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涙鉛筆(ショートショート)

おかしい。泣き虫の涙子が、最近めっきり泣かなくなった。主人公の僕にとって、急なキャラ変は困ってしまう。

「もう三話は泣いてないかも。これは上で何かあったのかな」

涙子の言葉で僕はなるほどと思い、上に向かって呼びかけた。すると空からぬっと顔が現れた。

「ごめん、涙を書く時専用の鉛筆を失くしてしまったんだ」

そんな鉛筆があったのか。でも僕らの身体を描いている鉛筆と何が違うのだろう。

「こだわりでね。だからいっそ涙子は泣かない強い子にキャラ変しようかと思ってる」

僕はそれを聞いてムッとした。

「冗談じゃない!泣かない涙子は涙子じゃない!」

僕は涙子の顔を見たけど、当の本人は別に私はどっちでもといった感じ。

駄目だ、僕は認めない。だって今の涙子が僕は好きなんだから。

ハッとした。自然と涙が零れていた。これは悔し涙?

あれ?何で涙が?

「ごめん、引き出しの奥にあったよ。試しに書いてみた」

人騒がせな作者である。僕の気持ち、涙子に知られたかもな。




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