マガジンのカバー画像

これは小説です。

71
勢いで初めてみました。 短編小説を投稿していく予定です。マガジン名悩み中。
運営しているクリエイター

2020年11月の記事一覧

なにかがあったかは分からない。

なにかがあったかは分からない。

 目が覚めたとき、窓から差し込む斜光に違和感を覚えた。
 紺碧の色をしていた。斜めにスゥッと差し込むその光はステンドグラスに反射されたかのようだった。慌ててカーテンを開くと地面が青く照らされていた。人々は皆、外に出るか窓の外から景色を見ていた。
 午前7時その日ある程度の世界中の人は全員一度歩みを止めた。
その日太陽は青かった。
テレビをつけると太陽が青いことが報じられていた。ツイッターを見ると皆

もっとみる
プリンを零す。プリンを零す。

プリンを零す。プリンを零す。

掬ったプリンが滑り落ちてカーペットの床にぐしゃりと落ちてしまった。

柔らかくて、壊れやすくて、食べられるためだけに生きているというのにそれをさせることなく私の口から零れたプリンを憎らしく睨みつけた。

「チッ」

 一人でいるからつい口から汚い音がでてしまう。仕事を一日頑張ったご褒美に買ったこのプリンに対してキラキラとした瞳で見ていたのとは対照的に今は冷徹に潰れたプリンを眺める。

動くのすらも

もっとみる
人型に吊るされた青い髪①

人型に吊るされた青い髪①

 その日は月明かりが綺麗だった。スーパームーンとかパーフェクトムーンとか特段に綺麗な月明かりには名前がつく。その日の月もきっと名前のある月の日だったのだろう。

 大学生の男が深夜のバイトを終わりにうっすら肌寒くなった初秋の夜自転車をこいでいた。

 半袖だとこの夜の時間帯だと寒いな。といったようなことを考えながら無心で自転車をこいでいた。次の日が二時限目から授業があるということもあって自然と自転

もっとみる
どこか知らない部屋に閉じ込めれた件について

どこか知らない部屋に閉じ込めれた件について

 薄ピンク色の真四角の部屋に閉じ込められたときは動揺したが、数週間たった今は慣れてきている。

 薄ピンク色の真四角の部屋にはベッドとテーブルが一つと扉がついていないふきさらしのトイレと壁一面を覆うほどの大きさがあるテレビ画面、それとリモコンだけであった。

 俺はこの部屋でひたすら飯を食わされている。分かっているのはそのことと、同じように飯を食わされるために閉じ込められた人たちが他にもいるという

もっとみる