見出し画像

なにかがあったかは分からない。


 目が覚めたとき、窓から差し込む斜光に違和感を覚えた。
 紺碧の色をしていた。斜めにスゥッと差し込むその光はステンドグラスに反射されたかのようだった。慌ててカーテンを開くと地面が青く照らされていた。人々は皆、外に出るか窓の外から景色を見ていた。
 午前7時その日ある程度の世界中の人は全員一度歩みを止めた。
その日太陽は青かった。
テレビをつけると太陽が青いことが報じられていた。ツイッターを見ると皆太陽が青いことを書き込んでいた。
空に凹凸ができたかのように青空と太陽は混ざり合いながらも主張しあっていた。
太陽が眩いことは変わらなかった。目を細めるほどの青だった。
通り過ぎる雲だけがすべてを知っているように通り過ぎていく。
私は電車が通常通り運航していることを確認した後に、朝の支度をしつつも差し込む光に惹かれずにはいられなかった。
スーツを着て、扉をあけて白日の下に出る。見上げると紺碧の太陽がそこには存在していた。
今日はなにかが起こる日なのだろうか?世界でなにかが起こる事前か、事後か。どちらかは分からないけれど、会社からの通達は特にないので私は出勤していた。
しかし私が出社して一時間もするうちに本来の白い光の太陽は青い太陽を侵食していき元に戻っていった。金環日食のようだった。

その日世界ではなにかが起こったかもしれない。でもなにが起こったかは私は知ることはなかった。


サポートをしていただけると私の創作活力がかなり向上致します。これからも頑張ろうと思えます。 頂いた分は創作活動に還元していきます。