考える(3)
     「SDG’sな理事会運営を考える(4)
     「SDG’sな理事会運営を考える(5)
     「SDG’sな理事会運営を考える(6)

 前回(第6回)は、「総会に議案を提案する」という4つ目の理事会の重要な仕事をテーマに・・・「年年度事業計画&予算」の検討の中から、理事会で「管理費(一般)会計」の予算(案)審議を行なう時に留意すべき点(=管理会社はスルーするけど、実は要チェック!なポイント)について、お話しました。

 今回は、その続き・・・大きな工事をするための「修繕積立金会計(特別会計)」に関する総会議案を理事会で審議する時の留意点についてお話したいと思います。

(おことわり)
 一般的に「修繕積立金会計」または「特別会計」と呼ぶマンション管理組合が多いので、これまで「修繕積立金会計(特別会計)」と表記していましたが、他の呼び方もあるし、文字数が増えてややこしい(笑)ので、今後は「修繕積立金会計」と表記します。

「修繕積立金会計」の基礎知識

 「修繕積立金会計」とは、将来の大きな工事に備えるために行っている「貯金」をマネージメントする会計です。

 なお、本シリーズ第6回のチャプター 「総会」への提案は「理事会」の仕事です。 では、標準管理規約に書かれた15項目の総会で決議しなければ実施できない15項目をまとめました。その中に・・・こんなのがあります。

6 大きな修繕工事の実施、そのための借金または修繕積立金の取崩し
8 修繕積立金の保管及び運用方法 (例:○○銀行に定期預金する等)

 「修繕積立金会計」は、組合員(=区分所有者)全員の財産なので、その取り扱いには、総会決議が必須なのです。
 「修繕積立金を(例え1円であっても)取り崩す」だけでなく「修繕積立金を右から左に移す」だけでも総会決議が必要!ということです。

 例えば、定期預金に預けていて満期になった修繕積立金を新たに定期預金に預け直すとか、ペイオフ(=銀行が倒産した場合、預金1000万円まで保証する制度)対策のために修繕積立金を1行預金から複数行(分散)預金に変更するとか・・・全て総会決議が必要で、理事会決議(または理事長の単独)ではできません。

 マンション管理組合で「あるある」なのが・・・利息で有利な「マンションすまい・る債」(=マンション管理組合を対象に「住宅金融支援機構」がサービス提供している積立て型10年債)の満期の通知が理事長に届き、理事会決議で実施する・・・ですが、これは完璧にNG!です。せめて・・・その後の総会(定期(通常)総会?」で追認決議を取って欲しいかも?

私の雑談におつきあいください(笑)

 雑談(その1)
 私は自動車の運転が好きです。自家用車は間もなく11万km走行になるので・・・点検修理のためディーラーに伺うたび・・・営業マンが寄って来て、自動車の買い替え(魅力的な提案!(笑))を勧めてきます。
 私としても買い替えたいけど、または買い替えるくらいのお金はあるけど・・・将来の資金を考えると「もう少し(少なくとも20万kmくらいまで)今の自動車に乗ろうかな?」という結論になっていしまいます。

 雑談(その2)
 「将来の資金」と書いて、この話題を思い出しました。本旨とは全く関係ない話題です。(笑)

 皆さんの記憶にも新しいことだと思いますが・・・「年金2000万円不足問題」ってありましたよね。
 2017年「家計調査報告」に基づき2019年に「市場ワーキング・グループ」(=金融庁の金融審議会)が出した報告書で一世を風靡?した問題です。
 でもなんと!2020年「家計調査報告」では、(コロナ渦で家計の支出が減少した等の理由により)何と!「生涯年金不足額:55万円」に減少してます。マスコミは(インパクトがないので、取り上げませんが・・・)「2000万円問題」は知らないうちに・・・今は「55万円問題」になってます。(笑)

修繕積立金の取り崩しについて

 修繕積立金の取り崩しは、雑談(その1)のように考えなければなりません。お金が貯まっているからといって、将来の(修繕)資金を考えて判断しなければならないと思います。

 東京のとあるマンションの事例で・・・管理会社のいうとおりに毎年小規模な(足場不要の)修繕工事を実施してきたが、いよいよ大規模な(足場が必要な)修繕工事をしなければならなくなった時に修繕積立金を確認したら5000万円以下しかなく、工事できなかった・・・という話をニュースで聞いたことがあります。(これは管理会社の責任ではなく、管理組合の責任)

 理事会が総会に提案したことは、十中八九・・・可決承認されます。
 ですから、理事会が修繕積立金の取り崩し(または工事の実施)の総会議案を審議する時は、東京のマンションのような事態にならないよう・・・留意しなければなりません。

じゃあ・・・どうする?

 修繕積立金を取り崩すパターンとしては、壊れた状態を元に戻す・直す「修繕工事」と、より良く改善する「改良工事」があると思います。
 ただし「修繕工事」といっても・・・ピンからキリまで工事仕様があります。改良工事的な要素もを含む「松」仕様もあれば、応急的な「梅」仕様もあると思います。今回は「松」仕様の「修繕工事」や「改良工事」を行なうために修繕積立金を取り崩すケースで考えたいと思います。

 修繕積立金の取り崩しを検討する時は・・・長期修繕計画(&長期修繕積立金計画)を必ず参照してください!・・・これに尽きると思います。

 なお、長期修繕計画(&長期修繕積立金計画)は、修繕積立金を組合員(=区分所有者)から集めるための根拠(エビデンス)として存在します。

 簡単に言えば・・・長期修繕計画を作成・見直した時点から30年後までの修繕工事を想定して総費用を計算し・・・その費用を賄うために修繕積立金を幾らにしたら良いのか?シュミュレーションする、ということです。決して計画どおりに工事を行なうためのものではありません。(・・・長期修繕計画については、いろいろ思うところがあるので・・・別の機会にテーマとして取り上げたいと思います)

 仮に修繕積立金が計画どおりに貯金できていれば「貯金に余裕があると判断して、改良工事をできるかも?」しれませんが・・・そうでなければ、貯金のセーブを優先に考えるべきだからです。

 理事会で、修繕積立金の取り崩しを審議する時は・・・長期修繕計画(&長期修繕積立金計画)を必ず手元に!!
 これは、ぜったいに忘れないでください。  (つづく)


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