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9月25日

久しぶりに日本の友達からお手紙ときれいなポストカードをもらった。今は携帯ですぐにメッセージのやりとりやWi-Fiで無料通話もできるけど昔から変わらない丁寧な字にほっとする。彼女は中学、高校と仲良くしていて短大も同じところを受けて無事合格したので一緒に通う予定だった。3月のある日彼女は帰り道でこう切り出した。「留学とか興味ない?私アメリカに留学しようと思って」高校も毎日一緒に通学し、いつも淡い恋愛話や学校の先生の物真似で盛り上がっていた私達。

海外留学!?

海外にうっすらと憧れはあったけど彼女の言葉に驚いた。私は、高校時代にその彼女から誘ってもらい夏休みに幼稚園でお手伝いをさせてもらってとても楽しい経験ができた。その流れで一つしか受験しなかった短大も幼児教育学科を第一希望にしてお互いそういう方向に行くものと勝手に思っていた。でもいつの間にか彼女は1年間、交換留学生としてアメリカに行くことが決まっていた。せっかく受かって入学金も払ったはずの短大も辞めて遠いアメリカに旅立ってしまった。私にも留学は勧めてくれたけど私はそのまま短大に通った。

アメリカで現地の高校で一年間過ごした彼女からは時々丁寧な字で書いた手紙をもらった。アメリカは慣れるまで大変だったけど楽しく過ごせていること。今でこそ日本はアメリカやヨーロッパからも人気の観光地になったけど日本の文化がまだ知られていない1980年代。彼女の手紙によると『サムライはまだいるのか』『日本にも電話はあるのか』などとよくクラスメートに聞かれたらしい。

そんな彼女もアメリカから戻ると専門学校に通い、家業を手伝いながら結婚をしてあっという間に3人の子供のお母さんになった。

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写真のキラキラするポストカードの説明書きも彼女らしい。久しぶりにもらったお手紙には今ロスアンゼルス近郊に住んでいる彼女の娘さんの話を聞いてやってくれて本当にありがとうと書かれていた。10年以上前になるが一度家族全員でサンフランシスコに遊びに来たこともあるので娘さんや息子さんもよく知っている。娘さんはアメリカ人男性と日本で出会い結婚して小さい赤ちゃんと猫2匹と一緒にロスアンゼルス近郊に2年前に引っ越して去年は二人目の赤ちゃんも出産した。今は1歳児と2歳半の子育てと旦那さんはリモートワーク。なかなか息抜きする暇もなさそう。毎日大変そうなので主にLINEで会話している。日本にいたとしてもこのコロナ禍での子育ては本当に大変だと思う。私も娘が2歳になる前にアメリカでやっていく自信をなくし日本に一度逃げようと帰国したこともある。優しく迎え入れてもらえると思ったのだが実家の母が「ここには住まんとき。はよアメリカに帰りなさい」と言われ本当に泣く泣くアメリカに戻った。その後、仕方なく英語の学校に通いパートで仕事もし始めてから私の人生は変わった。あの時の母の本意はわからない。母自身、父の実家のそばに家を建てて定年後に引っ越したものの肝心の父は、第2第3の仕事人生を爆走中で不便な田舎で寂しかったと思う。私は悩み抜いてお願いしたことをあっさりと却下されてとても悲しかったのを今もよく覚えている。

現在、子育て中の友達の娘さんはやはり色々悩んでいるようだ。日本への帰省も今は予定が立たないし、不安だらけなのは私も一緒だ。日本にいる私の友達も娘さんのことは心配なのだろう。去年の出産の時は無理を言って忙しい家業から2週間お休みをもらってアメリカに駆けつけていた。今年の春に6番目のお孫さんも産まれたらしい。思えば高校卒業後はお互い全然違う道を歩んで来たけれどまた娘さんのことがきっかけでその友達とも時々、会話できるようになってうれしい。アメリカからは手紙だと10日くらいかかってしまうので私はLINEで返事を書いた。

お手紙とポストカードありがとう。娘さんのことは私ができる事はサポートするから安心して!お互いまた会える日まで元気でいましょうね。

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