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虹、世界のシステム

 娘と車で帰省するようになってからは、いつも夜明け前に家を出てちょうど昼頃実家に着くよう段取りしている。
 道中はずっと、車内で娘が好きなサザンオールスターズの曲をシャッフル再生する。サザンは自分も中学生の頃によく聴いていたから、帰省の道中で聴くと何となく不思議な気分になれる。

 独身の頃は渋滞に捕まるのがとにかく嫌だったから、夜中に出発して朝方実家に着くようにしていた。
 途中、真夜中のサービスエリアでうどんなどを食うのが非日常な感じで良かったのだけれど、同時に、果たして自分の人生はこれでいいんだろうかというような心持ちにもなって、いつも何だかどんよりした。夜中に一人で運転していると、そういうモードになる時間が必ずある。

 何の都合だったかもう忘れたけれど、ある時、夜が明けてから出発したことがあった。
 案の定渋滞に巻き込まれ、おまけに和気辺りの山中で雨まで降り出した。洗車したばかりだったから大いに気分が悪かったが、そのうちに雨は止んで虹が出た。
 随分見事な虹だった。
 虹はなかなか消えず、走っていくうちに根本へ行き着いた。
 虹の根本はボディビルダーが支えていた。

 ビルダーは二人いた。一人は虹を抱え、もう一人は何もせずに立っている。どうやら、何かあった時の交代要員らしい。
 誰が考えたのか知らないけれど、ちゃんとシステムができあがっているようなので大変感心した。

 このことを名古屋に戻ってから小川君に教えてやったら、よっぽど気に入ったらしく、随分後まで「ボディビルダーが支えている」と云っては笑っていた。

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