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SDG’sな理事会運営を考える(3)

 このシリーズでは、マンション管理組合の「理事会」について、その役割や運営方法を具体的に考えてきました。
 これまでの2回では、「理事会」も・・・やっぱり管理会社任せではSDG’sな(きちんとした)運営ができないことを具体的な事例を交えてお話してきました。
     「SDG’sな理事会運営を考える(1)
     「SDG’sな理事会運営を考える(2)
 なお「理事会」の以下の役割については、以下のとおりでした。
   ① 「総会」で決議された(管理委託契約等の)事業を執行すること
   ② 管理費等の収納状況を確認すること
   ③ 滞納があった場合は督促する手立てを検討すること

 実はもう一つ「理事会」には重要な役割があるのですが・・・それは、後日お話する予定です。

 ということで、今回は・・・「理事会」における個人情報の取り扱いと、管理会社の滞納者への対応についてお話したいと思います。

滞納者等の個人情報は公開すべき?

 管理会社が理事会で滞納報告する時・・・部屋番号や氏名は非公開にして(黒塗り資料で)報告されているケースが多いと思います。

 公開するしないは「理事会」で話し合って決めれば良いのですが・・・多くの「理事会」では、管理会社の薦めるまま「黒塗り資料」で報告されているケースが多いのでは?と思います。

 建前は「個人情報保護の観点から」ということになりますが、私は「理事会」内部だけなら公開しても良いかな?と思っています。

 例えば、複数月にまたがる滞納者や常連の滞納者の動向を把握するには、黒塗り資料では実感が得られにくいからです。(そもそも理事長に毎月提出されている「月次報告」には、氏名や部屋番号が記載されていますし・・・)

公開すべきでない?

 その反対に・・・
 管理費等の収納状況を確認するのに、個人情報は不要なのでは?
 そもそも個人情報の取り扱いには負担がかかるので、避けるべき。
 「非公開で良い」・・・という考え方もあると思います。

 理事役員もマンションという近代長屋の住民の一員ですから・・・理事役員も(原則)同じ住民です。
 理事役員といえども、他の住民の見えない一面(例:経済状態等)を目の当たりにするのは、あまり好ましくない・・・という思いが、その根底にあると思います。

「理事会」で決めることが大事!

 「公開」「非公開」どちらの考え方にも一理あります。良し悪しの問題ではないと思います。
 どちらの方針が良いのかは、各々の「理事会」で話し合って決めれば良いと思います。

 なお・・・ここで最も大事なのことは、「理事会で方針を話し合う(決める)」ということです。

 あなたの「理事会」では「これまでの慣例に従って」とか、「管理会社の薦めるまま」とか・・・何か当たり前のように?なし崩し的に?方針が決まってませんか?

 もしそうならば・・・次の「理事会」で、ぜひ!話し合ってみてください。

滞納者情報を「理事会」で公開する場合は・・・

 先述のとおり、私は「理事会」内部だけなら滞納者情報を「公開」しても良いかな?と思っています。
 ただし、「公開」する場合は、理事会出席者に守秘義務が生じますし、理事会資料の取り扱いにも注意が必要になります。

 ここからは・・・「個人情報を『理事会』内で公開する」を前提に・・・私が関わったことのある「理事会」に提案したことについてお話します。

 この「理事会」では、管理費の未収金が大きく膨らんでいました。
 百万単位の滞納者!もおられましたが、毎月きちんと管理費を納めるのではなく(不定期に納める)常連滞納者も数名おられました。

 それなのに毎月の「理事会」では、未収金対策の話題は一切なかったようでした。(理事役員がフロント担当者に未収金のことを聞いても「やってます」とか「なかなか連絡が取れてなくて」の返事だけ・・・みたいな)

私が提案した個人情報の取り扱いの方法

 この「理事会」では、未収金の回収に向けて本腰をあげて取り組むことになりました。そして以下2つのことが「理事会」で決議されました。
  1つ目は「百万単位の滞納者には弁護士名で督促し、法的措置も辞さないスタンスで臨む」、2つ目は「常連滞納者を把握するため、滞納者情報は「理事会」内部で公開する」です。

 2つ目の「個人情報公開」について、私は2つの選択肢を提供しました。
  ① 理事会議案書に滞納者報告を「月次報告」まま記載する。
  ② 理事会議案書とは別に「滞納者報告書」作成する。

 以上の2つです。
 ①は一般的な方法なので・・・どちらかというと「②という方法もありますよ」と提案した感じだったかな?

①と②のメリット・デメリットは?

 理事会の議案書は、理事会開催の前(標準管理規約では原則2週間前)に配布されます。理事役員が議案内容を予め読み込んでおくことで、理事会の議事進行がスムーズになるメリットがあると思います。
 しかしながら・・・①の場合は、理事役員が各々「取扱い注意」の個人情報記載書面を保管(管理)しなければならなくなるデメリットも生じます。

 ②ならば、①のメリットが無くなるリスクもありますが・・・理事会当日に配布・終了後に回収といった方法を取って、個人情報流出リスクを管理することも可能になります。

結局どうなった?

 この「理事会」では、②の方法を採用されました。
 「滞納者報告書」は理事会当日に配布され、終了後は理事役員用の「滞納者報告書ファイル」に綴じて(鍵のかかる大きな書庫に)保管されることになりました。

 この方法を採用されてから(管理費を支払ったり支払わなかったりしていた)常連滞納者を「理事会」で把握することができ、それに伴ってフロント担当者の動きが良くなり・・・未収金は次第に減少したようです。

 なお「滞納者報告書ファイル」の具体的な保管・管理方法は、理事役員自らが具体的に検討され・・・
 表紙には、各々の理事役員が記名押印した「個人情報取り扱いの誓約書」が糊付けされていました。
 また・・・理事役員が退任時(新旧理事役員引継ぎ時)には、「滞納者報告書ファイル」を皆の前でシュレッダーするというセレモニーを行っているようです。

今回のまとめ

 私は、やっぱり「理事会」内部だけなら滞納者情報を「公開」しても良いかな?と思うなあ・・・もちろんマンション管理組合によって事情や考え方は異なるので「黒塗り報告書」でも悪くはないとも思います。

 ただ大事なのは・・・(事例を紹介した「理事会」のように)その方針や具体的な自分たちで考えて具体的に検討するプロセスを行なうことです。
 それがマンション管理組合の主体的運営につながり、マンション管理組合の損を防ぐことになると思うからです。
 それがSDG’s達成の第一歩かも?と思います。

 さて次回は、管理会社の滞納者への対応(スタンス)について、私見をお話したいと思います。  (つづく)


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