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男子宝石(ショートショート)

俺は天下の大泥棒。泥棒こそ生き甲斐だ。そんな俺は男子宝石と呼ばれる物の存在を知った。
宝石と言えば女が持つもの。それを男子が持つ宝石とはいかに。
深夜、俺はその宝石が眠ると言われる、とあるビルへとやってきた。
「見たところ、会社のビルみたいだな」
およそ宝石がありそうな気配はない。しかし深夜だというのにビルの窓からは灯りが漏れていた。それに掲げられた社名に俺は覚えがあった。
例え人が居ようと俺に盗めない物はないのだが、中で何をしているのかは気になった。
俺はダクトから侵入し、天井の通気孔からその灯りが漏れた部屋を覗き見た。
そこでは数人の男たちがパソコンに向かって仕事をしていた。
「みんな!休まず働こう!会社に人生を捧げるんだ。仕事は男にとって宝石みたいなものだ」
上司らしき男が鼓舞している。
そうか、思い出した。ここはブラック企業で有名な会社だ。
しかし仕事に人生を捧げろなんて、なんて前時代的なんだ。
あ、俺もそうだったな▪▪▪。

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