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狂気の塾講師バイトでドラゴン桜して、夏季講習をアリーナ講演"にした話 〜ジョブ理論ってわかりやすく理解できるお話〜


こんにちわ。前回、豚骨ラーメン屋でスープを捨ててしまったバイトの話をしたら、
狂気の塾講師バイトの話も聞きたいという声が予想外にチラホラ出てきたので、ついでに書きます(笑)

時は就活生だった私、無事就活終えて、オンワード樫山というアパレル会社に内定は決まり、
残り一年遊びまくるか!なんて思っていた、相変わらずふざけた大学生だった頃の話です。

就活でバイトを結構減らして、ゴールドマンサックスのアシスタントのアルバイトをしていたのですが、
週に1回くらいしか入ってないので、ちょっと遊ぶお金が足りない。
(*ゴールドマンのバイトは時給は良かったのですが、学生にはプレッシャーが凄いのであまり入れられなかった)

これまでにやってきたバイトと言えば、
カフェ店員、朝日新聞社の選挙速報のバイト、ゴールドマンサックス、ラーメン屋(笑)だったのですが、
大学生のバイトの定番、「家庭教師or塾講師」をやってみよう!と思ったのです。

で、私がバイトを始めたのが、実家近くの高校受験をする中学生向けの小さな進学塾。

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たぶん脱サラして始めたんだろう中年の校長と、事務のおばさま以外は
全員講師は、大学生という進学塾でした。
一応エリート大学生講師というのが売りだったようで、私以外の先生はみんな偏差値高そうな真面目な見た目で、
授業はスーツ。私は髪の毛は茶髪で、着崩したビジネスカジュアル(=テレビに出てた頃の橋下徹みたいな見た目w)で、
「あーこいつはアホそうだな」と思われたのか、一番成績が悪いクラスの英語を担当することになったのです。

私からすると、「バカにするんじゃないよ、今はこんなになってしまったが、小学六年生の時は日能研でわりと神童の一人だったんだ!世も世もなら俺が一番偏差値が高いはずだ」という中高一貫進学校入学後、堕落&転落した奴が何を言ってんだって話ですが、意欲満々でした。

さて、いざ授業です。
成績が一番下だけあって、
・すぐ集中力が欠如してふざける
・普通に教えても理解が遅い
・そもそも勉強が好きじゃない

という三重苦を抱えていました。

そこで私は考えて出した授業改革案は下記です。
(1) 英語の例文をヒップホップ&下ネタにする
(2) 授業をライブ化にして、コール&レスポンスを重要視する
(3) 校長という共通敵を作る

です。一個一個説明しましょう

(1) 英語の例文をヒップホップ&下ネタにする

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なぜ英語の授業がつまらないのか、それは「特に使う意義が見えない」とか「難しい」からです。
であれば、「使いたい」「覚えたい」というものを教えると自然と英語が入ってくるのではないか、そう考えました。

よくある「How are you?」「I'm fine. Thank you, and you?」みたいの
覚えろと教わったと思うのですが、学生からすると
「ご機嫌様」みたいな感じに聞こえますよね?
だから私はリアルを求めて、上記のような例文は教えつつ、
「アメリカの黒人だとあんまりこういう言い方しなくてさー
「Hey yo men, whassup?」ってハイタッチとかするのよ、それをHigh 5っていうの
とか教え始めました(笑)

そして例文がつまらないので、教科書の例文を捨てて
・主語を生徒の名前に変える。
・中学生が大好きな色恋や下ネタに例文を変える
・そこに「外国人の女の子に告白する時のフレーズ」とか実用的な要素を入れる
といった取り組みを行い、まず話す~慣れる〜そして文法構造を理解するというアプローチを取り入れました。
さらに中学生あるあるですが、他の女子の先生と私が付き合っているという謎のスキャンダルが駆け巡り、
その女子の先生が授業中にプリントを私に持ってきてくれただけで、生徒がニヤニヤするという事態になりました。
全く根も葉もない噂のですが、せっかくで面白いのでそれを利用し、それで例文を作り、その女子の先生に風評被害をもたらしましたが、生徒はたくさん例文を覚えてくれました(笑)

こういうのは、まず感情的にすっと入ってこないで、文法の暗記はダメです。
これで勉強する体制ができました。


(2) 授業をライブ化にして、コール&レスポンスを重要視する

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これまでの先生の授業は、優等生的で一方的に教えるスタイル。
しかし私は、それで学べるのであればこの子達は、最低クラスにいないはずだと考え、
よりフィジカルかつインタラクティブな体験重視を試みました。
とにかくエネルギーがありあまってる思春期の子達。
「●●君、教科書の12ページの文章を読んで」では全然ダメです。
私は
「●●君、教科書の12ページの文章をキレた感じで、超大声で読んで」
です。

