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9月短歌19首

 9月も短歌に向き合う日々を過ごしていたんですが、下旬にコロナにかかってしまい2週間近く作歌できない期間を作ってしまいました。上旬は毎日のように投稿でき、noteの連続投稿の通知が1日づつ増えていくのに喜びも感じていただけに、悔しかったです。それでもテーマを設定した3首連作を2回やれたりしたので、8月の16首より多く作歌できたのは良かったです。今回も自分でコメントをつけながら振り返りたいと思いますで、どうぞお付き合いください。

1.まっさらな月次の書類にふわふわと棒線引いて朱く汚した
 月がかわり気持ち新たに出勤したのですが、月次の書類の一発目に訂正印を押してしました。学生時代に新しいノートをおろした時、丁寧に板書を写そうとして失敗した時の虚しさを思い出します。
下句で「訂正印」と書くより、動作をそのまま記した方が汚してしまっている感じが出るかと思いました。

2.白日の大通り歩きドーナッツ食べる背中はやけに丸くて
 仕事中に見かけた人を短歌にしました。背中の丸みに背徳感のようなものを感じました。平日の日中に歩き食いするドーナッツは想像するだけでも美味しそうです。

3.六つした結婚祝いに帰郷する兄でいるより離れていても
 9月下旬に妹の結婚式があったのですが、大学進学で実家を出た私は妹と過ごした12年よりも長く、離れていることに気が付きました。ちなみにコロナにかかったせいで結婚式は欠席になりました。私は悪いお兄ちゃんです。

4.おとうとの夏色響く晴れた午後ぎこちなく指ぱっちん鳴らす
 義弟との仲が良いわけでも悪いわけでもない微妙な距離感を読みたかったのですが、下句がしっくり来てません。「午後」と「ぎこちなく」の音の繋ぎが気持ち悪く感じてます。でも、それが微妙な距離感の表現に繋がってればいいのになとも思ってます。

5.敵兵を切り捨てたまま進みゆく多様性の旗を掲げても
 多様な社会を望んでいても、多様性は「多様でないもの」を受け入れられていない矛盾を感じています。そんなことを今の自分の言葉で短歌にしてみたかったです。

6.背を伸ばし鏡の世界に目を合わす正してないと何も見えない
 車のバックミラーを姿勢を正した状態で合わせると、猫背になれば後ろが見えなくなり姿勢が崩れたことに気付けます。最近は健康のために姿勢を気にしています。
第4句を7音にするために「正してないと」としましたが、正しさについて詠んでるのに「正していないと」とせず“イ抜き”になっているのはどうなんでしょう。正しさってなんですかね……。

7.手で払う蝶々が指に触れる夢小指の先に質量がある
 手、指、小指と徐々にフォーカスされていく感じがでればと思いながら作歌しました。すぐに見失って本当に蝶がいたかも分かりませんが、小指にはしっかり感覚が残っていました。

8.トーストにやさしい味のピーナッツバターを塗って満ち足りる朝
 お気に入りのピーナッツバターがあるんですけど、それがあるだけで朝は本当に満足です。言葉にもリズムにも過不足なくでき、満足感が歌えてると思ってます。

9.眠らないネオン輝く古町の月は優しく夜を進める
 9〜11は「十五夜」でテーマ詠した3首です。この日は夜勤で繁華街を車で走ってました。コロナも落ち着き、飲み屋街も人の動きが多くて日常が戻ってきた気がします。

10.真円の月が夜空にあろうとも夜勤の車内にラジオが響く
 例え月が綺麗だからといって仕事を止めてながめるわけにはいかないんだよなあと思いながら作歌しました。

11.水面に映る十五夜はないけれどビル群の隙にのぞかす月よ
 昔の月見は水面に映った姿を楽しんだらしいです。私はビルとビルの間に垣間見る月を楽しみました。

12.わが生まれ「身体が硬い」と記された星の運命や絶望ぞ来る
 12〜14は「誕生日占い」のテーマ詠3首です。信じるわけでもないですが、占いを見るのは好きです。自分の誕生日占いを見てたら「身体が硬い」と書いてあって、驚きました。実際に身体はめちゃくちゃ硬いですが、これが運命だとは信じられないです。

13.個性こそ武器と信じた末に知る「オリジナリティにこだわりがち」
 20代で演劇にのめり込んでいた時は自分の作品の独自性について頭を悩ませていましたが、それも誕生日占いの本に書いてあって悔しかったです。私は占い通りの型にハマった人間だと言われた気分です。

14.あの人の人柄気になり見たとして何の助けになるわけでもなく
 直接交流のない人の誕生日占いもつい見てしまいます。話す機会もないので、占いを見てわかった気になって満足します。ナンセンスです。

15.秋靴をおろして歩く今日だけは踵を上げて丁寧に歩く
 普段は踵擦って歩きがちなんですけど、おろしたての靴の時だけはちょっとだけ歩き方が丁寧になります。「歩く」が2回出てきますが、これはただの重複なのかリフレインとして機能しているか分かりません。今月の歌の中では個人的に1番気に入ってます。

16.この時間この相手から鳴る電話ボタン押下にラグが出るバグ
 夜勤の日の朝に会社から鳴る電話はろくなことにならないので、出るまでに間が生まれます。ちなみに電話は「欠勤者が出たので前倒しで出勤しろ」という話です。
「ラグ」「バグ」の濁音で嫌な気持ちが出ればいいのにと思ってます。

17.青春の熱狂の渦に飲み込まれ涙を流す人を羨む
 団体競技で仲間と感動を分かち合う姿を見ると羨ましく思います。湧き出る感情に身を委ねるのは苦手です。人前なら尚更です。

18.秋涼しペダルこぐ足かろやかもリュックを背負う肩に夏あり
 文語体の短歌になりました。自転車通勤で空気が秋になったのを感じてますが、会社に着く頃には肩にリュックの汗じみができるくらいにはまだまだ夏です。

19.なしぶどう新米たちが積まれてる荷台にぎゅっと詰まった秋よ
 配送の仕事をしていると、荷物で季節を感じます。この時期は果物と新米のピークですね。初句は「果物」とせず具体的なものにすることで匂いまでイメージできればと思いました。もう少しすると柿の季節がきますね。

 以上、19首です。ここまで読んでくださりありがとうございました。お好きな短歌があれば嬉しいです。
 こうして振り返ると私は無関係の他人について詠むことはあっても、人間関係の歌はあまり詠まないみたいです。それよりも仕事中のものや季節の移ろい、自分の個人的な感情について作歌することが多いみたいです。短歌を考えてるときは気にもしてませんが、こうして並べてみると自分の嗜好が見えてきて楽しいです。
 コロナで作歌できずモチベも下がっていましたが、10月から気持ち新たに取り組んでいきたいと思いますので、もしよければまた見にきてください。今月の目標は好きな歌集を見つけることです。それでは、また。

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