SDG’sな理事会運営を考える(4)
このシリーズでは、マンション管理組合の「理事会」について、その役割や運営方法を具体的に考えてきました。
「理事会」も・・・やっぱり管理会社任せではSDG’sな(きちんとした)運営ができないことを具体的な事例を交えてお話してきました。
その中でお話した「理事会」の以下の役割については、以下のとおりでした。
(理事会の役割)
① 「総会」で決議された(管理委託契約等の)事業を執行すること
② 管理費等の収納状況(滞納状況)を確認すること
③ 滞納があった場合は督促する手立てを検討すること
「SDG’sな理事会運営を考える(1)」
「SDG’sな理事会運営を考える(2)」
「SDG’sな理事会運営を考える(3)」
今回は・・・「滞納者への督促って管理会社の仕事ちゃうの?」という観点から「管理会社」の滞納者への対応についてお話したいと思います。
滞納管理費の回収は管理会社の仕事では?
あなたのマンションの「マンション管理委託契約書」の中に書かれている(事務管理業務に関する)「管理仕様書」を見てください。
たぶん・・・「管理会社は滞納管理費を督促し回収します」とは書いてないと思います。
滞納状況は報告して、ある程度までは管理会社が担いますけど、ダメだった時は(無理なんで・・・)「相談には乗るけど、理事会(マンション管理組合)主体で対応してね!」・・・みたいな契約内容だと思います。
なんか物足りないなあ・・・滞納者への督促は管理会社が主体的にやってくれなきゃ、高い管理委託契約料を払ってる意味ないやん!と思われた方もおられると思います。
参考に・・・下記に国土交通省作成の「マンション標準管理委託契約書」の滞納督促に関する記述部分を抜粋します。
国土交通省も、管理会社がトコトン滞納督促を行わない方が良い(行えない)と考えていることが分かると思います。
「マンション標準管理委託契約書」抜粋:管理費等滞納督促に関する記述
第十条
乙(=管理会社)は、第三条第一号の業務のうち、出納業務を行う場合において、甲(=マンション管理組合)の組合員に対し別表第一1(2)②の督促(下記 ※1 参照)を行っても、なお当該組合員が支払わないときは、その責めを免れるものとし、その後の収納の請求は甲が行うものとする。
2 前項の場合において、甲が乙の協力を必要とするときは、甲及び乙は、その協力方法について協議するものとする。
※1 別表第一「事務管理業務」 1「基幹事務」 (2)「出納」 ②「 管理費等滞納者に対する督促」
一 毎月、甲(=マンション管理組合)の組合員の管理費等の滞納状況を、甲に報告する。
二 甲の組合員が管理費等を滞納したときは、支払期限後○月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う。
三 二の方法により督促しても甲の組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、乙はその業務を終了する。
何故?管理会社は、滞納督促をトコトン行えないのか?(行なうと明言できないのか?)には、理由があります。
何故ならば・・・「弁護士法」という法律に「非弁活動の禁止」が定められているからです。
「非弁活動」って?
「非弁活動」??聞きなれない言葉ですね。
以下はフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』からの引用です。
非弁活動(ひべんかつどう)とは、法律で許されている場合を除いて、弁護士法に基づいた弁護士の資格を持たずに報酬を得る目的で弁護士法72条の行為(弁護士業務)を反復継続の意思をもって行うこと。
非弁行為ともいう。
弁護士法 第72条
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
なお「非弁活動」を行なうと、「弁護士法」によって2年以下の懲役又は300万円以下の罰金という重い罰則が科せられることがあります。(弁護士法77条3号)
・・・このように(一定の条件をクリアした)有資格者以外は行えない仕事(業務)のことを「独占業務」と言います。
「独占業務」の事例
例えば、「医師免許がないと(原則)診療報酬をもらって、病人の診断や医療行為をしてはいけない」とか、「看護師資格がないと(糖尿病患者本人がインシュリン注射を打つ等の例外を除き)人に注射を打ってはいけない」とか・・・「独占業務」は、色々あると思います。
いずれにしても・・・(弁護士でない)管理会社が、報酬(=管理委託費)を受取り、反復継続して滞納管理費の回収を行なうことはNG!(法律違反)とされています。
それにしても・・・「支払期限後○月」って何なん?
「マンション管理標準委託契約」では、「支払期限後○月の間、その支払の督促を行う」と記されていました。
管理会社が反復継続して滞納督促を行なうことは「非弁行為」当たる可能性がある!これは、間違いありません。
けれど「どこから非弁行為になるの?」という線引きは、実にあいまいでグレーゾーンですね・・・
国土交通省としても具体的な数字を出せないのです。(なので「○月」)
「数字は各自で考えてね」ということだと思います。
実際に、管理会社によって契約書の記載内容(例:○月の設定等)も実務上の対応も異なっていると思います。
「受託マンションでの滞納管理費の割合が少ないこと」を売りにする管理会社では、滞納期間が(委託契約書に記載された)○月(例:4月?6月?)を超えても・・・理事会に弁護士への依頼を提案しながら、フロント担当者が督促を継続するパターンが多いように思います。
逆に・・・(滞納督促にはマンパワーが必要なので)仕事の効率化を優先して、契約書どおり(記載された)○月を超えたら積極的に督促をしない管理会社もあります。
だからといって・・・どちらが「望ましい」「望ましくない」とか「良い」「悪い」ということは、一切ありません。
それぞれメリット・デメリットがあるからです。
本日のまとめ
滞納は・・・無いに越したことは、ありません。
でも・・・これまで大きな滞納問題が発生いてなかったマンション管理組合でも、いつ滞納問題が発生するのか?それは分かりません。
大事なことは・・・「理事会」が滞納に関するチェックを必ずキチンと行うことです。(仮に滞納が0であっても、フロント担当者から「滞納ゼロでした」と報告を受ける!ということです)
また、滞納が発生したら、フロント担当者に滞納者への督促状況の進捗を重点的に確認する(=お尻を叩く)ことが重要です。
なお、管理会社による督促が不調に終わった場合は「弁護士による督促」という次のステップに進むことになりますが・・・
未収金は、次のステップに進まないうちに回収したいものです。(どのタイミングで次のステップに進むかは「理事会」の考え方次第ですが・・・)
また弁護士に依頼する場合でも、滞納金額が大きく膨らば膨らむほど手間もコスト(弁護士報酬)もかかりますから、早め早めの判断が求められると思います。(長い月数の滞納者を出してはなりません)
最後に・・・滞納管理費の督促について、「マンション標準管理規約」に記載された理事会の権限について記載します。
滞納管理費の督促に関し訴訟に踏み切る場合は、理事会決議でOK!書かれてあります。滞納管理費の確認・督促が、「理事会」の大きな役割の1つであることが、ここでも分かると思います。
(議決事項) 第54条
理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を決議する。
七 第60条第3項に定める未納の管理費等及び使用料の請求に関する訴訟その他法的措置の追行
(管理費等の徴収)第60条 第3項
理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。
次回は・・・滞納者への督促について、(たにやん的に)理事会で検討して欲しいと思うこと(ただし、実施する・しないは別問題)、そして理事会が行わなければならない、もう一つの大事な役割(=総会への提案・招集)について、お話ししたいと思います。 (つづく)
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