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祭り、型抜き、オオサンショウウオ

 子供の頃、町の神社の入口脇に遠山屋があった。店舗はプレハブ小屋で、おもちゃ屋というべきか駄菓子屋というべきか判然しないが、どちらにしても子供の小遣いを巻き上げるみたいな、あんまり筋のいい店ではなかったように思う。
 その辺りは隣の校区だったけれど、神社の祭りの時だけ友達と自転車で遊びに行って、遠山屋で50円払って型抜きなどをやっていた。
 型抜きは、何だか薄くて割れやすいクラッカーみたいなものに溝で掘られた形を針でくり抜く遊びで、外の枠を割らずに抜けたら100円もらえるとか、そんなルールだった。絵柄の難易度で賞金額にも段階があって、最高は300円だったと思う
 自分はそういうのはやり慣れなかったから上手くできた験しがない。だから余計に店が胡散臭く感じられたのかも知れない。

 自分らの校区にも、門谷屋という似たような店があった。店構えは遠山屋より随分立派だったが、ガンダムのプラモデルを何だか分からない停滞品と抱き合わせ販売するような店だったから、やっぱりあんまり筋は良くなかったろう。
 門谷屋の店主はオオサンショウウオみたいなおじさんで、足が悪く、いつも椅子に座って小さなテレビを見ていた。

 自分は一度ここで関と殴り合いのケンカをしたことがある。
 その時店主は「おいおい、外でやってくれ」と言った。やっぱり座ったままだった。

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