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「ニート」の理解を深める。

ニートの定義

NEET(ニート)とは「Not in Education, Employment or Training」の略。
もともとはイギリスで使われるようになった言葉で、「通勤、通学、職業訓練のいずれもしていない人」を指します。

厚生労働省では「労働力調査における、15~34歳で、非労働力人口のうち家事も通学もしていない人」と定義しており、2019年時点では74万人(前年比で3万人増)います。

ちなみに、日本では15歳から34歳までとなっていますが、イギリスでは13歳から19歳まで、OECDでは15歳から29歳までとなっており、括りにする年齢がそれぞれ異なります。

ひきこもり、フリーターとのちがい

よく混同される概念として「ひきこもり」と「フリーター」があります。

フリーターとのちがいは、「働いているかどうか」。
働いていればフリーター、働いていなければニートになります。

ひきこもりとのちがいは、「社会的な組織(学校や仕事など)に属しているかどうか」。
属していればニート、属していなければひきこもりとなります。

ニートの実態

実態について、「ニートの状態にある若者を対象とした調査」(財団法人 社会経済生産性本部)から抜粋してまとめてみます。

・進学率は、同世代の水準からみて特に低いわけではないが、高校、大学・短大、専門学校の各段階での中退者を合計すると3割を超える。
・37.1%が不登校を経験している。
・これまでの雇用形態は「アルバイト」であることが多く、熟練を要しない就労が目立つ。
・全体の半数弱がひきこもり(49.5%)、「精神科または心療内科で治療を受けた」 (49.5%)経験をもつ。
・「人に話すのが不得意」は64.4%にのぼり、対面コミュニケーションの苦手意識が見受けられる。
・80%前後がニートの状態であることを「うしろめたい」「世間体が悪い」と感じ、精神的負担となっている。

中退者がなりやすいこと、就労経験ではアルバイトが多いこと、半数はひきこもりの経験があること、8割がニートの状態をうしろめたいと思っていること…。
実態とともに要因が見えてくるようです。

ニートが生まれた背景

「ニート」がイギリスではじめて登場したのは1998年のことで、ブレア政権によって新設された社会的排除防止局(Social Exclusion Unit)の調査報告書の中で使われています。
このころのイギリスでは、16歳~18歳で学校に通わず仕事にも就かない、という若者が多くいました。

その後、日本で使われるようになったのは2003年頃から。
ちょうど若者の失業率がピークに達した時期と重なります。
というのも、15~19歳の失業率は、1990年の6.6%から2000年は12.1%へと2倍近くになり、ピークの2002年には12.8%という割合でした。10人に1人以上が失業、という状況。
20~24歳についても、1990年の3.7%から2000年には8.6%、ピークの2003年には9.8%へと上昇しています。
さらにこの時期の求人数(新規高卒者)を見てみると、1990年に134.3万人あったものが2000年には27.2万人にまで激減しています。

当時、日本の景気が後退しつづけていた中で、企業は正社員の新規採用を抑え、その代わり非正規社員を多く採用する、という対策をとっていました。
実際、1982年には52万人とされていたフリーターの数は、1992年に101万に、その後の10年でさらに100万人も増加し、2002年には209 万人となっています。(その後は徐々に減り、直近の2019年では138万人でした)

ニートになった要因

社会学者の豊泉周治氏は、日本のニートについて、
「あたかも失業が失業者個人の就業意欲の問題であるかのように語られ、90年代以降の「労働政策の課題」は問われず、若者の「働く意欲」という”自己責任”だけが残される」
と指摘しています。

また、日本総研の齊木大氏は、ニートになった要因について、
「(フリーターの就業経験を持つ)ニートは、フリーターから正社員へ転ずることが非常に困難な現状がある。フリーターが日常の業務を通して習得できる職業スキルは少なく、中途採用においてフリーター経験が有利に働くことはほとんどない。正社員になりたいという希望は強いにも関わらず、それが困難であることに気づき、自信や意欲を喪失してしまい、ニートになったといえる」と述べ、フリーターから正社員に転ずることの困難さという構造的課題を説いています。

よく「働く気がない」と表されるニートですが、求職活動をしない理由を尋ねた調査によると、「病気・けがのため」が圧倒的に多くなっています。
(この「病気」のうち、先の投稿で示したように、無理のある働き方や反道徳的な職場環境などが原因のケースもあろうことは、想像に難くないです)
15~19歳では「学校以外で進学や資格取得などの勉強をしている」がつづき、20~34歳では「知識・能力に自信がない」が次点となっています。

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就業希望の若年無業者が求職活動をしない理由(平成29年度)
日本は企業の中で人材を育成する文化がありますが、非正規雇用は対象とされず、20~34歳の層で2番目に多かった「能力や自信」を得る機会は失われがちです。

本人のみに要因を帰するのではなく、労働政策のあり方、雇用のあり方、職業教育のあり方など、社会的な回避を試みることは不可欠ではないでしょうか。

ちなみに、25歳を起点にし、生活保護を受けつづけた場合と勤労した場合のコストのギャップは、約1億5000万円と試算されています。
一人一人が自立した働き手になることは、社会にとっても健全さを担保することになります。

そして、101カレッジ。

ニートの状態にある若者は、世界的に見ても増加傾向にあるようです。
ILO(国際労働機関)のレポートによると、2015年には21.7%であったものが、2020年には22.4%へ上昇すると見られています。

国内外でニートが増えている、またこれから増えていく中、職業体験校である101カレッジの役目は大きいと感じています。
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(トップの写真は、カレッジのある亀浦から臨む朝日です。)

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