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猫とロボット掃除機

 祖父の家にはゴンという白猫がいた。自分が生まれる前からいたらしい。
 ずっと外にいて家に入れることはなかったけれど、庭で休み、腹が減ると勝手口でニャァと云って祖母から餌をもらっていたから一応飼い猫だったのだろう——猫のこういう飼い方はあの時分には別段珍しくなかった——。

 何だか気性の荒いやつだと聞いていたからあんまり手を出さないようにしていたが、機嫌を見ながら喉を撫でてやったことは何度かある。喉を伸ばしきたので、きっと気持ち良かったのだと思う。

 一度塀の上から、棒きれに紐でゴム鞠を付けたのをゴンの前に垂らして遊んだのを覚えている。揺らしてやると跳びついた。通りかかったおばさんが「釣れる?」と訊いてきたから、いいえと答えた。

 自分が小学校に上がった年に、祖父は家を建て替えた。それまでの古い日本家屋から一転してモダンな建物になった。
 建て替え中、祖父母はきっと田舎の方へ行っていたのだろうけれど、ゴンはどうしていたのかわからない。上述したような飼い方だったからわざわざ連れて行ったとも思えない。
 それでも新しい家でもきちんと勝手口へ来るようになったから不思議だ。

 家が新しくなって三年ぐらいでゴンは姿を消した。ゴンの次にはハナ(鼻だけ黒かった)という猫を飼った。

 祖父は昔から猫を飼っていて、三平という猫の話は子供の頃に母からよく聞いた。珍しい三毛猫の雄で、頭がよく、近隣の猫のボスだったそうだ。

 先日帰省したら、実家にロボット掃除機が導入されていた。
 母はこの掃除機を三平と名付けていて、娘は面白がってついて回り、「三平があんな下の方まで入っていった」「三平がここの隅っこをちゃんと掃除してない」とか報告した。
 三平はひとしきり掃除をしたら充電器に帰った。

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