ちまちマジック☆
対戦カードが決定した瞬間から、撮影班は困惑を隠せなかった。
現代に生きる魔法使いたちのリアルファイト。それがこの配信のウリになるはずだったのだ。
試合場の廃倉庫に集まった魔法使い30人のうち、確かに大半は予想通りの魔法使いだった。火球を撃ちだし、雷撃を落とし、竜に変身し、悪魔を召喚する……
しかし、この2人は違った。
「では次の試合。まずは“渇きの”千田」
リングも何もない、殺風景な廃倉庫に入ってきた“渇き”と呼ばれる男。得意呪文は“脱水”。洗濯物を一瞬で乾かせる、そんなちまちました呪文だが、人体に使うとなると凶悪だ。何せ一瞬で人体が干からびるのだ。派手な演出も破壊音もなく、“渇き”は対戦相手の火球より早く、人間の干物を生み出せた。
「続いて“潔癖症”マリー」
入ってきたのは白衣を着た女。その名の通り、恐らく本当に潔癖症なのだろう。しかし彼女も、撮影班曰く「ちまちました呪文」で人を殺害する魔法使いだった。
【続く】