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万年筆、手跡、教師

 仕事で10年ぐらい愛用している万年筆の、書き味が近頃変わったように感じる。
 何だかざらっとする。紙との相性とか、自分の気のせいかも知れないが、60年前の骨董品だからそろそろ悪くなっても不思議はない。
 だから同じ物をもう1本予備に持っておくつもりで、ヤフオクで何本か見繕った。メルカリはあんまり好きじゃないから使わない。

 職場で、ペン先があんまり大きくてギラギラしているのを使うと、陰で『小説家』とか『調印式』とか云われそうで具合が悪い。
 その点、昔の物は見た目がこじんまりしていて使いやすい。だからこの用途では新品よりも中古品がいい。

 目星を付けた内の1本を存外安く落札できた。
 ただし、全く同じ製品ではない。これまで使っていた物の後継モデルらしい。
 随分癖が違って書き慣れないけれど、別段、きれいな字を書く訳でもないから気にすることはない。

 元来、字は下手くそで、小3の時には書写の授業で書いた「三」を担任に笑われた。何も教えずに書かせておいてクラス中に晒して笑うのだから、あれはきっと碌な者ではない。もう死んだろうと思う。
 それで、宿題に出された「光」は手本をなぞって書いておいた。
 すると後日、全員の「光」が壁に貼られて、自分のが突出して上手かったものだから、なぞったのがバレバレで随分決まりの悪い思いをした。


よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。