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加速

齢25を越え、四半世紀を生きた、蒸し暑い曇天、サーカスの興行を噂に聞く、わたしはペダルを思い切り踏む、夜を切り裂いて駆けて、醜い心根をどうにか叩き潰し捻じ切り踏み付けてぐちゃぐちゃに殺して、声ひとつ、言葉のひとつで震える細胞、焼け付くほどに強烈に唯愛おしく、怯え、子供のように泣けば子がそうされるようにあやされ、わたしが喪いたくないと哭く程にあなたもそうであったらいい、そうであれと言葉尻ひとつ指先のなぞるひとつにまじないの様に仕込んで、わたしはようやく大人になれましたか、人間に成れそうですか、なァ人形よ、綺麗事だけでは到底有難い、言葉、手のひら、感情、なみだ、細胞、痣、それらを飲み込んでにへらと笑むことだけが愛などと思うはずもない、わかっている、それでも熱のように浮かされそして凪、人生が、人成が加速する、嗚呼どうせわたしも人間でありました。人間になりたいと願い人間などはでいたくないと嘆き左手首に刃を立てそれでも終い、人間の性を辿り居ります。人に出会い生きることに縋りそうしてヒトとなる、生き死に、人生が自棄に自我を以て加速する、手首に線を引いた己が問う、ええ、わたし、死にませんとは未だ声高に言い切れず相も変わらずぐずぐずと命を嘗めるばかりです、人をなぞり生きていくことは酷く、酷く怖いばかりそれでも、それでも死ぬことだけに縋るのはやめにします、これをきっと幸と、言うのでしょうね。春の終わり、狂った自律神経を持て余しそれでも、じんせいは加速した。

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眠れない夜に

ほろ酔い文学

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