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口論シミュレーション(2023/04/13)

 ミサイルが飛んでくるから緊急避難しなさいという物騒なアラートが8時前に来ていたが、自分が気付いたのは14時過ぎだった。本当に飛んできたら知らずに死んでいたかも知らん。また、気付いたとしても5分の間に身の安全を確保できる気がしない。何しろ物騒なことだ。

 出社するなり管理部のフグ田さんが「百さん、これ」と書類を持ってやって来た。見ると先日クレーム処理で自分が使った数百円の精算書である。

「これが何か?」
「毎回こういうお金が発生するんですか?」
「今回はイレギュラーだよ。元々はお客さん側の問題だったのだけれど、対応でこっちのミスがあったのだからね」
 そう言って一通り説明したら、そうですかと云ってフグ田さんは納得したようだった。
 ところがこれで一件落着だと思っていたら、フグ田さんの説明を聞いた管理部親分のピー氏がなんだか不満そうにモゴモゴ云うのが聞こえてきた。
 ピー氏は元来はっきり喋らない人物だ。おまけに距離があるものだから、何を云っているのかますます判然としない。それでも何だか面白くなさそうなニュアンスだけはイントネーションで伝わってくる。

 自分にも決裁権はある。
 全体、現場で必要と判断して使った数百円がそんなに不満なら、去年君らがやらかした数百万の請求漏れはどうなんだね? 後で請求して払ってもらったからいいという問題じゃぁないぜ? なにしろ君らのミスで、重要な得意先の心象を悪くしたのだからね。そのマイナス分の埋め合わせはしたのか? 自分が出したプライスレスの損害を放っておいて、他人には数百円のことでモゴモゴ云うなんて、全体不真面目だろう? それじゃぁ畜山生太郎(ちくやま・しょうたろう)と一緒じゃぁないか。一緒だったら君も降格されたまえ。

 この上何か云ってきたらそのように返してやる構えでいたが、結局何も云って来なかった。


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