大切な人は明日も隣にいるとは限らない
坂本九さんの歌に「明日があるさ」という有名なものがあります。
「ぬれてるあの娘こうもりへ
さそって上げようと待っている
声かけよう 声かけよう
だまって見てるボク
明日がある 明日がある 明日があるさ」
人間、無理をしすぎると簡単に壊れます。
「明日があるさ」の精神でゆっくり生きることも必要な処世術でしょう。
ですが、ふと、「明日は本当にあるのか」と思う瞬間ってありませんか。
少なくとも、わたしはしばしばそう思って生きています。
ーー
2年ほど前、わたしは自宅の近くで交通事故に巻き込まれました。
当時、タクシーに乗って温泉施設から自宅に帰るところでした。
タクシーの後部座席に乗ってネットサーフィンをしていたら、いきなり「ドン」「ガチャン」という音が聞こえて、タクシーの車内が大揺れしたと思った瞬間、タクシーは前方の乗用車にぶつかりました。
つまり、わたしの乗っていたタクシーが後ろから追突され、さらにタクシーが押し出される形で前方の車両にぶつかったという事故です。
タクシーの前方と後方はかなり破損していました。
後ろを振り返ると、大きめのトラックがありました。
タクシーの前にいた車両の運転手が降りてきて、「おーい」とものすごい剣幕で怒っていました。
タクシーの運転手側のドアは、衝突の衝撃で開かなくなっていました。
幸い、タクシーの運転手にもわたしにもとりたてて怪我はありませんでした。むちうちさえ生じなかったのは相当幸運というしかありません。
ですが、もし、後ろからぶつかってきたトラックのスピードがもっと速かったら、大怪我をしていた可能性もありますし、死んでいたかもしれません。
バッドエンド。
あぁ、まだやりたいことたくさんあったのに。
成し遂げていないこと、たくさんあったのに。
話し足りないな。もっと話を聞きたかったな。
特に怪我をしていなかったのですが、底知れぬ、例えようのない怖さと不安を感じました。
残念な真実ですが、寿命とは関係なく人生が終わることがあります。
一番怖いのは交通事故です。
まだ若い命が理不尽に奪われたり、そうでなくとも植物状態になったりする例がたくさんあります。
意識が回復したとしても、頭を打って人格が変わる例は珍しくありません。
事故前の人格は消されてしまうのです。小室哲哉さんの一件で話題となった「高次脳機能障害」です。
横断歩道を気をつけて歩けば、安全運転をしていれば大丈夫だというものでもありません。
例えば、今回の追突は、自分がいくら気をつけていても防ぎようがありません。
確率は少ないとしても、理不尽な「強制終了」が生じることがある、ということは、生きていく上で認識しておいたほうがいいかもしれません。
この「強制終了」はもちろん自分にだけ生じるわけではありません。大切な人が対象になることだってあるでしょう。友人、恋人、親、子、そして配偶者。
ーー
人間関係を築いていればいろんなことがあります。
例えば、恋人や夫婦。
喧嘩もするでしょう。
喧嘩をすれば、しばらくは嫌な気持ちになるかもしれません。
愚痴を言いたくなるときがあるかもしれません。
そういうときに相手や自分に負の感情を抱くということがあるかもしれません。イライラ,嫉妬,悲しみ,憎しみ・・・。そして,そういう負の感情に苛まれることもあるかもしれません。
以前、「旦那デスノート」という夫の愚痴を書き込む掲示板が話題になっていましたが、これをみて思った感想は「もったいない」というものです。「そんなことに貴重な時間を使うんだ」と思いました。
大切なことは,自分の身の回りにいてくれる大切な人の存在は決して「あたりまえ」ではないということ。
一緒にいて笑ってくれることはとてもありがたいということ。
そういう人と、残された人生で、あと何回話せるでしょうか。
思ったよりも話せなかったと、あとから後悔することはないでしょうか。
負の感情を抱くことが悪いということではありません。人間ですもの。
でも、やはり、わたしは、負の感情を抱いている時間はもったいないと感じます。
負の感情にひたることに時間を使うくらいなら、そばにいる人をどうやって幸せにするかを考えることに時間を使いたい。
あるいは、そばにいる人をどうやったらより理解できるかを考え、その人とたくさんコミュニケーションをとり、理解を深めることに時間を使いたい。
そうして相手が笑ってくれれば、自分も幸せになれる。
そういうWIN -WINな関係性をつくるためにこそ大切な時間を使いたい。そう思います。
負の感情にひたっていることの一番の問題は、その時間、自分で自分の人生をコントロールできていないということにあると思います。負の感情が暴走して何も考えられなくなるのです。そんなもったいないことに時間を奪われず、自分でコントロールできる人生を取り戻すためにこそ、人間には理性が備わっているのだと思います。
負の感情は人間関係改善のヒントにもなります。大切なことは、負の感情にひたることではなく、負の感情が生じた根本的な原因を探って、「どうやったらより快適な関係を作れるか」を考えることです。負の感情を改善のためのスタートラインと捉え直すだけの理性が人間には備わっているはずです。
わたしの言っていることを「理想論」とおっしゃる方もいるかもしれません。現実はそんなに甘くないよ、絵空事だよと言う方もいるかもしれません。でも、わたしには、もったいない現実を追認するより、人生をより有効活用するための絵空事を考えるほうが性に合っているのです。
時間は有限です。
人間関係が一時的にもつれて負の感情に支配されたときこそ、残されたときはわずかかもしれないという当たり前の事実に目を向けたい。
わたしはそう考えて生きています。
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