夕空とUFO
幼稚園に行っていた頃のこと。
ある夕方、家の前で遊んでいたら、小佐田君が不意に空を指して「あれ、何じゃろ?」と言った。
見ると、西の山の上に細長い物が浮いている。
「何じゃろうねぇ?」
「UFOかも知れん」
そうして暫く眺めた後、小佐田君は「……わし、もう帰るわ」と、走って帰った。
自分も怖くなって家に入った。
五時になると「良い子はお家へ帰りましょう」と放送が流れるのだけれど、それより前に帰ったものだから、母が意外そうな顔をした。
「小佐田君は帰ったの? ケンカでもしたの?」
「UFOがおる」と言ったら、半笑いで「えぇ?」と訊き返して来た。
それで一緒にベランダに出て空を見ると、果たしてそれはまだ同じところにあった。
「あれ」
「どれ?」
「あそこの長細いやつ」
「ただの雲じゃない?」
「雲?」
何だか、雲ではあってほしくない気がした。
翌日幼稚園へ行くと、数人の級友が、昨日UFOを見たと興奮していた。
そのうちの一人が「百君も昨日UFO見た?」と言ってきた。
「おぉ、見た見た! あっちの山の方に長細いのが飛んどった」
すると一人が、「わしが見たんは、ホットケーキみたいな丸いのが、クルクル回りながらヒョットコ山の向こう側に飛んで行ったんよ」と語った。
ヒョットコ山は、町内の小さな丘で、幼稚園の向かいにある。その向こう側にはマツダの社宅などもあったから、そんなところへUFOが現れたのなら、きっと大変な騒ぎになったろうと思う。
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