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わたしの本棚44夜~「その細き道」

高樹のぶ子さんの自伝的小説でもあり、デビュー作です。芥川賞受賞作「光抱く友よ」や「透光の樹」もよかったですが、彼女の小説のなかでは一番好きです。昔、オレンジルーム(大阪の梅田阪急百貨店にあったイベント施設)で、彼女の講演を聞いたことがあります。夫の友達と家を出てしまい、まだ小さい子どもを置いてきた、とのことで、今でも子どものことは思い出すとの話でした。人は誰かに誠実に生きようとすると、別の人を傷つけてしまうものだ、と語られていたのが印象的でした。

☆「その細き道」高樹のぶ子著 文藝春秋文庫 408円+税

 山口県から東京の短大へ出てきた主人公加世が県人会で出会った同郷の坪田と恋をします。真面目な彼は、司法試験に合格するまでは彼女を妹としてみていると、とても彼女を大切にします。彼の高校の後輩の阿部は、坪田も加世も慕ってくれており、3人で過ごすうちに、いつしか、加世と阿部が魅かれ合ってしまいます。夏目漱石の「こころ」の女性版ともいえる展開であり、著者の体験が反映されているだけあって、青春の初々しさと爽やかさと残酷さがリアルに描かれています。

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