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新卒でSalesforceに入ってAI製品のPMMになってPMチームを立ち上げた話

Salesforceでプロダクトマネージャーをしているハヤカワです。先日Twitterで ツイートしたことについて書いていこうと思います。

現在から振り返って時系列を遡って書いていきます。初めに言うと詳細に書いた結果、かなり長くなりました。

プロダクトマネージャーとしての現在

現在は、日本のプロダクトマネージャーチームの一員として、Sales Cloudや、Einstein AI, Platform製品などを担当しています。

実際に何をやっているかは、イベントで登壇した際のスライドにもまとめたのですが、自分で見ても非常に幅広い業務を幅広い製品でやっています。

なので、一般的なPMの方のように"The PM"のスペシャリストというよりは、より広範囲に浅いジェネラリストのような立ち回りをしています。

具体的には日本市場での新製品ローンチ、ローカリゼーション、日本顧客からのVoC, パイロット、ユーザーリサーチ、UXテスト、製品開発のためのアダプション、製品アウェアネスの向上、ワークショップ、イベント登壇、社内リソース整備、広報やアナリスト向け対応などなど・・・(自分で書き出してみても広いですね・・・)

逆に、やっていないこととしてはエンジニアと一緒に実際の製品を作ったり、機能自体を考えるということはしません。それはあくまでも本社のPMが主体でやります。一方で、日本のお客様の声やフィードバックを本社に伝えることでロードマップに影響を与えることができます。

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つまり、外資系IT企業での日本法人のPMの役割として、日本市場での製品の顔となり、顧客の声となり、プロダクトの日本の責任者たるべく仕事をしています。

このプロダクトマネージャーチームは、実は私の元上司(先月新たなキャリアに挑戦されました)と2人で昨年2019年に新たに立ち上げたチームでした。

プロダクトマネージャーチームの立ち上げ

外資系のIT企業の日本法人ではプロダクトチームを持たないことも少なくありません。なぜならば、製品開発、研究チームは本社にあり、日本は営業&マーケティング、サポートなどにフォーカスすることで、ローカルでの販売を強化する狙いがあります。

しかし、一方で日本の顧客のフィードバックや新製品の情報などは海の向こうに伝え合うのは難しく、伝達速度にも差があります。

幸いにもSalesforceはグローバルカンパニーとして確立しているので、日本のお客様でも不自由なく十分に製品機能を活用していただけます。IdeaExchangeというお客様からアイデアを募るサービスもあるため、その多くは問題なく使っていただけます。

しかし、こと"AI"となると、言語依存が多く、特に自然言語処理や音声認識など日本語は世界的に見ても扱いが難しいとされています。

このように、AI製品に限らずイノベーションの速度が加速し、新製品がどんどん出る中で、日本にも製品に特化したロールが必要だと判断し、プロダクトマネージャーチームを作りました。もちろんこれまでも、プリセールスやカスタマーサクセスチームとしてはプロダクト専任担当者はいます。

当時は、このようなプロダクトのロールは"プロダクト"という名前が唯一ついている役職ということで、プロダクトマーケティングマネージャーが担当していました。

しかし、本来のPMMとPMは役割分担が違うため多少責任範囲を超えた仕事をしていたわけです。プロダクトマネージャー(PM)とプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)の違いについては、また今度noteに書きたいと思います。

そこで、プロダクトマーケティングチームから独立した形で、プロダクトマネージャーチームを発足しました。チームを作るにあたって、日本におけるPMにロール&レスポンシビリティとJob Descriptionを本社のPMの内容をベースに考えました。

ここでは詳細には書けませんが、ちょうどたまたま本社のPMロールの募集が出ていたので、新しくファミリーになったTableu製品ではありますが、共通する部分を抜粋しました。

Responsibilities
・Engaging with customers and the community to deeply understand their needs
・Grooming the product backlog to effectively drive the product roadmap based customer need, innovation and growth opportunities
・Creating user stories and defining requirements as well as success criteria used to measure the impact and success of new features.
・Working closely with Engineering and UX to deliver solutions and new capabilities to the Tableau community
・Representing Tableau’s products to customers and partners.

つまり、PMに求められることは簡潔に意訳してしまうと、

・顧客の欲しいと思うものを深く理解して顧客とコミュニティに深く関わる
・顧客のニーズ、イノベーション、マーケットの成長のためのプロダクトロードマップを作ること
・新機能のインパクトや成功を測ってサクセスクライテリアに沿ってユーザーストーリーや機能要件を決めること
・エンジニアとUXチームと一緒にソリューションを届けること
・顧客やコミュニティに対しての製品の顔となること

次に求められる人物像は

Who You Are…
・A tireless advocate of the needs of our customer - both our creators and knowledge seekers
・Excellent product/design sense, and you can take complex problems and craft simple experiences
・Care about the details and strive for operational excellence.
・Able to translate your product ideas into expected business impact
・A growth mindset, you understand that not all great ideas take flight, but you can learn from success as well as misses.
・Love to learn, ask questions and aren’t shy about taking on new projects

