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【曲紹介】半径500メートルの幸せ。「荒川リバーサイドガール」にこめた足立区の愛すべき風景。

2022年5月26日より配信開始したいろどりの杜Residentsの曲「荒川リバーサイドガール(featuring まことば)」にFi'Neさん、Hiddieさんとの共作詞・作曲にて楽曲提供をさせていただいています。

東京都足立区の綾瀬と北綾瀬の間くらいにある、「いろどりの杜」という団地の方々がボーカルやアート、MV作成などを担当し、みんなで制作した曲です。

コーライト(複数人での作詞・作曲)のため全員の総意ではないところは最初に申し上げつつも、自分が「まちづくり系作詞・作曲家」と名乗っているところとこの曲の内容がリンクするところも多く、楽曲ができた背景を解説したいと思いました。

配信サイトへのリンク
https://linkco.re/uvgEsZha

東京の東側の曲が少なすぎる問題

ここ数年、いわゆる「地域系のプロジェクトの仕事」というのを作詞・作曲と並行してやっていたり、「地域音楽コーディネーター」という資格を取ったり、地域における音楽を考える機会が多いんですが、その中で「ご当地ソング」の重要性を感じています。

だいぶ前になりますが、「東京」について研究する人が多かった大学院の同窓会、なぜかカラオケのテーマは「東京にまつわる曲」しばりでした。アン・ルイスさんの「六本木心中」や椎名林檎さんの「丸の内サディスティック」を歌いながら、いや待てよ、「ああ上野駅」とか昔々の曲を除いて、東京の東側を歌った曲、少なくないか?と思ったわけですよ。

青春時代は奇しくも渋谷系ミュージック全盛、自分も渋谷タワーレコードやHMV(もうない)に通い詰め、今でも「神泉系」を名乗る「フレンズ」というバンドが大好きだったり。カレーが美味しい下北沢や高円寺には定期的に通うし、東京の西側は大好きです。もう、嫉妬するくらい。

でも、東京東側の音楽が欲しい。作りたい。

東京東側の人間にとっては、それがちょっとだけ音楽やってる上での引け目でもあるんです。今回、東京の街を題材にした曲を集めたSpotifyプレイリスト「Songs of Tokyo」を作ってみると、配信全盛の現代には結構ノスタルジーだけでない、現在進行形の東京東側の曲もあるもんだなあ、と思いました。Creepy Nutsの「のびしろ」なんて勝鬨橋とか出てくるしね。

とはいえ、やはり歌になる街は西高東低。まあ仕方ない。音楽やっている人は西側に住みがちだもの。

足立区っぽい原風景=荒川の河岸、から始まった

↓歌詞はこちら。

元々は団地の皆さんが足立区のCM動画コンテスト「あだワングランプリ」に動画を応募するというので、そのために曲を書くという話から始まりました。
この曲は完全にタイトル先行です。足立区の原風景となる、来たくなる風景ってなんだろう?と考えたときにまず荒川が浮かんだのです。金八先生の舞台も千住だったので荒川が出てきましたよね。

川というのは文化の境界線の象徴でもあります。でもなぜか足立区というのは不思議で、荒川が自治体の境界線にはなっていない。だったら、川の向こうとこちらの男女が出会うことによって足立区の中でお互いの世界が広がるってテーマが良さそうだなと考えました。

荒川リバーサイドガール。足立区在住(北千住エリア)。自分の街は好きだけど川の向こうにはあまり行かない。

荒川土手の風景。千住大橋を3往復くらいして歌詞を考えた。

だけど好きな人ができた時、その人のエリアに行って、その人の好きなものを見て、友達に会って、という体験が楽しいと人生が2倍も3倍も豊かになる。

そんな体験をここでは男性ヴォーカルにしたかったので逆の立場で、好きな人を自分のエリアに迎えて、自分が好きなものを見てもらって、友達にも会ってもらって、という体験をしてもらうことで関係性が深まる様子を描こう!と思って作りました。

