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10月の遺書

帰省も最後にするはずだった。仏壇に長く手を合わせた、御先祖様皆様、わたしのような出来損ないが生まれてごめんなさい。○○の家の血筋にどうしようもない汚点をきざんでごめんなさい、せめてこれで終わらせますので、自ら死にますので、これでどうか、どうか、もう赦して下さい。父母残された家族を頼みます、貴方様の場所に逝けるなんて到底思いません、天国へも地獄へもわたしは逝きとうございません、だけどせめて、ただひとつだけ、この世を知らずに産まれた、死産の弟にだけ逢いたいのです、この期に及んでわたしは「おねえちゃん」ぶって、あの子の顔を一目だけ見たいのです、おねえちゃんだよ、おまえのおかげでこんな歳までしぬのをためらってしまいました、どうか御前が、彼処で不自由なく暮らしていますよう。それがわかればわたしはすぐにでもきえたっていい、いっさいがただ残らないように消えてしまいたい。死ぬことをずっと考えていました。生半可に首を吊っても死ねませんでした。首を括っても死ねないことがひどくつらく、くるしく、ならば生きをしなければならないかとどうにか薬で取り繕ってみたところで、鮮明になるのは己の、おのれの無惨なまでの体裁、当たり前のことが酷く難しい、当たり前のことひとつとっても満足にできない、よくこれで社会人なんて悠々名乗れますこと!!!やはり死ぬべきだ、こんな生きていていいはずがない、アルコールだけが脳みそを麻痺させてくれる、のに、殺してはくれないわたしはだらだらと、へらへらと、いまだ生き長らえている、いま車道に飛び出せば、この窓から身を乗り出せば、ホームに飛び込めば、輪に首を通せば、そんな、当たり前のことすら出来ない、死ぬことも満足にできないのか、わたしはひたすらに絶望している、絶望、絶望、絶望、すこしの嫌悪と、あとは絶望。結婚も妊娠も聞きたくありません、そんなハッピーなお前たちの中にわたしはいない、当然のなかにわたしはいない、わたしは、わたしはだれで、どうやって死んで早くしんでこんな卑しい自分ごと散々に痛めつけて消えてしまえばいいのに!、おれはユッコにはなれない。おれは山田花子にはなれない、確かなものを遺して死んで行ったあなたのようにはなれない、ならば、何も残せないのならば、尚更早く生を断つべきではないのか、この期に及んでなにが未練が、未練などいだける立場か、飛び降りれもしないただの弱さの塊では無いのか。10月が終わった。わたしはまだ生きている。期限と決めた10月がおわって、霜月になって、わたしはのうのうとまだ生きている。まともに生きても普通になれないなら、死ぬか、いっそ廃人になりたい。○○の家のひとりでは、もう、いたくないんです、だって死体を親が見るのはあんまりにも、あんまりにもかわいそうだ。死ねないわたしを許さないでください。酷い言葉をかけてください。もう死なないといけないんです、わかっているんです、どうかあたらしい年を迎える前に。期限はもうない、これ以上の情はいらない。ただおわりにしてほしい、ころしてほしい、おのれを。ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい、のうのうと生きていてごめんなさい。いっさいを許さないでほしい。生れて、すみません。

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