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マンションの電気を考える(7)

 前回は電源が確保できたからといって給水ポンプを回わす訳にはいかないという話をしました。
 そもそも水道局からの給水が再開されないと意味ないし、マンション内の給排水設備(に漏水がないか?等の)点検が終了しないと給水ポンプを回す訳にはいかないからです。

 そして前回は話が脱線して・・・強靭な鉄筋コンクリートでできているマンションの住民は罹災時に避難所に避難するのではなく、自宅のマンションで避難生活を送ることになる。
 平時から罹災時の備えが重要・・・みたいな話で終わりました。

 今回は、話を戻します。(笑)
 (災害・事故等により)マンションが全館停電した時に・・・うちのマンションに駐車できる11台の「BEV(:Battery Electric Vehicle)車」のバッテリーを使って、共用設備用電源(対象:給水ポンプ・エレベーター・共用廊下照明器具等)を賄ったらどうなるのか?の続きです。

過去の記事は、こちら
  
マンションの電気を考える(1)
  マンションの電気を考える(2)
  マンションの電気を考える(3)
  マンションの電気を考える(4)
  マンションの電気を考える(5)
  マンションの電気を考える(6)

エレベーターも動かないかも?

 エレベーターが震度4以上で停止したら、エレベーターメンテナンス会社の資格者による安全点検が完了し、運行強制停止の解除の手続きが行われないと作動しません。

 最近の近畿で発生した大きな地震に「大阪府北部地震」があります。
 2018年6月18日の朝に発生した「大阪府北部地震」(登校途中の女の子が倒れた学校プールのブロック塀の下敷きになって亡くなったショッキングな事故がありました)では・・・うちのマンションでも震度4以上の揺れがあり、エレベーターも停止しました。その時は・・・エレベーターが復旧するまに48時間以上かかりました。
 なおエレベーターは、メンテナンス会社の資格者が訪問確認の作業をしなければ復旧できない仕組みになっています。そして復旧優先の順番は、下記のとおりなので・・・うちの(ような)郊外の低層マンションは、一番最後になるからだと思います。

 「大阪府北部地震」よりも大きな震災が発生したら・・・仮に電源が確保できてもエレベーター復旧は相当に遅れるのでは?と思えてきます。
 そう思うと・・・エレベーターの電源確保は、想定しなくて良いかも?と思えてきました。

(震度4以上の地震発生後のエレベーターの復旧順)
 ① かご内に人が閉じ込められたエレベーターの建物(最優先)
 ② 病院などの建物
 ③ 行政機関が入る公共施設の建物
 ④ 高さ60 m以上の高層住宅・テナントビルの建物
 ⑤ 一般のマンション等の建物(最後)

結局・・・水道もエレベーターも想定外

 罹災時をイメージしながら・・・全館停電時に「BEV車」のバッテリーを運用する現実的なシュミュレーションを考えていくと・・・共用部で電気が必要なのは、共用廊下等の照明かな?

廊下照明の明かりは心の支えに!

 共用廊下の照明は「従量電灯」という家庭用と同じ契約の電気が用いられています。(ちなみに・・・うちのマンションの場合、従量電灯使用量は月間1400kWhくらいです)

 たとえ罹災しても・・・少なくとも日没の前から深夜(夜の11時くらいまで?)は、マンションを明るく照らして欲しいです。
 照明が点灯することによる防犯の意味もありますが、皆の気持ちの問題が大きいと思います。(罹災時にマンションの電燈が点いてる安心感は、絶大だと思います)

 真っ暗な街の中でマンションの廊下灯だけが明るく灯っているって・・・マンション住民だけでなく地域の住民にとっても、罹災時の沈んだ空気や気持ちを奮い立たせる大きな支えになるのでは?と思います。

共用照明は何日点灯できる?

まずは・・・従量電灯使用量を算定

 前回は、点灯する照明を半分に減らすシュミュレーションで電気使用量を計算しましたが、よく考えると・・・
 日没から日の出まで点灯させる必要はないでしょうから、点灯時間も半減できると思います。
 うちのマンションの従量電灯使用量は月間1400kWhで、半分に減らした電気使用量が月間「840kWh」(硬めに40%減で計算)ですが・・・更にその半分で計算すると月間「420kWh」になります。(1日「14kWh」)

じゃあ何日いける?

 本シリーズの第4回の中のチャプター「11台の「BEV車」の電気供給量は?」では、11台の「BEV車」の電気供給量を「176kWh」と想定しました。ということは・・・以下のとおりになると思います。

  176kWh ÷ 14kWh=12.57(12日と13時間43分)

 これは固めの計算なので、実際はもう少し日数を延ばせるかもしれませんので・・・まあ2週間は耐えられるという感じになると思います。
 罹災後2週間で電気が回復しないかもしれませんが、2週間あれば(罹災のダメージから生活再建に立ち上がる等の)次のステップに進めるのでは?と思います。
 そして・・・今回は「BEV車」のバッテリー容量を「40kWh」として計算していますが、技術や生産量が増えて「60kWh」や「80kWh」が標準的になれば、当然に点灯する日数も長くなります。
 現在の日産「リーフ(2代目)」は「40kWh」が標準の電気容量だけど・・・2010年に登場した「初代リーフ」は「24kWh」が標準でしたから、2030年頃の「BEV車」は、標準的に「80kWh」くらいのバッテリー容量になっているのでは?と思います。

スマホの充電も大事なインフラ

 また、共用廊下の照明器具の電源は(家庭と同じ)従量電灯なので・・・家庭用の100V電源を簡単に取り出すことができます。
 マンション住民のスマホの充電用の電源としても活用可能です。

 スマホは、安否確認や情報収集だけでなく・・・SNSを通じて勇気や生きる気力をもらうこともできるので、ライフラインの1つだと言って良いと思います。
 ということで・・・マンション住民のスマホをいつでも充電できるインフラを確保することは、マンション管理組合が非常時に備えて取るべき対策の候補の1つだと思います。
 少なくても(デリバリーや分配のルールを具体的に考えてみると・・・各戸でも備えることが可能な)水や非常食の確保をマンション住民のために行なうことよりも、現実的だと思います。(スマホの充電に必要な電気使用量って僅かだと思うし・・・)

 次回は、マンションで「BEV車」を駐車させるために必要なインフラ整備(設備・ルールの取り決め等)についてお話したいと思います。
  (つづく

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