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【神戸を舞台にした小説「うめももさくら」を読んで気づいたこと:母親軽視の社会】

良い小説を読んだ。「うめももさくら」。作者は石田香織さん。
神戸出身の作家が書く神戸の物語。
舞台は(おそらく)人工島ポートアイランド。
天然ボケな男と結婚して離婚して、二人の娘を愛情たっぷりに育てる「ママ」の物語。

かわいい娘たちとの生活は楽しい。
けど、貧しい暮らしは、
毒親は、
「母親はかくあるべき」という世間の押しつけは、
ママの心を疲弊させていく。

この作者は本当に物語を読ませるのがうまい。
大阪とは微妙に違う神戸の関西弁。軽妙なやり取り。ボケとツッコミ。
スイスイスイっと入ってくる。読んでてふっと笑顔になる。

しかし、ママと娘たちを取り巻く環境は確実に悪化している。
給料は上がらないし、子どもたちはどんどん成長して何かとお金がかかる。
だからママはどんどん疲弊していく。

特に印象に残ったのは、
朝のバタバタした時間に
「お母さん、頭が痛い」という娘に、
「え!?今!?」
と反射的に答えてしまい、
すぐに後悔するシーン。

すごく分かる。子供は大切。でも、余裕がない。特に朝は。。。
そう。今、この瞬間がいっぱいいっぱいなんだよなぁ。。。

余裕の有る無しに左右される愛情ってどうなの?とか、
前の日の晩に準備しておけばいいじゃない、とか、
そもそもあの時ああしておけば、とか、
「子育て」というすごろくゲームに参加してない(もしくは既にアガリの)外野連中は色々いうけどさ。

物語の最後、(おそらく)ポートライナーに乗ったまま、
娘たちに会いたい、と思うママ。
物語の最後に温かいラストが!的な書評が新聞に載ってた気がしたが、
嘘をつけ、と言いたい。
これは、現在の母親軽視の社会的な枠組みの中で、
薄氷の上を全力疾走せざるをえない全ての「ママ」の物語だ。
もっと酷い状況におかれてる人だって日本にはきっといるだろう。
幸せだって、確かに目の前にある。
だけど、同じくらい確かに苦しい現状が目の前にあって、
どこまで走ったら楽になるのか分からなくて、
それでも走るしかないから走ってる全てのママの物語だ。

読んで良かった。
何かというと「自己責任」という言葉で片付けようとする世知辛い社会の中で、
自分がやってることをやってない人が居ても、それはその人の事情があるんだ。
ない場合もあるだろうけど、ある場合もあるんだ。
そんな当たり前の事を、
大好きな神戸の物語で再度、飲み込むことができたから。
自分が社会の中で、何より自分自身の子供たちの未来のために、
やろうとしていた事を再認識できたから。

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前に読んだ「きょうの日は、さようなら」は新開地だったので、舞台が若干自宅から離れた(笑)

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