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審判の日(2023/03/30)

 うっかり二度寝をしてしまい、少々焦りながら支度をして家を出た。
 出社するとネルソン氏が「百さん、落ち着いたらちょっと打ち合わせをしたいのだが」と云う。次年度の売上計画について話したいらしい。あんまりそういう話は好きじゃないから今度にしてくれたまえと言ったが、聞かないからしぶしぶ応じることにした。

 本題に入る前にネルソン氏は「君、あの隠し玉は結局どうだったね?」と訊いてきた。
 あれはやっぱり畜山生太郎(ちくやま・しょうたろう)の暴走だったと伝えると、眉をひそめて「百さん、いよいよ畜山もやばいよ、終わりだよ」と云った。

「やばいってどうやばいのだね?」
「明日、社長と人事と畜山の三者面談をやるらしいのだよ」
「ほぉ?」
「そこで処分を言い渡すらしい」
「処分とは?」
「さぁ?」
「どうせちょっと給料が減るぐらいのことだろう」
「それぁ、クビまでは切れないだろう」
「それのどこが終わりなんだ」
「う」
「そんな生殺しみたいな中途半端なことをするから、周りがますますやりにくくなるのだよ。なにしろ逆恨みして不貞腐れるのだからね。全体、それで何かが良くなると本気で思っているのかね。処分までもが自己満足じゃぁないか」
「そうだねぇ」

 打ち合わせの後で月締めの準備をしていると、どうも畜山から引き継いだ先におかしな点があるのに気付いた。調べてみたらやはり彼が独断で進めた話の残骸だった。これも報告しなければならない。
 めんどくさ…、と思った。

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