こちらも意訳すると、
・顧客のニーズを代弁し頑張り続ける
・プロダクトやデザインのセンスが最高で、複雑な問題をシンプルに解決できる
・Operational Excellenceのために"神は細部に宿る"の精神で頑張る
・プロダクトアイデアをビジネスインパクトに置き換えて話せる
・成長志向で成功と失敗から学べる
・学ぶのが大好きで、好奇心旺盛な人

これに日本独自の要件などが加わり、採用を開始しました。PMの採用についてより詳細に知りたい方は、私の恩師で元マネージャーでもあるケン ワカマツさんが先日のpmconfで発表したスライドをnoteに上げてくれているのでご覧ください。

さて、その結果、現在では2人のPMがJoinし、さらには他の部署にいたPMロールを実際は担っている方々も加えて、現在はVirtual Teamとして活動しています。

このプロダクトマネージャーチーム立ち上げのきっかけにもなったEinstein AIは、私が今のポジションになった元々のきっかけでもあります。

Einstein Product Marketing Managerに

Einsteinは私が入社した2016年に発表されたSalesforceの初めてのAI製品であり、誰もが簡単にビジネスにAIを活用することができる、AI for Everyoneをビジネスの世界で実現した製品です。

発表された当時はAIブームがまさに日本でも巻き起こっている最中で、「AIが人の仕事を奪う」とか「ディープラーニングとは?」「AI人材の不足」とかが毎日話題になっていました。

まだまだビジネスの世界でのAIの現実的な認知度は低く、製品のマーケティングの需要が特にあり、このEinstein Product Marketing Managerのポジションが作られました。

PMMに馴染みがない方に簡単にロールを説明すると、PMMとは「プロダクトをお店の棚に置いて顧客の手にとってもらう仕事」と喩えることができます。製品をどのようにブランディングするか、どのように売り場に入れて、製品の魅力をメッセージングし、キャンペーンやイベントでどう顧客に魅せるか、他の製品とどう組み合わせて魅せるか、実際にどう使えるかを自ら見せ、その良さを語るという点で、出来上がった製品をどのようにして顧客に手をとってもらうかに責任を持つ役職です。プロダクトマネージャーは逆に「最高の製品を棚に入れる仕事」と言えます。

そんなPMMのポジションが社内で募集され、それに応募することで、新卒入社3年目にAI製品であるEinsteinのプロダクトマーケティングマネージャーとして異動することができました。

Einstein PMMとしては、AIがまだビジネスの世界では認知度が低かったこともあり、まずは社内の人達に、「AIとは?」「Einsteinとは?」「何が良くなるのか?」「どう使えるか?」を年がら年中、社内向け、お客様向け、パートナー様向けに、セミナー、ウェビナー、ワークショップ、イベントに登壇し、ドキュメントやFAQなどのコンテンツを用意したりました。まさにAI製品を日本市場という棚に置いて、お客様に手に取ってもらうための活動をしました。

なぜ、EinsteinのPMMになれたかというと、いくつかのきっかけがあります。

プリセールスエンジニアからEinstein Specialistに

私が新卒として入社をして、最初のキャリアをプリセールスエンジニアとして始めたその年に、Einsteinが発表されたました。その当時は、まだまだAI自体の認知度も低く、学生時代に大学院と研究所で自然言語処理だとか、推薦システムとか、機械学習をかじっていた私は、社内のチーム内でLTや勉強会を開くようになりました。

といっても、ビジネスでのAIなど知りませんし、機械学習などをどんぴしゃでやっていたわけではなかったので、ひたすらビジネス書や技術書を読みました。

さらに、あまり詳しくはないにも関わらず、チームメンバーや周りにいかにもAIに詳しい、若い新卒がいるという雰囲気をもたせるために、今思えば少し背伸びをしていました。

背伸びをしたあとから、勉強会やお客様へ話す状況が増えて、それに釣り合うように必死で本やら情報を漁って、ビジネスにおけるAIの知識を身につけていきました。我ながら結果的にうまくいって良かったと思います。

今でもこの「やりたいことに少し背伸びをして周りにできると思わせて、それの期待に合わせて勉強し、アウトプットすることで身につく」というのは良い学びの一つとして意識しています。

特に新卒の段階では、経験もスキルも少ないのでできることがアピールするだけでも大変なので、むしろできないことでもやりたいと思う領域に背伸びして、できると宣言することが大事なのかなと思います。

その結果、社内でのAI人材として自分の認知度があがり、さらにアメリカ本社で新しくできた社内のAI認定資格にすかさず応募をして、AI製品Einsteinの社内資格に日本で初めて認定されたのがキャリアに拍車をかけました。

そこからは、Einstein Specialistとして認知され、AIというキーワードに積極的に関わり、情報を集め、社内で発信をし、を繰り返し、当時のマネージャーに見つけていただき、Einstein PMMのポジションに異動することができました。