そして授業はライブです。一方的に教えるのではなく、生徒にどんどんお題を振ります。
例えば「おい、●●、今教えたフレーズで、隣の●●を口説くとしたらどうなる?」っていう謎のお題フリをしまくる。
そうやって応用力をつけさせる。

さらに、テストに出るから覚えなきゃいけないフレーズや文法は、もう大声でみんなでシャウトです。
「ここはテストで出るぞ!だから、コール&レスポンス!俺がSay"(テストに出る文節)"って言ったら
お前らみんな繰り返すんだぞ!」
ってラッパーのSay Hoってスタイルで中学生相手に大声で覚えさせました。
もうみんなライブに参加している感覚で英語学習がどんどん進むのです。

(3) 校長という共通敵を作る

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そんな矢先、私のクラスがカルト的な授業をやっているという噂が広がり、校長や隣の教室の先生からクレームが入り始めました。
授業は一コマ60分なのですが、休憩なしがルールなのですが、私が途中トイレ休憩などを設けていたのも気に食わなかった様です。しかし仕方ないのです、私の授業は生徒ひとりひとりが自分の頭で女の子を口説く応用文を一生懸命考え、コール&レスポンスで大声でシャウトするので体力消耗度が高いからです。

ついにそういう授業は辞めてください!という都知事に怒られるグローバルダイニングの社長みたいな状況になってしまいました。
しかし私は「進学塾は道徳を教えるところではなく、成績をあげるところです。父兄は子供たちが合格できるよう成績をあげる成果にお金を払っており、60分という時間にお金を払っているわけじゃない!」とつっぱねました。

そして生徒たちに「校長に怒られた。お前らが成績をあげて、あいつを見返せば、この授業を続けられる。でないともう終わりだ!」という麻原彰晃もびっくりの終末思想を説き、みんなで「あのクソじじいを見返すぞ!」と盛り上げたのです。

そして夏休み。
夏季講習があり、普段受講してない学生も参加できるのですが、
私のクラスは他の先生の四倍くらいある教室で、それもパンパン。
まさに塾講師のアリーナ公演状態です。

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びっくりして生徒に聞いたら
「なんかここの塾に、めっちゃおもろい先生がいるってウチの中学で話題で受けにきました!」
とのこと。
このちっぽけな進学塾にとって、道徳的にはありがたくない私が、経営的に有難い存在となり校長も何も言わなくなりました(笑)

こういう授業は私が就職するまで続いたのですが、
とても楽しく、時に向いてるのではないかと思いました。
もしかしたら、あのまま「下品な林修」になってたかもしれません(違)

トータルで私が大事にしていたのは、
学生時代の成績の良し悪しは、頭の良し悪しではなく、
勉強の仕方をすっと馴染んでるかどうかだと思うのです。
当時の学校教育は楽しく学ぶことを否定する風潮もあったし、
それをおふざけのように見ていたから、学生は学びがつまらないんだと思います。
進学塾においては、成績を伸ばすことはお金に対する対価として重要であり、
勉強の仕方もわからない子たちには「まず学びに向かえる状況やマインドセットを作る」ことが
私の課題設定でした。
なので、こういった授業をしたのですが、今でも正しかったと思っています
(教え子たちの、その後の貞操観念などは心配ですが)

最後に、一人すごく学習の進みの遅い子がいて
いつも授業終わりに15〜20分くらいその子だけ追加で個別で教えてました。
もちろん時給の対象外でしたら、なんか絶対に脱落してほしくなくて。
どうやら親御さんはあまり教育に熱心でなかったようですが、成績が悪すぎて行かせた様で
最初は本人も勉強に明らかに乗り気ではありませんでした。若干、やばい家の子的な。
結局、彼は塾をやめてしまうのですが、最後の日に私のところにやってきて
「先生、本当にありがとうございました」ってちゃんとお礼を言いにきたのです。

きっと不器用で学校や家庭でもアイデンティティーを感じられなかった彼の人生において
「自分も学べる、成長できる」といったほんの、きっかけかもしれませんが、
前向きになれたのなら、本当にやりがいのある仕事だったと思います。内容は下品だったけど(笑)


今日のBGM :Billy / 6IX9INE

当時の授業はノリはこんな感じ(笑)←ここまでひどくないけど

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