そんなストーリーを理解していただいて団地の皆さんが作ったMVはこちら。ショートバージョンなのでリリースされているものからはぎゅっと圧縮してありますが、まさに歌の世界観そのままにMVができています。出演者も撮影・編集も全て団地の皆さん!撮影は団地「いろどりの杜」、千住大橋、北千住駅付近でオール足立区ロケです。

どうしても「荒川リバーサイド」というのが足立区よりも荒川区を想定させてしまったのか、残念ながら受賞はならなかったのですが、(やっぱり外の人にはそういう誤解をしている人が多いみたい・・・)実は荒川区には荒川はないんですよね。足立区こそが荒川土手のみんなが想像する風景だ、ということももっと知ってもらわないとなーなどと思ってしまいました。

半径500mの幸せってなんだろう

(あなたのこと何も知らないけど)
だから連れ出したんだ
僕の半径500mの
幸せ一緒に感じよう
Neighborhood is wonderland

「荒川リバーサイドガール」歌詞より

半径500mの幸せ。

幸せには人の数だけ定義があるけれど、自分がどんな街にいて幸せを感じられるか、といったら「徒歩圏内に楽しい場所がいっぱいある街」。東京ってほぼ全ての駅がそんな感じで何度外に旅をしても東京が最高だなって思う瞬間。

えいって思い切って遊びに行かないと楽しいものがあるわけではなく、仕事の行き帰り、日々の移動で近所が楽しくて、日々変わり続ける様子を楽しめるってのは「嬉しい」「楽しい」ではなくて、「幸せ」だったりするんです。

ヨーロッパでは20年くらい前から本格的に徒歩圏内を楽しくする街づくりが掲げられてきましたが、フランスのパリでは2024年までに誰もが徒歩・自転車で15分以内で仕事、学校、買い物、公園、そしてあらゆる街の機能にアクセスできる都市を目指すという宣言をして以来、広い意味で徒歩圏に暮らしが詰まっているまちづくりに向かう都市が増えています。

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そんな自分が大切にしている「まちづくり」の要素も少し歌の中に入れてみました。正直500mだと徒歩6分くらいだからちょっと少ない気はするんだけど。

歌の舞台になった場所に行きたくなる歌を

ゆずの「夏色」という名曲があります。シンプルに青春の甘酸っぱさを感じる曲としてもいい曲だけど、ゆずは地元の坂の多い横浜の風景を切り取っていて、横浜で育った自分にはその風景が目に浮かびます。水森かおりさんのように全国の有名な観光地を全部歌にするのも素敵だけど、土地の人が毎日を過ごす何気ない風景に地域性が見え隠れするってのがちょうどいい。

歌の主人公は常に人だし街は背景でしかありません。でもその背景によって物語は大きく変わる。私が詞を書いている曲は全ての曲に舞台の街があります。たとえそれがハッキリとは書かれていなくても、どこでもいいような歌詞であっても。舞台となる街の景色が反映されているものでありたいのです。

これからもそのポリシーは守りつつ、いつかもっと多くの人の心に届く曲が書けたら、そう願って曲を作り続けています。

「荒川リバーサイドガール」リリースノート

タイトル: 荒川リバーサイドガール (featuring まことば)
アーティスト:いろどりの杜Residents、まことば
作詞・作曲:Fi'Ne/Hiddie/Yuqui-lah
編曲:Fi'Ne
Vocal:まことば
Guitar & Bass:Hiddie
Chorus:まことば/kumakumakenken/つじまりな/Yuqui-lah
プロデューサー: kumakumakenken/Fi'Ne/Yuqui-lah 
アートワーク: kumakumakenken/makotart.d.esign 
レーベル:Danchi Music Records
リリース日:2022年5月26日(木)
販売方法:各種配信サイトにて配信(ダウンロード・ストリーミング)
https://linkco.re/uvgEsZha


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