とはいえ、社内での認知度が上がったからと言って異動できるわけではありません。一番重要なのは"運""人"だと思います。

新卒として入社したその年にSalesforce初となるAI製品Einsteinが発表されたタイミングで、周りにAIに詳しい人が少なかったこと。最初にプリセールスエンジニアに配属されてから、ちょうど2年ほどでEinstein PMMのポジションができたこと。このポジションが開くのがもっと早ければ、新卒としてまだ経験も実績もない中だったので、すぐに部署異動はできなかったと思います。

また、たまたま別の社員間交流を深めるための社内イベントで、仲良くしていただいていたマネージャーが、このEinstein PMMのポジションの採用をしていただいていたこと。そして、プリセールスエンジニア時代のマネージャーもまだ実績も経験もない中での新しい挑戦に背中を押してくれたこと。

タイミングと周りの人達の後押し、そして自分の意思のすべての歯車がカチッとハマった瞬間に異動することができました。

余談ですが、恩師でもあるこのマネージャーが辞めてしまう時の最後のミーティングで、ビジネスと恋愛は同じだと言っていました。アメリカ出身で本社のPMとしてAIプロダクトの開発をしていただけあって、センスが最高です。

そして、私が特に"運"と"人"の重要性を感じたのは大学院時代にさかのぼります。

産総研での研究アシスタント時代

Salesforceに入社するにあたり、人生の起点になったのがこの産総研(産業技術総合研究所)での研究アシスタント時代です。

筑波大学大学院に進学したものの、配属の研究室が産総研との共同研究室であり、2年間の院生活はほとんど産総研にいました。さらに、研究アシスタントという形でお給料をもらいながら、研究生活をしていました。

そこでは、音楽情報研究という日本でもトップクラスの音楽×テクノロジーを組み合わせた研究をやっていました。音楽といっても音響工学やハードウェアではなく、楽曲情報や歌詞、ダンスやボーカロイドなどの音楽コンテンツにまつわる研究で有名なところでした。そこに入ろうと思ったきっかけがまさに"運"と"人"でした。

大学時代は平凡なバンドマンをしており、情報系の学部にいたもののあまり勉強や研究には興味がありませんでしたが、唯一好きだった音楽とテクノロジーの組み合わせに興味を持ち始めました。

余談ですが私のバンドの最新のMVもぜひ見てください!

学部時代の研究室では、自由に研究をさせてくれる教授のもと、興味がある分野をやろうということで、音楽×テクノロジー系の論文を漁りました。

すると、私が考えたいくつかの論文テーマのそのほとんどすべてを10年以上前に論文として出している方の名前を発見しました!これが後にお世話になる産総研と筑波大で教授をしている方です。当時はあまりにも自分と同じような考え方をしていて驚きました(実際は自分の何十倍もの考えをお持ちで、私の考えていたことはその一部に過ぎませんでした)

そこで、その方の研究室のホームページなどを色々調べていくうちに、産総研の研究室ではあるものの筑波大学との共同研究室で、学生を募集していることを知りました!

高校からも内部進学で大学にあがったので、院受験なんて考えてはいませんでしたが、なにか引き寄せられるものを感じて、筑波大への受験を考えました。ちょうどその時期は、内部進学の推薦申請の〆切を数週間前に控えたタイミングで、熟考する余裕もなかったので、急いで両親に状況を説明して、推薦での進学の退路を断ち、筑波大への受験を決め、進学したのでした。

研究生活では、今の社会人としての自分の基礎の多くが作られたと思っています。日々の研究者の方とのランチミーティングや、外国人の研究者の方との交流、研究に必要なアプリケーションの開発、論文の読み方書き方、学会での発表のノウハウ、もちろん自然言語処理などの基礎技術の知識などです。

私がアカデミックの世界を飛び出したのは、その成果としてビジネスに繋げたかったからです。論文や学会発表だけでは世の中にそれを届けるまでに時間がかかります。ビジネスではそれを届けなければ存在しないのと同義なので、そういう世界で働きたいと思ったからです。

しかし私が本当にやりたいことは、アウトプットとしてビジネスなのかアカデミックなのかは別として、PMも研究者もとても親和性があるように感じます。

そしてこの経験ができたのも、たまたま興味を持った音楽×ITのテーマの著名な方が大学で学生を募集していたこと、自由な研究をさせてくれた学部の教授、院進学の推薦をギリギリ断れるタイミングだったなど、"運"と"人"がそれを支えてくれました。

おわりに

昔話のようになってしまいましたが、これまでのわずか6,7年の中で、多くの教訓を学んだと感じます。「背伸びをしてでも興味ある分野に手を出し周りに宣言すること」、「タイミングを逃さないために多くの分野に手を出すこと」「大事なキーパーソンを見つけるための第六感を意識すること」など、多くのことを学びました。

最近は学びの量は減りましたが、その分アウトプットすることに精を出しています。note書いたり、友人とポッドキャスト配信をやったり、バンドで曲作ったり、アプリ開発したり、DIYしたり、スタートアップのプロダクトやPMの相談を受けたりと、根っからの何かを作り出すことが好きな人間なので良いですが、インプットとアウトプットの時期は交互に来るのかなーとも思います。

良かったらTwitterのフォローと、毎週友人とポッドキャスト配信をしているのでぜひ聞いてみてください。


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