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【本のこと】『昨夜のカレー、明日のパン』

はじめに

皆さま、こんにちは。『ジーヴスの事件簿』に続き、まさかの1日2回更新になりました(笑)。夏休みって自由ですね。麦茶を飲みながらの小さな創作活動の時間は、何だか心が満たされる気がします。


思わず一気読み

さて、今回は、2022年の64冊目、木皿泉さん『昨夜のカレー、明日のパン』(河出書房新社)をご紹介します。第11回本屋大賞では2位に輝き、ドラマ化もされた人気作品です(ドラマ化のことは先ほど知りました……笑)。

まず特徴的なのが、著者の木皿泉さんという存在。和泉努さん・妻鹿年季子さんという夫婦脚本家さんで、あの「野ブタ。をプロデュース」も担当されたとのこと。本作が初めての小説だったそうなのですが、映像的な描写や生感のある会話が印象的で、世界観にすんなり入り込めて、気づいたら読み終わっていました……。

作品の軸となるのは、夫・一樹に先立たれたテツコと、一樹の父・ギフ(本名は連太郎)の2人。どこか不思議な暮らしを続ける中、なだらかに一樹の死と向き合い、人生の次の一歩を踏み出す物語だと私は感じました。

私は、本を読む際、気に入ったフレーズをノートに書き留めるようにしているのですが、この作品からは13個のフレーズが仲間入りしました。木皿泉という脚本家の力だと思うのですが、地の文であれ会話文であれ、思わず惹きつけられるような引力があって、その言葉を手元に残しておきたくなったんですよね……。

せっかくなので、私のお気に入りフレーズを3つ、ネタバレにならない範囲でご紹介しようと思います!


お気に入りフレーズ①

今、私はファスナーの先端だと思った。しっかりと閉じられているこの道は、私が開けてくれるのを待っている。

64ページ

お気に入りフレーズ②

本当は殺伐としてんだよ。みんな、それ、わかってるから、きれいに着飾ったり、御馳走食べたり、笑い合ったりする時間をつくっているのかもしれないな。無駄ってものがなかったら、人は辛くて寂しくて、やってられないのかもしれない。

151ページ

お気に入りフレーズ③

「人は変わってゆくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。でもね、でも同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ」

225ページ

最近お仕事で大きなミスをしてしまい、自分のダメさに落ち込んでいるのですが、そんな私を知っているかのように、押しつけがましさのない、ささやかな温もりを感じる表現が溢れていて、本が持つ力を強く感じました。1冊1冊との出逢いをもっと大切にしよう、とも思わせてくれた作品です。


おわりに

今回は、木皿泉さん『昨夜のカレー、明日のパン』(河出書房新社)をご紹介しました。読み終わってすぐnoteを更新したくなるくらい、「読んで良かった!」と思う作品でした。

この記事が、皆さまの日常に彩りを添えられれば嬉しく思います。それでは、良い1日をお過ごしください!

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