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クラブ経営の難しさ

週刊現代で「スポーツビジネスとしての日本プロバスケに、未来は本当にあるのか?」という記事がありました。大阪エヴェッサの前社長である安井さんの記事ということで読んでみました。体験談なので説得力はあります。タイトルはともかくクラブ経営の難しさは良くわかるのでなぜ?についてまとめてみます。

まず、このビジネスの商品は?アリーナで行われる試合興行となります。もう少し解像度を上げると①クラブの選手、プレーの魅力、戦力及び戦績など。②試合を盛り上げる演出、音響・照明・映像などの会場作り、チアやマスコットや会場MCなども演者として大切です。③サービス業でもあるのでファンサービスなどのホスピタリティ、飲食やグッズなどの魅力も含まれます。また、①〜③と対戦相手にもよりますが、創り出される会場の雰囲気、熱気なども加わってきます。

この商品の品質を上げようとすると選手人件費のみならず、様々な費用がかかってきます。変動性の高い①の結果を出し、②③の経営努力が身を結ぶと商品としての価値は高まります。しかし、これで終わりではありません。この価値を高めた上で、地上戦、空中戦ともに地元でのプロモーション、つまり集客活動が必要になります。

①はもちろんですが、特に②③は、クラブのフロントの力量が問われます。この力量とは、単なる頑張るだけではなく、地元のステークホルダーの皆さまとの地道な信頼関係構築も関わってきます。魂は細部に宿るではありませんが、小さなことをコツコツやり続ける根気も必要なのです。最前線で活躍するスタッフの熱量をキープするマネジメントは難易度が高く、これが出来ないと離職の多い職場になり、ノウハウが蓄積されず、フロントの力量の向上にも繋がりません。

前述したような様々な諸条件がうまく連携連動してきてようやく、入場者数が増えてチケット収入も増えていくのです。本当に難易度の高い問題を解くような作業になります。そして、盛り上がりに魅力を感じた地元の企業によるスポンサー収入や付随する関連収入も増えていくという好循環につながります。ここまでくると更なる投資が可能になり、商品価値の向上と収支のバランスのコントロールがある一定可能な状況にたどり着いたことを意味すると思います。

品質を上げることによる費用増に対して収入を上げていけるか、ここが最も難しいところです。収入を上げていくことが難しければ、品質をダウングレードさせなくてはなりません。そうなるとファン、スポンサーも減るという負のスパイラルに陥るジレンマもあります。

資金力のあるオーナーがいれば多少無理な判断ができますが、そうでないクラブだと商品の品質をどのレベルにするか、どのレベルの収入と費用で経営するか、その上で勝てるかどうか、ファンの皆さまの反応はどうか、などを苦悩しながら探っていくことになります。

思い切って選手などに対して大きな投資をしても怪我などで離脱したり、コントロールが困難な経営環境の中で事業継続しなくてはならないのが難しいところでもあります。また、収入がどうなるかわからないシーズン後半の4.5月頃に翌シーズンの費用の大きい部分であるチーム人件費(選手のみならずコーチやトレーナー)を決めなくてはいけないことです。

このくらいかかるからこのくらい稼がなくてはならない、と予算を策定しても収入か追いつかず、赤字になることも多々あります。昨今の選手人件費の高騰や円安などは更に経営を難しくしています。

弱気に費用を抑えれば、収入が追いつかず縮小均衡になることもあります。コスパの良い経営といっても限界があります。B.LEAGUEでは、毎年11月に全クラブの経営数値を公開しています。この経営数値とチームの戦績と会場の雰囲気、入場者数、売上構成において極端にスポンサー収入(オーナーからの支援額の大小)に依存しているかどうかなどが、クラブ経営力を判断する材料となります。

非常に難しいビジネスに、現在B LEAGUEではB3まで含めて54クラブがチャレンジしています。このチャレンジの成功確率を上げること、成長しながらも持続可能な経営が可能な舵取りが2026年将来構想に課せられたリーグのミッションと心得ています。ぜひ、贔屓のクラブの経営努力をご理解いただき、応援いただけると幸いです。

最後に、スポーツビジネスとしての日本プロバスケに、未来は本当にあるのか?の問いに、イエス。未来は創るものです。


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