マンションの電気を考える(19)

 「前回が、このシリーズの最終回!」と思いながらブログを書いていたのですが・・・某管理会社の「未来のマンション管理」というプレゼンの中で「既存の機械式駐車場に設置する充電設備の開発が進んでいる」という話が出ました。
 今回こそ最終回!(笑)ということで・・・今回はこの話をします。

過去の記事は、こちら
  
マンションの電気を考える(1)
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  マンションの電気を考える(11) 脱線回パート4
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既存機械式駐車場の充電設備

 機械式駐車場には、色々なタイプがあります。
 うちのマンションの機械式駐車場は駐車場パレットが上下に昇降する3段タイプですが・・・複雑に上下左右に動くタイプもあれば、メリーゴーランドのようにグルグル廻るタイプもあります。

 「BEV車」の充電設備は、どのタイプの既存機械式駐車場でも装備できるとは限らないようですが・・・(それは研究中とのこと)
 うちのマンションのような上下昇降タイプは原則的に装着可能とのことでした。(機械式駐車場のメーカーによって、装着の可否はあるみたいですが・・・これは嬉しいニュースです)

「BEV車」を駐車する問題点は?

 機械式駐車場に「BEV車」を駐車させる時に留意しなければならない点の1つに「車重」があります。「BEV車」の車重が機械式駐車場の最大積載車重を超えてしまうケースがあるからです。(最大積載車重が1500kgという機械式駐車場も珍しくない)

 ちなみに日本の「BEV車」代表車種の日産「LEAF(リーフ)」の車重を調べると・・・1490kg(バッテリー容量40kVAのタイプ )~1680kg(バッテリー容量62kVAのタイプ) でした。
 また長距離走行(=大容量バッテリーを積載)が謳い文句の「Tesla(テスラ)」では、エントリーモデルの「モデルS」ですら車重が1790~1860㎏もあり、その他の車種の車重は2000㎏を超えます。

 うちの機械式駐車場の最大積載車重は、(4列あり車幅1750㎜までの)中型車用パレット用が1650kg、(6列あり車幅1800㎜までの)大型車用パレットが2000㎏でした。
 日産「LEAF(リーフ)」やテスラ「モデルS」なら駐車できそうですが、(スマートフォンがそうだったように)「BEV車」のバッテリー容量も増加していくはずです。
 たぶん100kVA 位のバッテリー容量は、普通になると思います。(そうなると当然車重も増え・・・2000kgを超えるのも珍しくなくなるかも?)

 最大積載車重を超えた状態でパレットを昇降させると・・・当然機械の故障のに繋がります。
 うちのマンションの機械式駐車場も(今後を考えると)最大積載車重を増やしたいところです。

車載重量問題の解決法は?

 縦に並ぶ3台分のパレットのうち1台分を使わないようにするしかないと思います。3段式を2段式にする・・・と言うことです。(中型車用パレットの最大積載車重は2475kgに、大型車用パレットは3000㎏になる)
 こうすることで・・・現在の駐車台数から3分の2の台数に減りますが、平面駐車場に変更する場合と較べると2倍の駐車台数を確保できます。

 なお、パレットは・・・(橋梁等の耐震補強に使われている)カーボン繊維をパレットに張り付ける等して補強すれば、十分な強化を確保できると思います。 

どうせ2段にするなら・・・

 2段に変更するなら・・・中段のパレットを取り外して、車高の高い自動車も駐車できるようにしたいなと思います。(うちのマンションの場合・・・中段と下段は車高1550mmまでしか駐車できないので)

 また・・・できれば下段のパレットの位置(=上段パレットとの間隔)を変更できたら良いなと思います。
 下段のパレットからの入出庫時間が短縮されるだけでなく、機械式駐車場のピット内の底付近は(空気が淀み湿度が高いので・・・)駐車する自動車の環境が良くないのです。
 特に電子部品の塊のような「BEV車」の駐車環境として適していないのでは?と思います。

どんなタイプの充電設備?

 詳しい話は分かりませんが・・・駐車パレットに1台ずつ充電設備を設置するのではないようです。
 複数台の「BEV車」の充電を共用?順番?で(シェアしながら)行なうシステムのようです。

機械式駐車場の電気事情

 3段式の機械式駐車場の操作パネルは、6台分のパレット(=2列x3段)に1つ設置されています。つまり・・・2列のパレットを同時に昇降させることはできない仕様になっています。
 
 全てのパレットを同時に駆動させる仕様にすると、電気容量が2倍に増えます。電気容量が増えると、太い電源ケーブルが必要(もしくは本数を増やす必要)がありますが・・・何より電気の契約料金が高くなります。

 機械式駐車場の電源は、「低圧電力」と呼ばれる業務用電力なので・・・基本料金が高いのですが、電力量料金(=使用料)は安い電気です。

 ちなみに2022年3月現在の関西電力の月額の電気料金を確認すると、家庭用「従量電灯B契約」は基本料金396円、電力量料金23円63銭(301kWh~)でした。対して「低圧電力」は、1kWあたり基本料1,078円/使用料14.43円(夏季料金でその他季節は12.95円)でした。
 「低圧電力」は「従量電灯B契約」に較べ、基本料金は272%と高価ですが、電気量料金は夏季でも61%(それ以外の季節なら55%)と安価な価格設定になっています。

うちのマンションでは・・・

 ちなみに・・・うちのマンションの機械式駐車場用の駆動モーターの電気容量は4kWです。パレットは10列あるので・・・もし仮に全部の列のパレットを同時に動かすには、40kW(=4kWx10台)の電気容量が必要になります。
 (台数圧縮や容量圧縮を無視して考えると・・・)毎月の基本料金は47,432円になっちゃいます。
 ところが・・・実際は、同時に駆動用モーターが動く(=通電する)可能性があるのは5台のモーターなので、電気容量は20kWで済み・・・基本料金は、23,716円に抑えられます。(ちなみに毎月の機械式駐車場の電気量料金は・・・わずか数百円レベルです)

「低圧電力」の基本料金   ※台数圧縮や容量圧縮:非考慮
 10列同時駆動    47,432円=@1,078円x40(kW)x1.1(消費税)
  5列同時駆動     23,716円=@1,078円x20(kW)x1.1(消費税) 

結局どんな充電システム?

 充電の電源は、機械式駐車場を動かすための電源(うちのマンションの場合:「低圧電力」4kW )を利用するようです。

聴いた話を総合すると・・・
① 充電設備(4kW )は、4台分のパレット(2列x2段)につき1基設置
② パレット昇降時は、充電一時休止(駆動モーターが全4kWを使用する為)
③ 複数台(最大4台)同時充電時は、各々の充電状況を考慮し4kWを配分

今回の充電設備のまとめ

 例え2段になり駐車台数が3分の2になったとしても・・・機械式駐車場を利用し続けることができそうなのは、朗報です。

 キモは複数台の「BEV車」に充電用電気を配分するアルゴニズムかな?
 加えて・・・「H2Vシステム」のような機能もあれば良いなと思います。

 でも、この「BEV車」用充電設備は・・・まだまだ開発中です。未確定な部分が多いですね。でも大いに期待して実用化を待ちたいと思います。

 1日でも早く登場して欲しいなあ・・・(補助金が使えるうちに!(笑))
  (おわり)


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